96話 『星占い師セナ』
来るときに見つけた宿屋に行き、セナさんが戻ってくるまで数日間泊めさせてもらった。が、なかなかお高い宿屋で、三泊で七万ギフ……お兄ちゃんが装備品を買ったせいで一文無しのお兄ちゃんの分は私が払うことになってしまった。『私が一文無しになってしまうわーっ!』って海に向かって叫びたい。
今は三泊して四日目のお昼。私たちはいつもの所で食事を済まそうとしている。ちなみにいつもの所とは、初日のお昼に来た食事処のこと。
今日はカレーライスを食べよう。ここ結構メニュー豊富なんだよね。オムライスみたいなのもある。
私たちはいつも通りおばさんに呼びかけて注文をする。そして数分後、私の目の前にはカレーライスが置かれる。何故カレーライスがあるかは知らない。どうせ製作者の好みでしょ。
スプーンを手に取ってカレーとお米を同時にすく……あれ? お米ってこの大陸にあったっけ? 麵とかパンがあるのは知っていたけれど、お米はなかった気が……
「あのー、すみません」
おばさんに訊いてみることにした。
「なんだい?」
「このお米って何処でとれたんですか?」
すると、おばさんは厨房に入り、一つの袋を持ってきた。
「これはここから西の大陸にある『ルミーナ大陸』から買ったもんなんだよ。この大陸では環境的に育てることができないらしくてねぇ……」
環境的に育てることができない……まさにこの大陸が一番お米を作りやすい環境だと思うんだけど……そうでもないのかな……?
「コメはある特定の土地上でしか届かないんだ。それがこの大陸にはない。だから育てられないんだよ」
「ほえぇ……」
なるほど……土地の問題だったか。それは確かにどうしようもない。
私はそれを聞いて会釈しお礼を言った。
カレーライス一口目! をパクり。
うん美味しい! なんとなく懐かしい味がする!
料理を食べ終え、私たちはこのお店の中に少しいさせてもらうことにした。
と、そうした瞬間にポーチが揺れだした。
そして唐突にポーチを開けて出てきたのはうさぎのぬいぐるみ、すなわちセナさんだった。
「よぉし君たち! 作戦決行は明日だっけか――え? ここってサン町の……? え? どゆこと?」
「あ、セナだ。おかえりなさい」
「あらメルちゃんこんにちは。ってちゃうわーっ!」
迫真のツッコミ……!
「あなた達何故ここに? ダモンはどうしたの!?」
私はぬいぐるみの体を両手で囲うように掴んでセナさんを前後に揺らした。
「遅いよ! 本当に何してたの?」
「のわっ!? わたひはリアルなお仕事をしてひただけでぇ……」
揺らされながらも懸命に話すセナさん。リアルの仕事が溜まっていたから、徹夜して全て終わらせてきたらしい。こっちに持ってきて仕事することはできなかったのかと聞くと、こちらから現実に持ち帰ることができるアイテムはあっても、現実からこの世界には持ってくることができないと言っていた。
早く終わらせて肩の重荷を全て無くして、この世界で遊びたかったらしい。こっちは遊びじゃないってのに。
「あのさぁ……」
私はあきれてセナさんを机の上に置く。
おばさんとおじさんは驚いて硬直していた。無理もないだろう。頭おかしいハイテンションな喋るウサギのぬいぐるみが来たら、誰でも驚く。
それから、セナさんに今まで起きた事柄を、私がしたこと以外全て話した。セナさんは変に思ったのか、少し首を傾げて何かしらを考え出した。
「あ、私の魔力を吸って生き返ったんだよ。パミルは」
「なるほど、納得」
疑問が晴れたらしく、セナさんは考えるのをやめて一気にパッと明るく振舞い始めた。
「じゃあ次は大陸移動ってことね! やっと進めることができるのね!?」
「そうなんですけど、私はセナさんに会いたいんですよ」
「私にはもう会ってるでしょ。まさに今」
「そうじゃなくて、この世界での本体に」
「ああ、そういう……」
セナさんはため息を吐いてぐったり倒れ込んだ。完全に意識が抜けたみたいだ。とすると、今は本体がこっちに向かって……
と思ったその時だった。
扉を勢いよく開け、奇抜な衣装をした髪の白い女性が息を上げて飛び込んできた。
「やぁ! 私がセナだよ! うへへ」
セナと名乗る女性は奇妙な笑い声を発した。
私は突然の出来事に唖然としてしまい、声を出そうとしてもだすことができなかった。
次話もよろしくお願いいたします!




