114話 『出発』
…………。
ぐう。
…………。
「師匠起きてくださーい!」
「わっ!?」
シルエが耳元で大声を出して起こしてきた。私は飛び起きて、辺りを見回した。私以外のみんなは、準備を済ませて私を待っている様子だった。
「もう3時になるよ? 早く行こう!」
メルちゃんは、自分の杖をいつもの袋にしまい、背中に背負っていた。お兄ちゃんも、すぐに使えるものを服のポケットに入れたり、剣をちゃんとした鞘に入れ腰にかけたりして、完全な準備を整えていた。
「あれ? マミさんは?」
「そういえば見ませんね。散歩に行ったのかもしれません」
「そっか……」
マミさんの使っていた毛布は綺麗にたたまれていて、その上には枕が置かれていた。ポーチからはセナさん……ウサギのぬいぐるみが顔をひょっこりと出していた。
「それでは行きましょう。あ、エミさん。夜は声が響くからあまり声出さないようにしてね」
「……わかりましたです」
なんかエミさんっぽくない応答の仕方……。絶対に「超了解っスぅ!」とか大声で言うかと思いきや、粛々とした態度で、昼とはまるで違ってとても控えめになっていた。
私たちはテントから出て、南の洞窟向かって歩き始めた。
「この大陸、夜行性の魔物が非常に多いですから、気を付けて進みましょう」
『ウォアォーン!』
「バレましたね」
オオカミのような風貌をした魔物の一群がこちらに向かって走ってきた。
「フラグ回収が早すぎるって!」
「仕方ありません。サクッとやりましょう!」
先頭のオオカミが止まり、私たちに威嚇をし始めた。まだ威嚇で済んでいる状況だったら、一回引いた方がいいのかも……。でもシルエたちはやる気だし、私はもうすぐレベルが上がりそうだし……仕方ない、やるとしますか――
「敵の性格は獰猛。全体平均レベルは22.タレントなし、特技は一律で噛みつきのみで、魔法は持っていません」
エミさんが口早に敵の分析をし始めた。
「うんうん。さすがです」
シルエはエミさんの頭を撫でた。エミさんは嬉しそうに、照れながら笑っていた。
「エミさん……?」
「あぁ、言うのを忘れていましたね。彼女は、『エミ』であるのですが、正確には『エミ』ではないんです」
「それはどういう……?」
「話すと長くなりそうなので、奴らを片付けてからにしましょう!」
私は早く話を聞きたいと思い、早速魔法玉を二個作った。
今回試すのは氷と雷。さぁどうなるのかな……?
私は二つを慎重に結合させ、黄色と青色がぐちゃぐちゃに混じった魔法玉を作りだした。
早速やりたいところだけど、私自身も物理戦法や、回復サポート役に回れるような立ち回りをできるように練習してからにしよう。
「それじゃあ、私がサポートするから、前衛の人、攻撃よろしく!」
お兄ちゃんやメルちゃんは威嚇をする魔物相手に、好戦的に突っ込んでいった。それに引き換え、シルエたちは全く前には行こうとしない。
そんな彼らに、私は訊いてみた。
「前に出ていく人はいないんですか?」
シルエたちは顔を見合わせて、黙り込んでしまった。
「いるにはいるのですが……。自分の能力に自信がないらしいんです。あの当時の感覚を取り戻してくれればいいのに……」
シルエは、後ろに引いて辺りをキョロキョロ見回すガイザーを見て、ため息を吐いた。昔の感覚やらエミさんの件やら……色々とありそうな人たち……。
「あの子たちは……?」
「シェイクとブルドは、まだ子どもですし、タレント能力が不明なままで、戦いに出すわけには行きませんので、ショーのお手伝いをしてもらっています」
タレント能力が不明……? 占い師にみてもらえばすぐにわかるんじゃ? それとも、タレント能力そのものをみることができないとかなのかな。謎が深いなぁ……。
「なつめ、回復を! それに、この数を二人で相手するのはきつい!」
さすがに不利な状況か……。
「キュアー! キュアー!」
……二回連続で回復魔法唱えると、魔物が叫んでいるみたい。
それはともかく、二人にそれぞれ傷を癒すために回復魔法をかけた。二人の傷は癒え、何とか元気を取り戻した。こうなったら私も行くしかないか……!
「私も行ってきます! サポートできる方がいたらお願いします!」
「それでは私が……」
エミさんが少し前に立ち、力強い目で私に向かって頷いた。この人は確実に口を開きすぎなければ好かれるタイプの人間だと、その瞬間に思った。
よし、行くか!
私は、修復した傘型の武器から剣を取り出し、脆い傘を盾にして前に出て行った。
次話もよろしくお願いいたします!




