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引きニートの兄を更生させるために異世界転生  作者: 桜木はる
第3-2章 【7日間とちょっとという刻限】
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23話 『ムニエル』

今回はだいぶ短めです。

「冷蔵庫の中身、魚とカレールーしかありませんでしたけど」


 まな板に置かれた一匹の鮭を見つめながら、私はそう言った。


 野菜はないのだろうか。


「野菜とかありませんか」

「サンゴならありますけど……」

「……サンゴって食べれるんですか?」

「一応、美味しくはないですけど」


 一体、どの口が言っているのか……。


「うーん……。そうなると、作れるものが限られますね……。調味料は無駄に色々あるみたいなので、塩焼きよりはいいのが作れそうなんですけども……」


 そうして、私は魚を軽くさばいた。

 水色の鱗を剥がし、何となく、覚えている感覚で魚をさばいた。


 ……いつ、こんなことができるようになったのだろうか。

 料理なんてしたことも教えてもらったこともないはず……。


 なのに、二日に一回くらいやっていたような気がしてならない。


「うわぁ、お上手ですね。私だったら鱗をとってそのまま焼いちゃいます」

「……鱗あると、料理しにくくありませんか?」

「焼き魚しかつくりませんから、いいかなって」


 こりゃひどい、重症だ。

 魚は焼けばなんでもいいと思っているのだ。

 鱗を取るだけで、魚のうまみがまた一層深まるというのに。


「よし、じゃあ今日は、魚の美味しい焼き方を教えます」


 ガッツポーズをしながらそう言い、セリーゼに顔を向ける。

 なんでか、セリーゼはきょとんとしていた。


「さっき、魚と料理は別物っていいませんでしたか……?」

「今回は例外です。魚しかないので、ムニエルを作ろうと思います。奇跡的に、胡椒とかバター的なものはあるみたいなので」

「……前に、地上から取ってきましたからね」

「地上に?」

「ええ。以前は上がれたので……と、早くしましょう、その……ムニエルというやつを」



 そして私は、ムニエルの作り方を比較的丁寧に説明しながら調理をした。


 魚を食べやすい大きさに切り分け、塩胡椒をふる。

 それからバターを表面に付け、フライパンで焼いて完成。


「どうですか? 手軽で美味しい魚の焼き方」

「お、美味しい……こんなの食べたことありません」


 逆に今までどんなものを食べてきたのか。

 どうやって生きてきたのか……。


 大皿の上に置かれた坂のムニエルを、セリーゼが次々と口にする。


 そうだ、あのペンダントのこと、セリーゼに訊こうと思っていたのだった。


「セリーゼさん、あの、これなんですけど……」


 ポーチからペンダントを取り出し、セリーゼの前に差し出した。


「……! どこで見つけましたか!? これ!」


 ペンダントを私から奪い取り、中身を確認するように開けた。


「西の方で魔物と戦った時に……」

「……これ、私のお父さんが持っていたものなんです。数か月前から行方知れずで……」

「これ、その魔物を倒した時に落としたものなんですけど……」

「そうですか……見つけてくださっただけでも感謝です」


 そう言い、ペンダントを首にかけて、大皿を手前に押して立ち上がる。


「私はもうお腹いっぱいなので、あとはキョウカさんが食べてください。私は部屋でお仕事がありますので」


 そう言って、自分の部屋の中に入って行ってしまった。


 それにしても、なんであの魔物がペンダントを持っていたのだろうか。

 数か月前に行方知れずになったことと、何か関係性があるかもしれない。


 そんなことを考えながら、ムニエルを箸で自分の口の中に運んだ。


 今は食事をとるのが先決だ。

次話もよろしくお願いいたします!

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