表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
引きニートの兄を更生させるために異世界転生  作者: 桜木はる
第3章 【裏世界のおはなし】
199/232

12話 『リアル』

 ……真二の部屋のにおいがした。

 目を開けてみると、そこは紛れもなく真二の部屋だった。

 ただ、肝心な真二はどこにも見当たらない。


 お昼だし、きっとお仕事に出かけているのだろう。


 支柱が四つある机の上には、ベーコンハムとスクランブルエッグ、ご飯が置かれている。

 真二が作ってくれたものに違いない。



 ……あれ?

 私は確か、海の中に沈んでしまったはず……。

 それから温かい何かに包まれて――


 どうなったんだろう、私。


 これは、私の記憶なのかな。

 走馬燈のようなもの?


 でも、今見える光景はとても実感的だ。


 どうやらまたこの世界に来てしまったらしい。


 ……パフェを食べたからか、そこまでお腹は空いていない。

 でも、食べなかったら、きっと真二が悲しい顔をしてしまう。

 無理してでも食べることにしよう。


 結局全て平らげた。

 お腹が少し痛くなったので、排便を済ませた。


 さすがに食べ過ぎたかな……。

 お腹を擦り、布団に入った。


 まだ制服を着ているみたいだ。


 ……あれ、布団の中にゲーム機が散乱してる。

 折り畳み式のもの、薄型の六角形の機器とか、古いものから最新のものまで色々なものがある。


 ゲームのカセットが入ったケースが近くにある。


 そういえば、寝るって言って布団の中でゲームをしていた。

 だから布団の中に……。


 久々にやってみよう。


 六角形の機器を手に取り、布団に潜った。


『カチ、ピコーン』


 電源ボタンを押し、ゲームを起動する。


『テッテレテテーテレテテテテーテテレーレ――』


 このオープニング……魔物を討伐して武器や防具を収集するゲームだ。

 ランクも最大まで上げたし、魔物も全て討伐した。

 サイズもコンプリートしたかな。収集物も回復薬関連以外は殆どMAX。

 魔物を倒すすべも全て頭の中に入っている。


 久々にやってみよう。

 オトモイヌを連れてモンスターと戦うのだ。


『テイッ! ヤアッ!』


 ゲーム内のキャラクターの声と、ボタンを押す音が静かな部屋に響き渡る。

 それから数十分して、やっとのことでモンスターを討伐した。


「ふぅ、久々だから手間かかっちゃった」


 思わず、独り言が口から漏れる。


 他のゲームもやってみよう。


 まずは、ぽよぽよ。

 様々なキャラクターを使って、パズルで相手を負かすゲームだ。

 ひたすらモードという、スコアだけを狙うモードもある。


 ゲームを起動し、早速ひたすらモードを選択する。

 キャラクターはもちろん、魔法使いの女の子。

 このキャラクターが私のお気に入りなのである。


『スタート!』


 可愛いフォントと効果音と共に、ゲームが始まる。

 連鎖を組めば組むほど点数が上がるのだ。


 連鎖のコツは頭の中に全て詰め込んである。


『やっ、そいっと、はーいっ、いくよ! スターストーム! スターストーム! スターストーム! ククククェーサー!』


 あれ? 結構まんまじゃない? 大丈夫かなこれ。


 スコアはカンストさせたが、やはり何度やっても面白い。

 ぽよぽよを消す時の爽快感がたまらない。

 大きな連鎖をした後に、全消しを達成した時が一番気持ちいい。


 ふふ、久々にやったけど面白いな。

 他のゲームもやろう。



 ……それから、数時間で色々なゲームをした。


 日も暮れてきた。

 とはいえ、空の濁った雲が微かに橙色になっているだけだ。

 この町には、光なんて差し込んでこない。


 ――ドンドン、ガチャ――


「ただいまー」


 真二の声だ。


 私は布団から飛び出し、玄関まで迎えに行った。


「ん? どうした?」


 今度はよく顔が見える。

 とても、懐かしい顔だ。

 髭が生えているし、髪はボサボサだし、服のセンスもないし、そこまでカッコいいというわけでもない普通の顔。


「そうだ、新しい機器を買ってきたんだ」


 今日の荷物は大きめだ。


「VRGって知ってるか?」

「……ブイ、アール、ジー?」


 VRG。今まで聞いたことがないものだ。


「バーチャルリアリティゲームって言ってな。仮想空間に自分を送って、実際にゲーム内に入り体験するというものだ」

「へぇ……」


 靴を脱ぎ、真二が部屋に入って行った。

 私も部屋に戻ると、真二が箱から変なゴーグルを取り出して、それをパソコンに繋げていた。


 準備をしているらしい。

 ゲームディスクをパソコンに入れ、ゲームを起動した。


 真二はゴーグルを頭に巻き付けて、部屋の色々な方角を見ていた。


「おぉ、こりゃすごいな。感覚もあるのか。座っていても歩けるし歩く感覚も……匂いもあるし、聴覚も、痛覚もあるのか。こりゃすごいな。どんな技術なんだ」


 ぶつぶつ独り言をつぶやいている。


「真二……?」


 ゴーグルを外し、渡してきた。


「見て見ろ、すごいぞ」


 つけてみると、目の前には森があった。

 動物の声、肌に触れる風、潺湲せんかん……全てが現実のようだ。


「どうだ?」


 ゴーグルを外し、真二の顔を見た。


「よーし! 明日はゲームを買ってくるか」


 あまり行動には出せないけど、心は躍っている。

 初めての感覚。

 一人称で動かすゲームより、もっと実体的なものだ。



「……真二、私、外に出たい」


 口から、思わぬ言葉が出た。

 ……心の奥底でそう思っていたのかもしれない。


 何日間、いや十数日間? そのくらい家に籠っていたのだ。


 外の空気を、いっぱいいっぱいに吸いたい。

 さっきの仮想空間でもできるけど、もっと、実体的な空気を吸いたい。


 それに、外を歩きたい。


「……そうか。ずっと家にいると毒だもんな。少し外に出るか。ただし、俺から離れるんじゃないぞ」


 真二は鼻でため息をついた。

 手を出してくれたが、握ることはできなかった。


「行くか。とりあえず、俺の近くに付いていてくれよ」

次話もよろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ