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引きニートの兄を更生させるために異世界転生  作者: 桜木はる
第2-4章 【それは一つの混沌で】
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164話 『出航』

 宿に戻った私たちは、宿の中にある売店でパンを買い、夜に軽く食事を摂り、雑談をしてから布団を被った。

 そして、皆が寝静まった頃、私は一人、ベッドから起き上がった。


 シルスさん……いや、シーゼルが変装しているのに、私が何もしないんじゃ全く意味がない。

 何かに変装できないか……。

 あ、そういえば、おばさんから貰った服を着てみよう。

 暗闇の中、自分のパジャマを脱ぎ、ポーチからボロボロの布の服とズボンを取り出して着てみたが、服は全く変化することなく、ぼろぼろの布切れのままだった。

 ……?

い、いやいや、まさか嘘のはずはないよね。

 そうそう、あの人はあれって言ってた、その時に必要とする服って言ってたし……。

 じゃあ、パジャマ! パジャマになってみて!

 頼む、いや御願いします!


 すると、ボロボロの服の切れた部分が再生をし始め、一瞬で私のパジャマへと変化した。


 こんな感じで変わるんだ……。


 服の素材も布じゃなく綿が多めに変わっていて、私のパジャマと全く同じ服が作られた。


 ……じゃあ、あとはこれを着て、明日、転生ボックスから顔を少しでも隠せるような帽子を取って、それから元々の装備とは違う装備で、かつあまり目立たないようにする装備にこの服を変えよう。

 それが最適ならそうすべき。

 よし、寝よう!


 私はベッドに飛び乗り、布団に潜り込んだ。


 …………。

 …………!


 いつの間にか寝ていた私は、まだ皆が寝ている頃に目を覚ました。

 ベットから起き上がり、ブックの電源を入れて時計を確認すると、まだ朝の4時だった。


 次の日の起きる時間が決まっていると目覚ましがなくても早く起きちゃう癖、もう直らないかな。

 それで、ここから寝ると時間を超過して寝ちゃう。

 この寒い時期、眠くてたまらない憂鬱な朝に二度寝ができないなんて……。

 でも、起きたら起きたで、後から「寝なくても全然良かったかも」って思えるから、それもそれで気分が良いんだよね。

 皆がまだ寝ている間に支度をしちゃえば、優越感もちょっと味わえるし。

 エミさんは鼾をかいて寝てるし、シルスさんは予想以上に酷い寝相だし、メルちゃんは何故か杖を抱いて寝てるし、マミさんは――。

 マミさんは何でか、ベッドの横で、壁にも寄りかからずに棒立ちして、鼻提灯を膨らませながら寝てる。

 いや、どういう寝相よそれ。

 まぁ、それは別にいいとして、私は私の支度をしよう。

 まずは、服を目立ちにくい服に……。


 そう願うと、パジャマの生地が解けていき、小さな光と共に、黒を基調としたコートやスカートに変化した。


 ……これ、目立たない?

 黒だからって目立たないってなんか勘違いしてないかな。

 まぁいっか……。

 と、次に異世界転生ボックスを取り出し、丁度いい帽子を探し、一つの唾が広い帽子を取り出した。

 唾が円形に伸びていてぐにゃぐにゃの帽子だ。

 装備可能レベルは40……どうだろう。


 ブックのステータスアイコンを押し、表示されたステータス画面のレベルを見ると、41と表示されていた。


 そっか、そりゃあ何十も魔物を倒したら経験値も入るよね。

 大ボスも倒したし。


 私はその帽子を被り、部屋にあった姿見に自分を写して、どのような格好になっているかを確認した。

 ……帽子が紫色の所為で、とても不自然に見えるけど、そこまで目立つことはないかな。

 変人だって思われそうだけど、それはそれで、人を惹きつけなくできるからいい。

 って、こんな薄暗い部屋の中で姿見を見ても、そりゃあ不自然に見えるに決まってるかな。

 あとで皆の意見を聞いてみよう。

 着替えるつもりは殆どないけど……。


 そうこうしているうちに、時間は4時半を回っていた。

 私は、自分の使っているベッドに座り、時が経つのをじっと待つことにした。


 それにしても、何故、この大陸にいる芸者全員を集めることにしたんだろう。

 私やシーゼルだけだったら、町の中を探して見つければいいだけ……それなのに、こんなに大勢の人々を集めるなんて……。

 公開処刑、つまり見せしめ? それか、探しやすくするため? 他に何か別の理由があるのかな……。

 私はベッドに横たわる。

 とても嫌な予感がしてならない。

 胸騒ぎがする。

 恐らく、今回の航海で目指す場所はテイシング監獄島で、地上に建てられたシドモン邸に行くことになる。

 無事に辿り着くことができればいいけれど……。

 目を閉じて考え事をしていると、私たちの部屋の扉が三回ノックされ、シルエさんの元気な声が聞こえてきた。


「皆さん、起きて準備をお願いしますー」


 その声に反応し、マミさん以外の三人は眼をこすりながら起き出した。

 一方、マミさんは、ベットに思いっきり倒れて、その衝撃で目を覚ました。


「うわぁ、まだ眠いですぅ……」


 はだけたパジャマを直して起き上がったシルスさんが、またベッドに横たわった。


「はい、皆起きてください!」


 そんな中、ひと際元気なエミさんは、メルちゃんやシルスさんの毛布を思いっきり取っ払って、耳の近くで「おはようございまーす!」と大声で叫び、強制的に目を覚まさせた。


 それから、4人は寝間着から普段の装備品に着替えたり、髪の毛を綺麗に整えて結んだりしてから、大体5時半頃に荷物を纏めて部屋から出て行った。

 宿屋の店主にお礼を言い、外に出た私たちを、お兄ちゃんを入れた計5人が待っていた。


「港まではすぐです。始発の一つに乗りましょう」


 私は頷き、皆と目を合わせた。

 その後、船着き場に行き、切符を人数分購入して、1番前の船に乗船し、出航の時を待った。


 ……そういえば、他の皆から私の格好について何も言われなかった気がする。

 シルスさんは私を見た時、少し驚いていたけども。


 ……とりあえず、今は船の出航を待つことにしよう。

次話もよろしくお願いいたします!

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