41話 『作戦会議 ①』
ずっと前。大体三年前くらい? 私は兄とあるゲームをしていた。そう、あれは確か大乱闘ゲームのオンライン対戦だったはず。
二対二で戦う予定だったのだけれど、対戦をする前に何時間も作戦会議をした記憶が微かにある。
あの時三時間くらいやったっけか……一回の対戦の為だけに。訳分からないよね。
「なあ、メル。魔法って確実にあたるものなのか?」
お兄ちゃんがメルちゃんに訊いた。
私的に魔法は確実にあたるものだと思っているけれど、実際どうなのかは気になっていた。
そういや魔法で思い出したけど、お兄ちゃんっていつ火魔法覚えたんだろう。
メルちゃんは少し考える仕草をし、「一応避けることはできるよ」と言った。
お兄ちゃんは何回か頷いて頬杖をついた。
どうやら何かお兄ちゃんには何か策があるらしい。作戦会議の時はいつも確認から入って、そこから構成を練るという方法でやってきていたからなんとなく分かる。
「カナタは何を考えているのだ?」
カグラさんが首を傾げて私に話をかける。
「今頭の中でどうするか考えているんじゃないかな……」
と、私は返答をした。
何とか納得したらしく、目の前のぼんやりした光を放つスタンドライトを眺めて、また静かになってしまった。
メルちゃんは机にぐたーっと寄りかかり、目を閉じたり開いたりして眠そうにしていた。
「よし、そんじゃみんなのステータスを見せてくれ。まあ状態把握の一種みたいなもんだ」
お兄ちゃんはそう言い、みんなにブックを取り出させ、机の上に乗せるように指示をした。
RPG方式の作戦会議をするらしい。
私も指示に従って、ポーチからブックを取り出した。そして、ステータスアイコンをタッチして、自分のステータスを画面上に表示する。
「まずみんなのステータスやらスキルやらなんやらを確認しよう。やり方によっては勝てなくもないかもしれない」
「え? お兄ちゃん何か良い策思いついたの?」
私が訊いてみると、お兄ちゃんは首を振って、「全然思いついてない」と言った。
や、思いついてないんかーい。
メルちゃんは自分のと他に、もう一つブックをポーチから取り出した。
「ん? メル何で2個持ってるんだ?」
「お母さんの部屋からこっそり取ってきたの。役に立てればいいなって思って!」
メルちゃんはもう一つのブックを机の上にある自分のブックの横において、私たちに笑顔を見せた。
お兄ちゃんは、「よくやった!」と言い、メルちゃんの頭を撫でる。メルちゃんはとっても嬉しそうにしているみたいだ。
……素直に褒められるのを嬉しくなれるのは良いと思う。
そして、私は画面上に表示されたみんなのステータスを、自分のを含め一つずつチェックする。
★(現在の)みんなのステータス一覧☆
【シバシキ カナタ】
《Lv9》
《タレント能力:皆無EX》
《HP 69》 《MP 17》
《物理攻撃力 21》
《物理防御 13》
《魔法攻撃力 29》
《魔法防御力 18》
《スキル》
・マイマインドエフェクト(MP 6)
《魔法》
・ファイヤ(MP 3)
【シバシキ ナツメ】
《Lv12》
《タレント能力:極☆ヒーラー》
《HP 96》 《MP 83》
《物理攻撃力 37》
《物理防御力 67》
《魔法攻撃力 72》
《魔法防御力 78》
《スキル》
・ライフアップ(MP 7)
《魔法》
・リフレッシュ(Mp 2)
・キュアー(MP 4)
【カグラ=シンザキ】
《Lv17》
《タレント能力:神太刀》
《HP 126》 《MP 83》
《物理攻撃力 98》
《物理防御 76》
《魔法攻撃力 16》
《魔法防御力 69》
《スキル》
・乱月(MP 18)
・新月(Mp 8)
《魔法》
無
【メル=アクスフィーナ】
《Lv13》
《タレント能力:必中》
《HP 79》 《MP 94》
《物理攻撃力 597》
《物理防御 41》
《魔法攻撃力 1》
《魔法防御力 67》
《スキル》
・パワーアップ(MP 2)
・サイレント(MP 1)
・暗殺(サイレントまたはステルス時同時発動スキル)
《魔法》
・ファイヤ(MP 3)
・アイスー(MP 3)
・サンダ(MP 3)
・アクアー(MP 3)
【マグ=アクスフィーナ】
《Lv76》
《タレント能力:零∞》
《HP 683》 《MP 0》
《物理攻撃力 0》
《物理防御 0》
《魔法攻撃力 961》
《魔法防御力 0》
《スキル》
・カード生成(MP 0)
・リミットブレイク(MP 39)
・異空間結界(MP 53)
・ステルス(MP 8)
《魔法》
火魔法以外全部
☆ 閲覧終了 ★
私ライフアップなんて覚えてたっけ? 名前からするとHPの最大値をあげる的なスキルかな。
それにメルちゃんの攻撃力が前よりも更にすごくなってる。
あとマグさんのステータス表示どういうことよ……
そしてもう一つ。
「お兄ちゃん、今更感あるけどどこでいつ魔法覚えたの?」
私が腕を組んでみんなのブックの画面を眺めているお兄ちゃんに訊くと、ふっふっふと得意げに笑いだし、「メルに本借りてさっき覚えたぜ」と言った。
魔法って書物でも覚えられるんだ。スキルと同じでタレント能力に徹して覚えるものだと思ってた。
だとしたら私も後で色々できるようになりたいなあ。
「メルちゃん。マグさんのステータスとタレントって謎すぎるんだけど、どういう能力があるの?」
「お母さんのタレント能力は、零∞(ゼロインフィニティ)って言って、HP、魔法攻撃力以外のステータスは全て零になるけど、魔法もスキルもMp消費無しで、うち放題っていうすごい才能なんだよね」
メルちゃんは誇らしげに語っている。とてもすごいものだとはよく分かったけど、やっぱり異世界の人がHPやらMPやら言うと、メタいって感じはする。
十字キーをなんたらら~とか、Zボタンをタララララ~ンだとか、よくゲームで会話文の中に織り交ざっているのは、世界観丸つぶれでメッタメタだなあ、とは思っていたけれど、生で聞くともはやこうするしか伝える方法がないものなんだと実感させられる。
私は、マグさんのステータスを改めて見直してみる。
一応、スキルに関しては一つ一つ説明文がついているため、なんとか理解はできたけれど……
そういやマグさんのタレント能力やステータスやらに気を取られて、レベルのことを気にしていなかったけれど、七十六って……お昼の盗賊のレベルより低いはず。なのになんであの時マグさんは怯むことなく行動ができたのだろうか。
リミットブレイクっていう、自分のレベルも含んだ全てのステータスを一・一倍上げるというやばめなスキルを使っても、約八十四レベルにしかならなくて、盗賊のレベルを追い越すのは不可能だし……
ますます謎が深まっていく。
作戦会議は長いですよーーーーーーーーー!