157話 『依頼:装備品の素材集め4』
複数の目玉が私とメルちゃんに焦点を絞った。
すると、複数の目玉はメルちゃん目掛けて赤い光線を放った。
光線の一本がメルちゃんの身体に命中し、爆発とともにメルちゃんの身体は吹き飛ばされ、神殿の壁に激突した。
「メル!!」
私は咄嗟に回復魔法をかけた。
私は目玉に見られないよう、壁際を走って行き、メルちゃんの元に近づいた。
メルちゃんの身体からは、赤黒く、雷のようなビリビリとしたオーラが出ていた。
「う、動けない……」
これは……呪い……?
目を開けたまま、身体をびくびくさせていて、本当に辛そうにしている。
メルちゃんのブックを取り出し、ステータスを見てみると、状態欄に『呪縛』と書いてあった。
呪縛状態異常付与の超強力攻撃をする敵が何十体もいる上に、物理攻撃が強力な巨大な敵が一体……。
まず、あの目から対処しないといけない。
やるとしたら跳ね返すスキルを使うか、魔法を使うか……。
でも、そんなスキルも魔法も覚えてはいない。
前は使えたけど今は使うことができない。
「なつめ……」
メルちゃんが口を開いた。
「私だけ置いて、なつめだけでも逃げて……!」
「――! 何言ってるの! 一緒に逃げるんだよ!」
私はメルちゃんを抱きかかえようとしたが、触れた瞬間に電撃のような痺れが私の身体にほとばしり、つい手を放してしまった。
「ダメだよ。呪縛は他の人にも影響を与えてしまうもの。触ったらなつめも呪縛にかかって動けなくなっちゃう……」
私はそれでも、メルちゃんを抱きかかえようとした。
体の痺れが、メルちゃんに触れるたびに増していく。
「う……あぁ……か、身体が……」
監獄島にいた時と同じ、痺れる感覚が私の身体を襲った。
「なつめ……」
私はメルちゃんの上に覆いかぶさるように倒れた。
呪縛のオーラが私に大量に移ってきて、身体が完全に動かなくなってしまった。
「ごめん……」
後ろから地響きがし始めた。
赤い視線が私たちに全て集まってきた。
「グォォォ……」
唸り声をあげ、ゴーレムが私たちに近づいてきた。
大きな影が私たちを覆い、赤い光線と共に、大きな岩の拳が私たちに向かってきた。
私は、もう駄目だと思い、目を瞑った。
爆音が鳴り、目の前が真っ赤に染まった。
(……あれ?)
体に痛みは感じない。
それどころか痒くもない。
爆音が鳴ってから数秒後、瓦礫が崩れるような大きな音がした。
目を開けると、宙に浮いていた無数の眼球は地面に落ち、赤い光を失い焼け焦げていた。
ゴーレムは後ろ向きに倒れていた。
いつの間にか痺れもなくなり、赤く黒い稲妻のようにまとわりついたオーラは消えていた。
「これは、一体……?」
私が頭に身に着けていたアクセサリーが赤く光っていた。
そのアクセサリーを髪から外して見てみると、何かの花の模様が赤く点滅していた。
これは確か、マミさんに貰った装備品……。
ダメージの無効化はまだ消えてなかった。
というか、今のは一回の攻撃判定なのかな。
赤く点滅しているということは、残り一回か、それとももうないか……。
まさか、攻撃を反射する効果があったなんて。
……あれ、その時に、後付けみたいに違う効果を言っていた気がする。
……そうだ――
『効果がなくなった後は身に着けていると、被ダメージが膨れ上がる』
そんなことを言っていたようなきがする。
この効果を逆に使えば、私たちに勝機はあるかもしれない。
メルちゃんは今の衝撃で気絶していた。
私は立ち上がり、魔力回復薬の入ったビンを一本飲み、ビンを投げ捨て、剣を片手に、もう片方にはマミさんからもらったアクセサリーを持ち、立ち上がろうとするゴーレムの目の前に立った。
アクセサリーを立ち上がろうとするゴーレム目掛けて投げ、ゴーレムの足にそのアクセサリーが付いたことを確認し、私は魔法を融合させた。
恐らく属性は土、なら、まずウィンドとウィンドを融合させて――。
融合玉を作り、何も入っていないポケットに突っ込んだ。
次に、ファイヤとサンダの魔法を合わせ、その融合玉を合わせる……。
……いかにも失敗作っぽい気味の悪い色の珠が作られてしまった。
爆炎の中で雷が渦を巻いているという、意味の分からない珠ができてしまった。
ま、まぁこれでもきっと強いんだろうし、何も気にする必要はないでしょう。
大丈夫、これできっと倒せるはず……!
ゴーレムは立ち上がり、大きな唸り声をあげながら、誰かに攻撃するわけでもなく、その場で腕を適当に振り回していた。
私は融合玉を転がし、ゴーレムの丁度真下に配置した。
「今までの分、全部お返ししてあげる! 魔法発動! 『渦巻く雷炎の怒り』!」
発動した瞬間、融合珠は砕け散り、中に入っていた塊がゴーレムを包み込む。
激しい雷鳴と爆炎の渦がゴーレムを襲い、次々と身体を崩壊させていった。
魔法の発動が終わる頃、もうゴーレムの形は跡形もなく消えていて、最後の一かけらが地面に落ちたところで、渦と雷は完全に消滅した。
渦に放り投げられた赤く点滅したアクセサリーが、私の目の前にぼたっと落ちてきた。
少し経つと、そのアクセサリーの点滅は止み、アクセサリーを掴もうと触れようとすると、崩れ去り、跡形もなく消えてしまった。
そうか、初めのメルちゃんの大爆発、次に、あの無数の目から発せられた光線、それに加えてゴーレムの右腕パンチの計三回の攻撃でダメージ無効の効果が消えて、最後の一回でダメージ超増幅の効果が――。
なんて恐ろしい装飾品なんだ……。
ゴーレムが崩れ去った後に残った瓦礫は全て焦げ消え、その中に残っていた山盛りのカランドメタリアが、私が来るのを待っているかのように自ら蒼く発光していた。
私はとりあえず、気絶して動けないメルちゃんを背負おうとしたが、杖が重くてとても背負うことができなかった。
一先ず、倒れたメルちゃんの背中を壁に付けて座らせ、それからカランドメタリアを集めに、発光している石に近づいた。
この量、100個では済まない。
形は歪でも大きさが同じくらいの石が、ざっと3、400個くらいはある。
それから、私は一つ一つ数えながら、石をポーチに入れていき、一応全ての石をポーチの中に詰め込んだ。
こういうのが私の悪い癖だ。
なんか勿体なくて結局全部拾っちゃう。
これ貧乏性なのかなぁ……。
まぁ、持っておくことに損はないだろうからね。一応、一応……。
それから私はメルちゃんの隣に座って、疲れを癒しつ、メルちゃんが目覚めるのを待つことにした。
次話もよろしくお願いいたします!




