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引きニートの兄を更生させるために異世界転生  作者: 桜木はる
第2-3章 【気分をあげていこう】
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157話 『依頼:装備品の素材集め4』

 複数の目玉が私とメルちゃんに焦点を絞った。

 すると、複数の目玉はメルちゃん目掛けて赤い光線を放った。

 光線の一本がメルちゃんの身体に命中し、爆発とともにメルちゃんの身体は吹き飛ばされ、神殿の壁に激突した。


「メル!!」


 私は咄嗟に回復魔法をかけた。

 私は目玉に見られないよう、壁際を走って行き、メルちゃんの元に近づいた。

 メルちゃんの身体からは、赤黒く、雷のようなビリビリとしたオーラが出ていた。


「う、動けない……」


 これは……呪い……?

 目を開けたまま、身体をびくびくさせていて、本当に辛そうにしている。

 メルちゃんのブックを取り出し、ステータスを見てみると、状態欄に『呪縛』と書いてあった。

 呪縛状態異常付与の超強力攻撃をする敵が何十体もいる上に、物理攻撃が強力な巨大な敵が一体……。

 まず、あの目から対処しないといけない。

 やるとしたら跳ね返すスキルを使うか、魔法を使うか……。

 でも、そんなスキルも魔法も覚えてはいない。

 前は使えたけど今は使うことができない。


「なつめ……」


 メルちゃんが口を開いた。


「私だけ置いて、なつめだけでも逃げて……!」

「――! 何言ってるの! 一緒に逃げるんだよ!」


 私はメルちゃんを抱きかかえようとしたが、触れた瞬間に電撃のような痺れが私の身体にほとばしり、つい手を放してしまった。


「ダメだよ。呪縛は他の人にも影響を与えてしまうもの。触ったらなつめも呪縛にかかって動けなくなっちゃう……」


 私はそれでも、メルちゃんを抱きかかえようとした。

 体の痺れが、メルちゃんに触れるたびに増していく。


「う……あぁ……か、身体が……」


 監獄島にいた時と同じ、痺れる感覚が私の身体を襲った。


「なつめ……」


 私はメルちゃんの上に覆いかぶさるように倒れた。

 呪縛のオーラが私に大量に移ってきて、身体が完全に動かなくなってしまった。


「ごめん……」


 後ろから地響きがし始めた。

 赤い視線が私たちに全て集まってきた。


「グォォォ……」


 唸り声をあげ、ゴーレムが私たちに近づいてきた。

 大きな影が私たちを覆い、赤い光線と共に、大きな岩の拳が私たちに向かってきた。

 私は、もう駄目だと思い、目を瞑った。

 爆音が鳴り、目の前が真っ赤に染まった。


 (……あれ?)


 体に痛みは感じない。

 それどころか痒くもない。

 爆音が鳴ってから数秒後、瓦礫が崩れるような大きな音がした。

 目を開けると、宙に浮いていた無数の眼球は地面に落ち、赤い光を失い焼け焦げていた。

 ゴーレムは後ろ向きに倒れていた。

 いつの間にか痺れもなくなり、赤く黒い稲妻のようにまとわりついたオーラは消えていた。


「これは、一体……?」


 私が頭に身に着けていたアクセサリーが赤く光っていた。

 そのアクセサリーを髪から外して見てみると、何かの花の模様が赤く点滅していた。

 これは確か、マミさんに貰った装備品……。

 ダメージの無効化はまだ消えてなかった。

 というか、今のは一回の攻撃判定なのかな。

 赤く点滅しているということは、残り一回か、それとももうないか……。

 まさか、攻撃を反射する効果があったなんて。

 ……あれ、その時に、後付けみたいに違う効果を言っていた気がする。

 ……そうだ――


『効果がなくなった後は身に着けていると、被ダメージが膨れ上がる』


 そんなことを言っていたようなきがする。

 この効果を逆に使えば、私たちに勝機はあるかもしれない。

 メルちゃんは今の衝撃で気絶していた。

 私は立ち上がり、魔力回復薬の入ったビンを一本飲み、ビンを投げ捨て、剣を片手に、もう片方にはマミさんからもらったアクセサリーを持ち、立ち上がろうとするゴーレムの目の前に立った。

 アクセサリーを立ち上がろうとするゴーレム目掛けて投げ、ゴーレムの足にそのアクセサリーが付いたことを確認し、私は魔法を融合させた。

 恐らく属性は土、なら、まずウィンドとウィンドを融合させて――。

 融合玉を作り、何も入っていないポケットに突っ込んだ。

 次に、ファイヤとサンダの魔法を合わせ、その融合玉を合わせる……。

 ……いかにも失敗作っぽい気味の悪い色の珠が作られてしまった。

 爆炎の中で雷が渦を巻いているという、意味の分からない珠ができてしまった。

 ま、まぁこれでもきっと強いんだろうし、何も気にする必要はないでしょう。

 大丈夫、これできっと倒せるはず……!

 ゴーレムは立ち上がり、大きな唸り声をあげながら、誰かに攻撃するわけでもなく、その場で腕を適当に振り回していた。

 私は融合玉を転がし、ゴーレムの丁度真下に配置した。


「今までの分、全部お返ししてあげる! 魔法発動! 『渦巻く雷炎の怒り(ライジングサン)』!」


 発動した瞬間、融合珠は砕け散り、中に入っていた塊がゴーレムを包み込む。

激しい雷鳴と爆炎の渦がゴーレムを襲い、次々と身体を崩壊させていった。

 魔法の発動が終わる頃、もうゴーレムの形は跡形もなく消えていて、最後の一かけらが地面に落ちたところで、渦と雷は完全に消滅した。

 渦に放り投げられた赤く点滅したアクセサリーが、私の目の前にぼたっと落ちてきた。

 少し経つと、そのアクセサリーの点滅は止み、アクセサリーを掴もうと触れようとすると、崩れ去り、跡形もなく消えてしまった。

 そうか、初めのメルちゃんの大爆発、次に、あの無数の目から発せられた光線、それに加えてゴーレムの右腕パンチの計三回の攻撃でダメージ無効の効果が消えて、最後の一回でダメージ超増幅の効果が――。

 なんて恐ろしい装飾品なんだ……。

 ゴーレムが崩れ去った後に残った瓦礫は全て焦げ消え、その中に残っていた山盛りのカランドメタリアが、私が来るのを待っているかのように自ら蒼く発光していた。

 私はとりあえず、気絶して動けないメルちゃんを背負おうとしたが、杖が重くてとても背負うことができなかった。

 一先ず、倒れたメルちゃんの背中を壁に付けて座らせ、それからカランドメタリアを集めに、発光している石に近づいた。

 この量、100個では済まない。

 形は歪でも大きさが同じくらいの石が、ざっと3、400個くらいはある。

 それから、私は一つ一つ数えながら、石をポーチに入れていき、一応全ての石をポーチの中に詰め込んだ。

 こういうのが私の悪い癖だ。

 なんか勿体なくて結局全部拾っちゃう。

 これ貧乏性なのかなぁ……。

 まぁ、持っておくことに損はないだろうからね。一応、一応……。

 それから私はメルちゃんの隣に座って、疲れを癒しつ、メルちゃんが目覚めるのを待つことにした。

次話もよろしくお願いいたします!

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