127話 『シルスの刻印』
え。何その異名。聞いてないんですけど。何神様名のもとにしてるんだこのエルフ。ちゃんと私でもわかるような話の筋道作ってくれないかな。
「全能力開放。シルスの力、思い知りなさい」
「ちょっと余計に分からないんけど」
『ちょ、猪口才な!』
猪口才ね! うん猪口才だ! 限りなく猪口才だと思うよ私も!
兵士が剣を構えて切りかかってきた。シーゼルは私の目の前に出た。
「ちょ、シーゼルさん……!」
「運命共同体にさん付けも敬語も喧しい」
「それあなたが全部悪いんだけどね」
「よし、まずは無力化と自己強化から……オールハック!」
うっ、なんか空間が妙に歪んで見える。特に兵士三人がいるあたりが。
三人の兵士は勢いを無くして立ち止まり、その場で座り込んでしまった。
一体何をしたんだろう。三人を一気に座り込ませるなんて……。
『ち、力が……でねぇ……。なんで……』
「全部貰ってるからだよ。じゃ、さようなら」
貰ってる……?
そして、三人の兵士は皆倒れて動かなくなった。兵士の体から蒼く発光した丸い玉が出てきた。
「はい、もらい」
その光の玉をガシッと手でつかんでそれを食した。
「え、それ食べるんですか?」
「うん」
「さっきから思ってたんですけど、そのもやーっとした玉なんなんですか?」
「これは魂よ」
え。
私は唖然として口をぽっかりと開けてしまった。
「嘘嘘。これはただの魔力源みたいなものだから」
「うーん。色々気になることありすぎて分からないのですが」
「何が?」
「それはですね――」
私はシーゼルに訊きたいことを全て訊いた。
まず一つ目。
シーゼルについて。シーゼルの存在そのものがよく分からなかった。エルフがいる世界から来たとは聞いていた。ただ気になる点が一つ。
一体シーゼルは何者なのか。
「私は、エルフの創神シルスの産んだ子とでも言っておく。エルフの創神というのは、私たちの世界にいた神様のこと。昔は崇められていたけれど、人間に、老いたところを殺された。それからはエルフはね…………いや、これはやめておく。とりあえず、あっちから逃げてきたとだけは言えるかな。他は終わったけど」
他は終わったとか意味深そうなこと言っちゃって余計混乱しそう。つまりはあれだ。人間に追いやられてこっちの世界に来たってことだ。でも何故エルフが人間に? その重要な部分を教えてくれないシーゼル。もしかして某ゲームみたいに絆ゲージとか、ギャルゲーみたいに信頼度とか好感度とか上がらないと話してくれないみたいな? 変なところで別ゲーム要素いらないからさ、教えてほしいなぁ、詳しいこと。
よし次は二つ目。
契約について。
「全部話すと二日三日は話すことになるかもしれないから、一つだけ言っておく。私は所謂〝魔物〝だ。そして、人間との契約を交わせる特殊な身体なの。今まで幾度となく契約を迫られたけど、なんかしっくりきてるやついなくてねー。さて本題。魔物との契約は魔物と運命の共同体になることと同じ。魔物が死んでも主は死なないけど、主が死んだら魔物は死ぬ。その代わり、魔物は凄まじい力を得、主は契約した魔物を制御する権利を有する。つまり、文字通り能力開放一心同体ってことね。あ、何か言った方が分かりやすいかもしれないから言っておくけど、契約者と召喚士は全くの別物だからね。私は魔物で、なつめを守るため(自分を守るためでもある)にずっとくっついて尽くす者」
なるほど。だから変な能力を使えたわけか。しかし、シーゼルが魔物だなんて……。エルフはもともと魔物という種族なのかもしれないけどなぁ……お兄ちゃんから魔物図鑑のこと聞いてたし、あとでブックでエルフについて調べてみようかな。そこにシーゼルのことが書いてあるかもしれないし。
さて、そして三つ目。
――エルフの創神シルスとは?
「さっきも言ったけど、シルスは私の産みの親。つまり母。母はもう殺されたけど。私に契約承認を許可したのは」
私はシーゼルの父についても訊いた。
「さぁ、お父さんはどっか行っちゃった。もう数百年も前にね」
数百年だって!? シーゼルは一体いくつなんだ!? 訊きたいけど訊きづらいな……。だって訊いたらめっちゃ傷つきそうじゃん……。デリカシー云々とか絶対言われそうじゃん。
「さて、いきましょ。訊きたいことはもう終わったでしょ?」
「そうですね。いつまでもここにいるわけには行きません。もしかしたら、先に外に行った人が仲間を呼んでるかもしれませんし」
「うん」
私たちは話を終えて再び歩き出した。
次話もよろしくお願いいたします!




