表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
引きニートの兄を更生させるために異世界転生  作者: 桜木はる
第2-2章 【テイシング監獄島 ~なつめと訳ありエルフの脱出大作戦~】
137/232

123話 『ズッコケ解決』

 移動するための魔法陣が描いてある床の一部の周りに二人の兵士がいた。どっちも階段側の壁を見ているようだ。あっちからは、階段が暗くて私たちの姿は見えないのだろう。


「(これからどうするんです?)」

「(……正面突破は無理ね)」

「(そんなことは百も承知です)」


 シーゼルは頭を抱えて小さく唸った。


「(私もできることなら何かしたいのですけど、いつもの力が全く出る気がしなくて……)」

「(……それは呪縛の追加効果だから仕方ないよ。私が何とかやるから)」


 エルフとて女の子。一人で二人を相手させるなんて無茶な話だろう。私でも何かできればいいんだけれど、シーゼルがいる場所じゃ、マジッククリエイトは使いたくない……それに、今、私のステータス状況がどうなっているかも分からない状況だし、迂闊に動くのはかえってシーゼルを危険に晒してしまう可能性が高い。


「(透明化を使って、一人ずつ倒してくる)」

「(……その透明化って、攻撃したら効果なくなるとかありますか?)」

「(うん)」


 ステルスか……。その一発で命運が決まるといっても過言ではないスキル。それに、攻撃をする瞬間に効果が切れるから、一瞬の隙を見られて反撃されたら……と考えると、本当に一か八かの作戦。私が何かできれば……。


「(もし……もし私が気づかれたときは、なつめだけでも出てって)」


 シーゼルはとんでもないことを口走った。よく見る私はいいからあなただけでも的な何かを感じた。

 さすがにそういうわけにはいかない。なんたって私が誰かを見捨てなきゃいけないんだ。


「(いや、それはナシで)」


 きっぱりと断った。

何故かシーゼルは目を丸くした。


「(……そう。じゃあ、私が後ろに回り込んで近接射撃で一人だけ射る。そしたら、なつめはもう片方を惹きつけて。手段は問わないけど、音はなるべく小さくね)」

「(わかりました)」


 そう言ってシーゼルは姿を消した。本当に行動力はある子。

 もうどこにいるかもわかんないんだけど。まぁきっと後ろに回っているでしょう……。

 そうこう考えていると、一人の兵士が倒れた。作戦実行も早い。

 私は間を開けないように、シーゼルに気が付いたもう一人の兵士が武器を構えた瞬間、私はその兵士に飛びついてポコポコ殴って倒した! ってしたかったけど、途中で躓いて思いっきり兵士にぶつかり、倒した挙句、私の全体重も追加で地面にたたきつけてしまった。結果、兵士は気絶。終わり良ければ総て良し。シーゼルは満足していなさそうな微妙な表情で私を見つめていたけれど、最後は笑って流してくれた。たぶん苦笑いだったろうけど。


「(この二人どうするんですか?)」

「どうするもこうするも、縛っておくか殺生するかしかないでしょ」

「(殺生はやめましょう、殺生は)」

「でも縛るものが……」

「(そうですね……いっそのこと、私たちがここから出た後、この魔法陣みたいなの消すことってできません?)」

「……できないこともないかな」

「(じゃあそうしましょう)」

「え」

「(この施設にいる兵士全員を閉じ込めておけるなら、それほどいいことはないので)」

「……なつめって結構残酷なこと言うね」


 心外です。

 私は、『そんなことないです。もっとヤバい人はこの世の中に沢山いるから』というつもりで首を横に振った。


「(それじゃあ行きましょう)」

「うん」


まず始めに、シーゼルが透明化をし、魔法陣内に入り、先に偵察に行く。戻ってきてステルスを解除した後、私に部屋がどんな様子だったかを伝える。

 この作戦を決行し、すぐにシーゼルが帰ってきて転移後の部屋には一人もおらず安全だということを伝えてくれた。私は安心してこの施設を脱出することができた。


「(ここが別施設……)」


 早くこのガラガラ声直らないかな……。


「ここがヤツの根城……」

「(ヤツ……?)」

「さっき言ったでしょ。シドモンだよ」

「(……そうでしたね。ここからどうするんですか?)」

「(ここからは、あなた一人に移動を頼みたい)」

「(はい?)」

「私は透明になって隣にいるから」


 シーゼルは床に描かれた魔法陣を、足で擦って少しずつ消していく。


「(なんでですか?)」

「死んだことになっているあなたに加えて、今は深夜。分かるよね?」

「(そんな滑稽な方法が通じるとは思えないんですけど……)」


 シーゼルは消し終えた魔法陣跡に手を翳した。


「いいの。私がいたらすぐバレるでしょうし」


 転移用の魔法陣跡から、青白い球が発生し、ゆっくりとシーゼルに吸い込まれていった。


「(……わかりました。バレないように頑張ってみます)」

次話もよろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ