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引きニートの兄を更生させるために異世界転生  作者: 桜木はる
第3章 【裏世界のおはなし】
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4話 『塗りつぶされた黒い顔』

今回もひどい文章力。

 黒く染まった森を抜け、船が定着している桟橋にやってきた。


「今から大陸に行くわ」


 橋を渡って船に乗ると、桟橋と船をつないでいた鎖がほどけた。

 セナが、甲板の後方にある舵を取る。


「帆は開かなくていいから! どうせ風ないし!」


 セナは舵を切ってそう言った。

 船が動き出し、少し揺れて倒れそうになる。


「わっ」


 マミが支えてくれたおかげで、倒れることはなかった。

 この船は何を原動力にして動いているのだろう。

 風がなく、海の揺れもない、ない……!?


 船から少し身を乗り出して海を見ると、赤黒く濁っていたり、人の身体が浮いていたりしていた。

 血の海みたいだ。


 地獄なのか、ここは。


「裏世界とはいえ、ここまで壊れてるなんて……」


 唖然とした顔で、舵を取っていたセナがそう言った。


「セナさん。裏世界とは、具体的にどのような世界なのでしょうか」


 マミが垣立に両腕をのっけ、海を眺めながらそう言うと、


「そうね……。詳しくは知らないけど、裏の顔が視れる世界、とでも言いましょうか」

「裏の顔?」

「そう、例えば人。心の中に宿した一つの闇が表面に出てくる」


 心の闇……誰しもが一つは抱えていそうなものだ。

 私は分からないけど。


「へえ」

「人っていうのはそういうもん。別のものにかこつけて、自分の本心を隠してる。容姿端麗で人気者の美女であったって、何かしら裏があるのよ」


 まるで、その美女を見てきたかのような言い草だった。




「さ、着いたわよ」


 いつの間にか、船は先ほどとは別の大きな桟橋に着いていた。

 そんな近くに見えなかったはずなのに、空間移動をしたかのように、大陸が突然。

 私が戸惑っていると、セナが肩をポンと叩く。


「こういうもんよ、たぶん」


 そう言って、マミとセナは船から降りて行く。

 船から降りて見回すと、人が沢山いた。


 その人たちの顔は黒く塗りつぶされている。

 怖くて、話しかけることができない。


「裏の顔は誰にでも見られたくない、ということかしら」


 セナはそう言って、黒く塗りつぶされた人の顔を見つめていた。


 ふと近くにあった噴水を見ると、踊っている人がいる。

 それも二人だ。

 片方は踊りながら、顔を横に向けていた。

 もう片方はそんなことは知らず、ただ一人で踊り続けている。


 横を向いて踊っていた一人が喋りはじめた。


「ミテ、ワタシ、ワタシ、ミテ、ミテ、ミテ、ナンデ――」


 三つの単語を繰り返し発していた。

 綺麗な服をきた踊り子に、人が群がってきている。


「よく見てなさい」


 セナは真剣な顔でそう言った。


「オマエ、ジャマ。ワタシ、キラキラ」


 綺麗な服を着た踊り子が踊るのをやめ、隣の踊り子を蹴飛ばした。

 蹴飛ばされた踊り子の身体がばらばらになる


「ナ――ナ――ナ――」


 壊れたロボットのように、頭ががくがくと震えていた。


「そういえば――」


 私はセナの肩を叩いた。


「何?」


 セナは振り向いた。


「マミがいる原因とか、キャラクターファイルとか、バグって何ですか?」


 セナは腕を組み合わせた。


「そうね……。詳しく説明しないといけないわ。それじゃあまずはマミがこの世界にいれることについて――」


 セナは近くのベンチに座った。


「簡単に言うと、マミは外で生まれた人間の子」

「外?」

「……あなたがいる世界よ」


 私のいる世界……?

 正直、話が壮大でつかみにくいが、要はマミは正真正銘の人間ということだ。


「両親は壊したが一人逃した、って聞いてたけど、それがマミだったわけ」


 その時、唐突に織姫と彦星の話を思い出した。

 確か、別の世界に逃げて子どもができた話――だったかな。

 誰かに聞いた覚えがあるけれど、どこか、誰かは全く覚えていない。


「お父さんとお母さんのこと、私は許してませんからね」


 マミは静かに怒っていた。


「……ごめんなさい。あの頃はどうすればいいか分からなかったのよ……」


 セナは視線を逸らしてそう言った。


「……さて、次はキャラクターファイルについて」


 沈黙を断ち切り、セナは別の話を始めた。


「キャラクターファイルっていうのは、ゲーム内での声や姿などを記憶しておく場所なの。このゲームにおいては、生まれた瞬間からキャラクターファイルができるような仕組みになってる。勿論、キョウカ……いや、なつめっていうあなたの原型と、マミのファイルだってある」

「私は自分で作りましたがね」


 マミは、得意げに腰に手をあて肘を張った。


「……キョウカの場合はちょっと違うけどね」

「……私?」

「ええ、恐らくあなたは……なつめのキャラクターファイルに混ざっていたのね」


 なつめ、なつめ……。


「そして、人間であったあなたはこの世界でも存在を維持……って、いきなりこんなこと言われても分からないか。それに、記憶を失ってちゃ――ね」


 本当に、全く。

 元々なつめっていうファイルがあって、そこに私が入ったってとこはまだわかった。


 だったら、私って誰なんだって話になる。

 なつめという人がどんな人物かも知らないし。


 それより、セナは私が記憶を失っていると言ってたけど、私のことを知っているのだろうか。


「……では、次は、バグについて話しましょうか」


 セナが言った。


次話もよろしくお願いいたします!

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