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引きニートの兄を更生させるために異世界転生  作者: 桜木はる
第1-2章 【チュートリアル】
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27話 『宣伝紙を貼りに』

 宣伝紙を貼りに行く。のはいいんだけどこの町ほんと広くない? 

 酒場が木漏れ日の広場から近いせいか、行くのはそこまで遠くないけど、問題は木漏れ日の広場以外の広場。町から出るだけでも歩いて十分くらいかかるのに、その広い町を一周歩き回らなければならないと思うと益々やる気がなくなる。

 メルちゃんは楽しそうにしてるけど、私はあまり楽しいって気持ちになれない。とりあえず木漏れ日の広場の掲示板に貼らなきゃいけないけど、随分と大きい掲示板だ。

 木漏れ日の広場にあった掲示板は、噴水の近くの大きい木の下にあった。

 木製の大きな掲示板で様々な宣伝紙が貼ってあり、私たちが行った事のないお店の宣伝紙ばかりである。真ん中にはガイルさんが貼ったと思われる『酒場やってます!』とだけ書いてある古い紙が貼ってある。私たちは右下や左下など、届く範囲で開いている部分に紙を貼っていった。


「よし、これでいいね。次は南東の広場に行こう」


 メルちゃんを引き連れ、木漏れ日の広場から東の大通りに向かう。この町には東西南北に大通りがあり、少し北に行くと酒場と占い師の館がある。東には行った事がないから、初めての道を通ることになる。そういえばマミさんが黒くなった人を助けたのって、どこの広場だったっけ?

 南東だったかな。場所よりもあの時のマミさんの表情が印象に残っているからよく覚えていない。

 しかしいっぱいお店あるなあ。

 東通りは武器屋や防具屋、道具屋など、装備品などが充実している通りみたい。でも私は防具とか武器とはすぐ直せるし、レベルが上がれば新しい装備にすぐに変える事が出来る。次は三十レベルで変えられるみたいなのだけど、今十四レベルだからまだまだ遠い。

 ——そういえばお兄ちゃんの装備ってまだパジャマに木の枝だった様な気がする……今後大丈夫なのかな。

 東通りを突き当たりまで進むと左右に別れる道が現れた。

 私が方向音痴じゃなければ、右の道が南東の広場に続く道で、左の道が北東に続く道のはず。そして私は右の道へ。メルちゃんは左の道へ——

 ……あれ? 


「メルちゃん! そっち北に行く道だよ!」

「え、そうなの? てっきり南に続く道かと……」


 なるほど。メルちゃんは方向音痴だったのか。よくザトールの町までこれたものだ。それとも、歩いてたらたまたま辿り着いたのかな。


「こっちだよ」


 手招きをして、メルちゃんを呼び寄せる。

 この通りは家がいっぱい建ってるし、住宅街みたいなものだろうけど、私たちが家を建てられそうな場所がもうない。自立共存とは言うけれど、自立出来てるのかな? でも、ここまでシステムも雑に扱われているなら、ガイルさんの酒場に住ませていただく事は全然悪い事ではない……はず。

 南東の広場に出ると、広場の中央には木が一本、その周りに丸いベンチがあり、荷物を運んでいる人がいたり、話している人や、ペンキが剥がれた部分を塗り直してる人など、人でいっぱいだった。

 掲示板は近くにあった家の前に立てられている。掲示板に近づいて見てみると、あまり紙は貼られていなく、空いている部分が結構ある。

 よーし、いっぱい貼っちゃおう! 

 どうせ空いているのなら五、六枚くらい貼っちゃって、一気に減らそう!

 そして掲示板は、私たちが貼った宣伝紙で大部分を占めた。


「これくらい貼れば効果出るかな?」

「うん! きっと効果出るよ!」


 よし、ぐるっと反時計回りをしていく感じで行くとして、次は南西の広場に行くとしよう。今いる広場からずっと西に向かえば着くはずだ。とは言っても、あとどのくらい時間がかかるか分からない。貼るにしても、私たち背が『あまり』高くはないから高いところには貼れないから、無理にやろうとすると時間が更にかかってしまう。

 異世界らしく背が伸びる魔法とかないかな。

 私たちは広場の西から出て、南西の広場へと向かう。


「そういえば、メルちゃんの杖って誰からもらったの?」


 道を歩きながら、横にいるメルちゃんに話しかけた。


「えっとね、これ実はおばあちゃんのお下がりなんだ」

「お下がりなんだね。おばあちゃんって何歳なの?」

「確か……六百五十七歳だったかな」


 うーん……相変わらず歳がすごい。異世界って歳がおかしい人が多いとかなのかな? 

 だとしたら、この世界の平均寿命とか何歳くらいなんだろう。百歳近くとかいってるのかな。

 特に、回復魔法があるものだから医療技術の発展とか関係ないだろうし……


「相変わらずすごいね……そうだ。さっき何でお母さんから隠れたの?」


 今まで笑顔だったのが、急に表情を変えて下を向いた。聞いちゃいけない事聞いちゃったかな。


「……やっぱ言わなくていいよ」

「そっか!」


 表情を戻してくれてよかった……でも嫌な思い出でも無い限り、自分のお母さんから隠れるなんて事普通はしない。

 そうこう歩いているうちに、南西の広場に着いた。どうやらここも南東の広場と同じように、真ん中に木があって、その周りを丸いベンチが囲んでいるみたいだ。この流れだと、おそらく小さい広場は全て同じような造りになっているに違いない。

 そういやこの広い町に、酒場ってガイルさんがやってるところしかないのかな。見た感じ飲食店に関しては複数あるみたいだけど、装備品を売っている店などは、一つしか無さそうだ。この町特有なのか、もしくは無理やりゲームっぽくしようとしたのか。早くサン町にも行ってみたいなあ。


「貼り終わったよ!」


 私が考え事をしているうちにメルちゃんはもう掲示板に貼り終えたみたいだ。私も早く貼らなきゃ! 

 急いで宣伝紙6枚を綺麗に貼った。


「今何時?」


 ブックを取り出し、時計を見てみる。


「十四時だよ。どうしたの?」

「これ終わったらパン屋さんに行こう! 美味しいパン知ってるから!」

「うん」


 メルちゃんの言っているパン屋さんとは、たぶん『セリーゼ』の事だろう。湖での事も聞きたいし丁度いいかな。


「じゃあペース上げていこっか!」


 その後、なんとか三時に間に合うように北西と北東の広場に行き、全ての掲示板に宣伝紙を貼り終えた。私の思っていた通り、木漏れ日の広場以外の小さい広場は全て同じ造りだった。そして、私たちは予定通りパン屋に向かった。




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