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引きニートの兄を更生させるために異世界転生  作者: 桜木はる
第1-1章 【妹の救済とバイト】
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15話 『決定的な弱点があるのです』

 酒場を出ると、眩しい光が目を眩ませる。

 空は雲が点々としている晴れ模様だ。暗い部屋の中ばかりにいたので、あまり慣れていないのか、数秒間目を開けることができなかった。

 朝の町を見るのは初めてだが、朝の町もなかなか賑わっている。

 そして、北門に向かって歩いていく。

 すると、小さい道から男が数人やってきた。あ、昨日の酔っ払い集団じゃないか! 

 リーダーかと思われる赤いやつもいるし! 


「よぉ、兄ちゃん。昨日はよくもやってくれたな! ここで会ったのも何かの縁……おめぇをぶっ倒してやる!」


 くそっ、待ち伏せしてたのか! というか何で全部俺のせいになってるんだよ! 理不尽か! 

 こんな状況で襲ってくるとは。しかも少し動きがフラついている気がする。

 まさか朝っぱらから呑んでいるのか! このダメ人間共め! (※人の事言えない)


「お兄ちゃん。あの人たち知り合い?」


 なつめが聞いてきた。そういえば、なつめがいない時に、俺とメルが初めて会った所でこいつらとも会ったから、知ってるはずないよな。

 しかしどうしよう。さすがにこのままではまずい。メルも人間相手には杖で殴れないだろうし、この人数の中で杖を振り強風を出すことはできない。それになつめも固まっている。

 ここは一つ、みんなの前に出て、「ここは俺が食い止める!」と、言いたいところだが、そんな勇気は一切出ない。

 そんな事を考えている間に、酔っ払い達はどんどん寄ってくる。

 もうダメか……

 そう思った時、マミがため息をつき、(おもむろ)に背負ってるバッグから一枚のコインを取り出す。

 昨日のコインとは少々違うみたいだ。


「ジャマをしないでくださいませんか?」


 そう言うと、コインを投げ上げ、自分の目の前に落ちきた瞬間に指でコインをうまく弾く。

 そのコインは勢いよく酔っ払いの方に飛んで行ったが、酔っ払いはひょいっと避けてしまった。


「そんな攻撃、あまちゃんだ……ぜ……?」


 酔っ払いの中心に来たコインは、粉々に砕けた。それと同時に、酔っ払い達の動きが止まった。まるでその場だけ時間が止まったかのように、一切動かなくなってしまった。

 時間停止をさせるコイン……? 


「ごめんなさい。こうするしかなかったので。ただ、その効果は八分でとけますので、ご安心くださいね」


 すごい。こんな事までできてしまうのか。

 てかこんな場面見せられて、次はこの場面を作り出した本人と戦うんだぞ。

 俺もこんな風にして負けるのか? 周りの人もビックリして言葉が出ないみたいだ。

 そしてマミはまた北門へ歩き始めた。

 みんな俺たちのところを見てるぞ……嫌だな……

 北門に着くと、人がぞろぞろいた。昨日酒場にいた人たちだ。それにさっきの場面を見ていた人も後ろからやって来ていた。なんだなんだと来たみたいだ。

 町の少し外に出たところで、マミは立ち止まった。


「ここで戦いましょう。さぁ、誰と来ますか?」


 機能考えていた事を思い出す。確かなつめはまだ戦ったことがないから無理だろうし、セナも人間相手には意味がない。

 だから、


「メル、一緒に戦ってくれ!」


 メルの方を向き、お願いをする。メルは笑顔で承諾してくれた。

 マミはみんなにもっと下がってくださいと合図を出し、門の近くに寄らせる。


「さて、戦いましょうか!」


 と言った本人がその場でニコニコして立ち止まっている。

 なんだ、もう始まったのか? 緊張感の一切無い始まり方だ。

 ってさっきまで隣にいたメルはどこに!? 

 そうか、サイレントを使ったのか。で、ここは俺が惹きつけろと、そういうわけだな。

 門の方からなつめの声が聞こえる。いつのまにか飲み物を配って酒場の宣伝をしているらしい。ガイルさんもいた。腕を組んで俺たちの出方を伺っているのだろうか、もしくはマミの出方を伺っているのか。元々勇者だったんだし、分析するという癖が出ているんじゃないか? 


 よし、マミを惹きつけるとしよう。

 しかし何で惹きつける。オーガと戦った時は俺が囮になってたが、今回は人間相手だ。

 話——そうだ、何らかの話で気を引こう! そう思った瞬間。


「あなた達の戦闘方法、フィレスの森で木の陰から見てました」


 俺が話す前にマミが話し出した。というか見てたのかよ! なら少しくらい助けてくれてもよかったじゃん! 

 しかし、自分から話すなんて、俺らにとっては好都合な事をしやがる。メルの姿は見えないはずだし、勝ち確か? 


「戦闘方法、実に面白かったです。メルさんがサイレントを使いカナタさんが惹きつけ、痛恨の一撃を確実に敵の弱点へと加える、そこに関しては褒めたいものです」


 下を向き地面にある石を蹴る。って、あれ? 蹴れてない。

 スカしたのか? 

 しかしなぜ上から目線で褒めたいなどと言っているんだ。しかし、その戦法を知っているのになぜそれを警戒しないんだ? 普通警戒して動き回ったりすると思ったのだが、まぁ動き回っても必中だからどうせ当たるだろうけど。


「ですがー……一見、必中とサイレントは相性が良いように見えます。しかし、決定的な弱点があるのです」


 決定的な弱点だと……? サイレントと必中にどんな弱点があるというのか。

 姿を消し攻撃が必ず当たるなんて最高の組み合わせだと思うのだが。

 マミの後ろの草が少し揺れている。おそらくあそこにメルがいる違いない。

 マミも気づいていないみたいだ。これなら……勝てる……! 


「サイレントは、声を少量でも出すと、効果が切れる。そしてもう一つ……」


 メルが杖を横から思いっきりマミの方に振るのが見えた。しかし、杖はマミの体をすり抜けた。

そのままメルはバランスを崩し倒れそうになる。


 貫通しただと!? 確かにマミの体に当たったはず……! それに必中なのに、なぜ当たらない! 

 すると、マミは左ポケットから小さいストップウォッチを取り出す。

 そしてストップウォッチを持った手を上にあげ、上についているボタンを押す。

 カチッとした音がなったと思ったら、メルの体が停止した。


「攻撃をすると、効果がとけてしまうんです。たとえ、『攻撃があたらない敵』だとしても」


 観客がざわめく。

 攻撃が当たらないなんて、そんなのありかよ。しかし今、実際に見た。メルの杖はマミの体を確実に貫いていた。なのにダメージを一切受けていない。


 マミには攻撃が当たらないのか……? 

 そして、しゃがんでメルの近くの地面に静かに手を当てると、メルの周りに光の壁が作り出された。


「ついでに私のタレントも教えてあげます。私のタレントは【創生】。あらゆるものを作る事ができるんです」


 そうか、だから回復薬も、あの場で作り出す事ができた。それに今まで使っていたりしてた道具は、マミが作り出したものだったのか。


「さて? 次はどうします?」


 どうしたらいい……俺一人じゃ何もできない。スキルは一応一つ覚えているが、これが果たして攻撃の当たらない敵に通用するかどうかも問題だ。でも、ダメ元で使ってみるか……! 


「マイマインドエフェクト!」


 両手を前に出し、マミに向かってそう言った。手から青いモヤモヤが勢いよく放出され、マミにあたった。


「なるほど、そんな技を持っていたとは。しかしその技、『心のない敵』には一切通用しないみたいですね」


 マミは目を瞑り、自分の胸をストップウォッチを持っている左手で軽く押さえる。

 心がない、もはや攻撃が通用する通用しないの問題じゃない。

 心というもの自体ないのか……? 

 ではなぜ笑える。心がなければ感情なんてた表す事ができないのだから、笑えないはずだ。


「さて、お次はどうします?」


 笑顔でマミが言う。

 どうしたらいい……! このままでは負けてしまう。攻撃自体が与えられない、そんな状況でどう手を打てと……ん、あれ。ポケットに何か入ってる。

 ズボンのポケットに違和感があったので、ポケットから違和感の正体を取り出す。

 ——マコトムシメガネが出てきた。

 そういえばあと一回使っていなかった。

 しかしマミの倒し方を見たところで俺に何ができる。でもやってみるしかない。これが最後の手段なのだから! 


《マミに勝つ方法は……!》 


 一心にそう願う、マミは不思議そうな顔をしてこちらを見ている。そしてレンズにある光景が映った。

 これは……

 女性の下着と半身だった。しかも下。

 なるほど……ちょっと荒っぽいが、勝ち方が分かった。


「白か……」


 マミは俺が何を言ってるのか全く分からないみたいで、首を傾げている。

 ——。

 数秒後、彼女は何かに気づいたようにスカートを両手でおさえ、顔を一瞬で赤らめた。


「ま、まさか……!」


 うん。たぶんマミさんの思っている通りです。たぶんこれマミさんの下着ですよね。しかも普通ならすぐ映り変わるのに、ずっとレンズに映りこんでいるのですが、最後に見えたものはずっと残る仕様なんでしょうか。

 虫眼鏡を掲げて、町の人がいる所に向かった。


「男性諸君見たまえ! 彼女は白だぞ!」


 町の男が全員虫眼鏡を見に寄ってくる。

 我ながらクズだと思った。女性陣は完全に引いている。

 なつめもガイルさんもちょっと、いやだいぶ遠い目で俺を見ている。

 ああ、俺だってこんな事は本当はしたくなかったんだ。どうか理解してください。そう願った。


「ちょ、ちょっと待って待って!」


 門の上から女性の声が聞こえた。というか、マミが門の上にいる。一体いつの間に! 

 後ろを見ると、さっきまでいたはずなのに、消えていた。

 そして、バランスを崩して門の上から足を滑らせ落ちてしまった。


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