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引きニートの兄を更生させるために異世界転生  作者: 桜木はる
第1-1章 【妹の救済とバイト】
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9話 『虫眼鏡とオーガ!』

☆8話のあらすじ☆

ついにフィレスの森に入った一行。

しかし道が分からなく迷ってしまう。

そこに自分を探偵と名乗るマミという人物に会い、マコトムシメガネというアイテムをもらい、道を教えてもらった。

 木々の微かな隙間から見える空は蒼く、澄んでいて、太陽は俺たちのいる森に光を与える。

 あぁ、何と美しいものか。こんなに綺麗な景色を元の世界で目にした事があるだろうか。

 ずっと、真っ暗な部屋の中に籠っていた俺は、このような景色を見る事ができなかった。

 外に出てから、太陽の光が暖かい事が改めて分かった。部屋の中では暑い寒いだけの空間だったが、太陽の光には違う暖かさがある。世界と心を照らしてくれる。外は案外良いのかもしれない。

 ——まだ、時計は十六時を廻っていない。

 まだ間に合う。早く助けに行かなければ。


「だいぶ歩いてきたが、まだ着かないのか」


 この森に入ってから二十、三十分くらい経っていて、なつめの安否が心配だ。

 そういえば、マミとかゆう探偵に貰った、正式には無理やり買わされたみたいなものだが、確か想像したものがマコトムシメガネに映るとか言ってたか。試してみよう。


 《なつめは何処にいる……》


 なつめの事だけを一心に考える。

 すると、レンズに見慣れない景色が映った。

 ここは一体……? 

 森の中に村が見えて、すぐ景色が映り変わる。

 次は大きな木……そして牢屋……! 

 次に映ったその光景は衝撃的なものだった。

 なつめとイリアさんが大きな木のくぼみに不自然にある牢屋の中で閉じ込められている! 

 助け出そうとしてイリアさんも捕まったのか……! 

 でも二人とも壁に寄りかかって寝ている様に見える。無事みたいでよかった。


「何か見えたのです?」


 メルが不思議そうな顔をしながら聞いてくる。


「ああ、なつめとイリアさんが牢屋に捕まっている」

「そ、そんな! 二人は大丈夫なの!?」


 驚かないはずがないよな。こんなこと日常生活で起こるはずないのだし。


「一応無事みたいだが……何が起こるか分からないし、早く行こう」


 メルは頷き少し早歩きをする。他人なのに、そんなに心配になるのだろうか。まあ、俺もめちゃくちゃに心配しているんだし、人の事を言える立場ではない。


 ——助けに行く。

 それも今まで部屋に籠っていた俺が、言える立場ではないかもしれない。

 でも、今は助けなければいけないものがある。もはやその様な立場など関係はない。

 ここは……あのレンズに映った村だ! 

 獣道を抜けたと思ったら、目の前には大きな村が現れた。


 一つ一つの家は決して綺麗ではない。もう何十年もの時を経て朽ちた様な木造の家ばかりで、壁の木は腐り、植物が家全体を覆っているものがいくつもあったりなど、酷い有様だ。


「あれは……」


 奥の方にレンズで見た景色通り、とてつもなく大きな木がある。あそこになつめたちが……! 

 早く行かなければ! 

 俺たちは走った。

 道中魔物が出てきて、少し手間取ったが、メルが普通に全てぶっ飛ばしてくれたおかげで思うより早く木に着けた。


「誰だ……? こんな森の奥深くの村に客人とは珍しい」


 木の上の方から声が聞こえ、声の主がスイスイと木下に降りて来て、俺たちの目の前に立った。


「見かけねぇ顔だ。お前達、どこからやってきた。目的はなんだ?」


 目の前に立ったのは狼みたい容貌で、毛が全身から生えている様に見える。さすがにズボンは履いている様だが、他は何も着ていない。


「お、俺らはザトールから来た! い、今牢屋に閉じ込められている二人を助けに!」


 鋭い爪、微かに見える牙が恐怖をさらにあおる。

 怖い。いつ襲われてもおかしくない状況だ。


「ほう……あの娘達が言っていた男とはお前の事だったか」


 俺のこと言っちゃったのかい! もうそんな事はどうでもいい! とりあえず今は……


「ふ、二人を返せ!」

「いいだろう」


 え? いいの? 


「だが、それはこいつを倒せる事が出来たらの話だがな!」


 木の陰から出てきたのは、一つ目のオーガだった。

 ウサギから聞いてはいたが、実際見るととてつもなくデカイ。そこらの家よりも赤いデカい図体に右手には巨大な木の棍棒、頭には一角がありボロボロのデカイ服を着ている。

 こんな奴を倒せったって無理だろう!


 狼の容貌をした獣人が木の上に退けて文字通り高みの見物をする。

 くそっ……どうすれば……! 

 オーガは俺たちに向かって棍棒を振ってくる。

 しゃがんでギリギリ避けたが、これがいつまでもつか。あたったら恐らく即死並み、いや即死するだろう。

 そもそも俺らのレベルでこんなヤバそうな敵と戦う事自体がおかしい。


「メル! 大丈夫か!」


 メルは少し離れた所で木の陰に隠れてこちらを見ている。

 戦いに参加せんかい!


「ウサギ! どうすれば!?」


 ウサギは俺の背後に隠れている。自由に動けるのお前くらいなんだから少しは加勢してくれよ。


「オーガは頭の悪い筋肉バカ! 考えるより先に手が出る。しかもこいつは一つ目だから、本当に目の前にいる敵にしか攻撃を仕掛けてこない! 以上!」


 分析だけかよ! って、あぶなっ! 

 オーガが俺らに向かって棍棒を振り下ろす。

 身体能力的にもなかなか辛いし運動を全くしていなかったせいでもう疲れてきた。

 しかしこちらの状態なりふり構わず棍棒を振ってくる。とても長い間は耐えられない……! 

 解決策はないか……解決策は……

 マコトムシメガネ! これで何かしら見えれば……! 


《このオーガをどう倒せばいい!?》 


 マコトムシメガネには何も映らない。

 逃げる方法と倒す方法を同時に考えるとこんがらがって考えがまとまらないからだ……! 

 考える事をまとめるために

 まずはどこかに隠れる事を優先するんだ! 

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