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引きニートの兄を更生させるために異世界転生  作者: 桜木はる
第2-2章 【テイシング監獄島 ~なつめと訳ありエルフの脱出大作戦~】
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122話 『その笑顔、本当に意味があるのか』

Wi-Fiが壊れて更新が滞ってしまいました~!

これからはできる限る早めに更新していきます!


「(……作戦は決まりでいいんですね?)」


 私がこう尋ねると、シーゼルはうんと頷いた。


「(作戦の実行はいつ――)」

「今日」

「え」


 行動力はすごいらしい。まぁ、考える時間すらもったいない今、実行に移すのが吉なのかも。


「(いつ頃ですか?)」

「今、今だよ。今が絶好の時」

「(……何故?)」

「今の時間帯はたぶん深夜。夜は警備をする人数が減るし、明日は確か処刑執行日。私が殺される日」


 なんとこのエルフ。時間の感覚と日にちの感覚があるらしい。どうしてなんだろう。時計もないし、カレンダーもない。


「不思議そうな顔してるね。何故か? それは簡単。時間は、運ばれてくる食糧で決まってる。それに、朝は何、昼は何、夜は何って、運ばれてくる食糧が、時間帯ごとに決まっているから、それで、日数の流れ、含めて時間の流れを確認してるからよ」

「(なるほど、わからん。つまりどういうことです?)」


 シーゼルは呆れた様子でため息をついた。


「あなたが起きる前、食糧が運ばれてきた。はいこれあなたの分」


 そう言って、シーゼルはベッドの下から、さつまいものような色味の、食べ物か認識しづらい物が乗せられている、日々の入ったお皿を手に取り、私に差し出した。


「野菜なのか肉なのか、将又別の何かなのかは分からないけど、これが夜の食事。正直美味しくないけど、食べないと死んじゃうよ」

「(う、はい)」


 私はお皿を受け取って、その識別できない食糧をかじった。

 うわ、調理してないじゃん。めっちゃ堅いよこれ。さつまいもみたいな見た目だから、美味しいかもとかちょっと思ったけど、全然美味しくない。

 それでも、お腹が空いて全く力が出なくなるよりはマシかと思い、我慢しながら少しずつかじっていった。


「本題に戻るけど、とりあえず今しかない。それ食べ終わったらすぐ行くよ。朝になる前までに、何とかこの施設と上の施設から脱出する」

「(……もぐ)」


 私は堅い食糧をかじりながら頷いた。

 これ消化できるのかな……ちょっと心配になってきた。後からお腹痛くなるとかないよね……。

 少し時間が経ち、シーゼルが、私がこれを食べる様子をまじまじと見つめてくる中、その何かを食べ終えた。


「よし、行こう!」

「(はい!)」


 私たちは立ち上がり、牢の扉を、音をあまり出さないようにするため、ゆっくりと開けた。その際、驚いたことに、全然力が入らず、シーゼルの手を借りてやっとのことで扉を開けることができた。

 私、どれだけ衰弱してるんだろう。自分に対して、心配ばかりが募って仕方ない。シーゼルはきっとこのことを理解してくれているとは思うけれど、私は私で、迷惑にならないかが心配でならない。私がいない方が成功率は上がるのかも……なんて考えてしまう。皆の元へ生きて帰らなければいけないのに。

 足音が響かないよう、慎重に階段を上り、少しして一つ目の円形部屋のすぐ前までやってきた。


「(よし、今から、さっき言った通り、あいつをこの部屋から遠ざけるから、そしたらすぐに私についてきてね)」

「(……はい)」


 ついて行けなかったらどうしよう。躓いて転んだり、無駄に音を鳴らしてしまったりしたらどうしよう、なんて、無駄なことばかり考えてしまう。

 シーゼルは弓矢を創り、兵士が見ていない方向に矢を放った。奥から物と物がぶつかるような心地の良い音が聞こえ、その音に気付いた兵士は、一目散に別の牢屋に続く通路に駆けていき、円形部屋には誰もいない状況になった。

 なんてガバガバな警備なんでしょう。

 私の心配も無意味なもので、難なく、シーゼルの言う、階段がある部屋に続く通路に入るができた。


「(この調子でどんどん行こう)」


 シーゼルは自分の作戦が成功したことの喜びからなのか、嬉しそうな笑顔だった。


「(そうですね!)」


 先ほど同様、音が鳴らないように通路を歩き、やっとのことで通路を抜け、階段のある部屋に辿り着いた。


「(……そういえば、他の受刑者はいないんですか?)」

「もういない」


 即答だった。

 ……もういない、とはどういうことか。


「(わかるんですか? そんなことも)」

「……みんな殺された。それだけだよ」


 みんな……?


「ほら、早く行くよ」


 シーゼルは先ほどの喜びとは一転、表情が途端に曇った。空気が重々しい。シーゼルが少しピリピリしているように感じる。

 悪いことを聞いてしまったかもしれない。反省しよう。そうだ、ここは話題を変えて、シーゼルに少しでも機嫌を直してもらおう。じゃないと、今後変に作戦実行過程において支障が出かねない。関係性は何よりも大切、なはず。たぶん。おそらく。きっと。


「(あーあぁ、えーっと……シーゼルさんって、他にどんな技を使えるんですか?)」

「え? そうだなぁ……」


 シーゼルは顎に手を当てて思いついたものを順々に言っていった。


「あー、自分の姿消すとか、軽い治癒とか、あとは、私がやってた魔力回復の手段くらいかな。それがどうしたの?」

「(へぇ……)」


 まずい。自分で聞いたのに全く話を聞いてなかった。とりあえず機嫌とれればいいやって思って質問したから、まさかその質問を何故したかって質問が返ってくることを予期してなかった。


「(い、いやぁ、すごいなぁって)」

「……ふふ、何それ」


 ……シーゼルが笑った! ク〇〇が立った時並みの感動感ある! 彼女自身に笑顔に意味がなくとも、私にとっては多大な意味がある! うん、すごく落ち着く!

 ――その後、同じ手口で次々と兵士の目を欺いていき、最後の部屋、つまり完全に死角のない転移部屋まで、本当に難なく辿り着いてしまった。

ラ抜き言葉です。


次話もよろしくお願いいたします!

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