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引きニートの兄を更生させるために異世界転生  作者: 桜木はる
第3章 【裏世界のおはなし】
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7話 『創造の準備』

一つの卵料理が食べれるからと言って、全て食べれるとは限らない。

 体を地面につけ、空を見ていた。

 ……あの裏世界に戻ってきたみたいだ。


「な、なによ今の光」


 セナの声が聞こえた。


「あ……キョウカさん、大丈夫ですか?」


 マミが駆け寄り、私の背中を押さえながら起き上がらせた。


「はい……」

「キョウカさん。何かを思い出されたのですか?」


 マミがそう訊いてきた。

 ……なんでそのことを?

 私と同じものをみたのかな。


「あの、キョウカさん?」

「はい。一つ思い出しました」

「……どんなものですか?」

「魔法の言葉と、私の記憶です」


 マミはきょとんとした。


「ま、魔法の言葉ですか……。ええと、メルヘンチックですね!」


 マミは苦笑する。

 魔法の言葉なんて言うんじゃなかった。

 絶対引いてるよ、これ。


「キョウカ。この本何?」


 セナが頬を膨らませ、本を抱えてやってきた。

 そういえばこの本、あの部屋にあったものと同じだ。

 本は、どんな力を加えても開くことはなかった。

 見えない力によって閉じられている。


 ……見えない力?

 ……昔やったゲームで、見えない力という謎のワードで閉じられている扉があった。

 もう、ゲームの名前は忘れてしまったけど。


「これはたぶん、日記です」

「……日記?」

「はい。真二のものです」


 セナは唖然としていた。


「し、真二くんの日記がなぜこの世界に……? なんでキョウカがそれを持って……? それより彼、こんな女の子みたいなことしてたの!?」


 いや、今はそこ気にするところじゃないでしょ。

 女だって男だって、日々の他愛ない日常を日記として留めておいてもいいんだよ。


「……この中身、見たの?」

「はい。真二と私のことが書いてありました」

「……」


 セナは黙り込んでしまった。



 ――あの日記に書いてあった部分の記憶、全て思い出した。

 私が真二の部屋に来た時、とても信二を警戒していた。


 警戒? 何故警戒したかは分からないが、男という存在自体が嫌悪対象だったのだ。


 連れてこられた日以降、声は出せたが真二とは殆ど話さなかった。

 殆ど無視していた。

 無視……と言っても、話を聞かなかったわけでなく、ただ返事をしなかっただけ。


 何故? 話したくなかったからかな。いや、それ以外の理由があるのかも。

 そこは覚えていない。


 最初に来た日から、真二はご飯を作ってきてくれた。

 あの日記の通り、全然食べなかった。


 ご飯があることは嬉しかったし、真二には申し訳なかった。でも、



 ――早く死にたかった。



 餓死だってよかった。

 あの町で野垂れ死んで、そのままどこかの焼却場で燃やされても良かった。

 変な薬を飲んでもよかったし、首を吊ってもよかった。


 あの部屋にそんなものはなかったが。


 そして、真二の部屋から飛び降りたくて、ずっと外を見つめてた。

 真二がいるとき以外も、ずっとそうしていた。


 そう言えば私、なんで死にたかったんだろう。


 友達にいじめられたのかな。

 それとも、誰かに死ねと言われたから?


 いや、町で目を覚ました日から、罪を犯したこともないはずなのに、変な罪悪感が身体を締め付けてきて、少しずつ苦しくなってきて……。

 それで死のうと思ったんだ。

 理由は知らない。


 12月5日――冷えた朝に、真二がハムとかスクランブルエッグとかを作ってくれた。

 体が衰弱しきっていて、ずっとお腹も減っていた。

 真二が仕事で出かけた後、ハムを一口だけかじった。


 香ばしくて、美味しくて、甘くて……。

 久々の食べ物だった。


 続けてスクランブルエッグも食べた。

 だけれど、目玉焼きはどうも苦手で、手が付けられなかった。

 真二には、食べれないとは言わずに嘘をついた。


 よく、「なんで卵焼きとかスクランブルエッグとか生の卵は食べれるのに、目玉焼きだけ食べれないの?」って言われるけど、なんか無理なんだ。察してほしい。

 特に、白身の部分がだめなんだ。察してほしい。

 (ここだけ執筆者の話です)


 ――あれから、日数が過ぎ、真二がゲームの話をした。

 あの暗い世界とは別の世界で、町や村、国まで作って育成して行ったり、世界を救うたびに出たり。非現実的なものが私は好きだった。


 その時だけ自分を忘れられる気がして、とても楽しかった。


 それから真二が色々なゲームを買ってきた。

 主に私の好きな育成ゲームやRPGを買ってきてくれた。


 ――真二が仕事でいない日、全てのゲームをやりつくした後に考えていた。


 『マジッククリエイト』。

 漢字で書くと魔法創造(マジッククリエイト)。現実を全て忘れさせてくれる、素晴らしい魔法。


 自分の好きな効果が魔法で実現できる。

 こんなことがあればいいなって思いながら、私はあれを書いていた。


 それを見た真二は、パソコンで何かしらの作業をし始めた。

 何をしているか分からなかったが、その日、真二は夜通しでパソコンを使っていたのを覚えている。


 それからの記憶はまだ思い出せていない。



 「――魔法創造……」


 そう呟いた。

 次の瞬間、周囲が淡い光に包まれ、地面には奇妙な模様が赤く描かれた。


〈魔法創造陣オン。属性、位設定、魔力消費量、効果・威力の設定、名称、の順にお決めください〉

次話もよろしくお願いいたします!

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