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引きニートの兄を更生させるために異世界転生  作者: 桜木はる
第1 - 4章 【剋殺・過去】
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95話 『食事処』

 町の人に、この町のオススメの店を訊いたが、皆それぞれバラバラだったため、結局その中から決めることになった。

 話し合った結果、町の人からは三つの店が上がってきたけど、その中の一つ、『コルネ』という麵のお店に行くことになった。話によるとそのコルネ、私達で言うそばやうどんが食べられるらしくて、私とお兄ちゃんは久々に食べたいということで、三人の多数決で決まった。ちなみに、メルちゃんは私たちに合わせることで意見を一致させた。

 そのそば処は港近くにあると聞いた。私たちは町の様子や街並みを見て楽しみながら歩いて行った。この町もレンガや石でできた家が多く、なんだか、見飽きたなぁ、と思った。

 世は石造り時代。

 話しながら歩くうちに、港に着いた。見た事もない形の船や、ヨットもあったが、その中には高級な旅客船のような巨大な船もあった。おそらくその船が次の大陸へと私達を運んでくれる箱舟だと思う。いやそう思いたい。あれであってほしい。


「あれじゃない?」


 メルちゃんが一つの建物を指した。指した先には、正面の扉の上に暖簾がかけてある少し古臭そうなお店があった。麵処って書いてある。麵処……?

私達はその店の前に立ち、中の様子を窓から確認した。お客さんは誰もおらず、中には椅子に座って誰かと話している少し歳のいった女性がいて、奥にはグルグル巻いたタオル輪状にして、頭に結んでいるおじいさんがいた。おそるおそる中に入ると、おじいさんの「いらっしゃい」という声が聞こえ、その後におばさんが席を案内してくれた。

オススメ、と言われてきたが、ここまでガラガラだと本当に大丈夫なのかとどうしても思ってしまう。

 おばさんは私たちにそれぞれコップいっぱいの水と、この店のメニュー表を渡した。そして、「決まったら呼んでおくれ」と言い、また違う席についておじいさんと話し出した。


「どうする?」


 私が訊くと、お兄ちゃんはメニュー表を開き、最初に目についた冷麵を選んだ。メルちゃんはページをめくり、真剣な眼差しでメニューを見ていく。そして、「これ!」と言い、指でさしたのが、きつねそば。

この店にきつねそばたるものがあっていいのかと疑問に思ってしまう。

だってさ? 店の名前がまるで洋風なのにメニューが日本食ってさ、なかなか思わないよね? ああでも、この仮想ハードリアルゲーム考えたのは日本人だったっけか……。

私は疑問を抱きながらメニュー表を受け取り、ページを捲りながらじっくり見た。料理の絵はなく、ただ料理の名前が載っているだけで、どうも分かりづらい。一応洋風っぽいメニューはあるものの、食わず嫌いなおかげで知っているものじゃないと手を出したくないという謎の概念が出てくる。この世界に知ってる知ってないを持ち込んじゃいけないとは分かっているけれど、どうも飲食店でメニュー表を見る時は何処でもそう思ってしまう。

見たことがない名前の料理は諦め、私は仕方なく、『ソバ』という明らかに『そば』だろうというメニューを選んで、歳のいった女性を呼んだ。


「すみません」

「はいはい、決まった?」

「はい」


 私はメニュー表を開き、冷麵ときつねそばとソバを頼んだ。歳のいった女性はメニュー表を持ち、奥にいるおじさんにそのメニューを伝えに行った。おじさんは静かに頷き、何かを叩き始めた。

 もしや手打ちからしてくれるお店だというの……!?

 少し手打ちの様子を覗きたい気にもなったが、邪魔になるかもしれないと思い見るのをやめた。

 数十分後、私たちの目の前にはそれぞれ頼んだものが持ってこられた。

 私が頼んだソバはつけ麺だったみたいで、お盆の上にある皿の上の平らな木製の板に麵が乗って、その隣にはつゆが入った猪口、そしてネギが違うさらに取り分け入れて、その中には山葵のような緑色のものがあった。早速、お盆の上に乗っている箸を手に持ち、手を合わせていただきますと言った。私は基本的に汁に山葵をつけない。

お母さんはよくつけて食べていたけど、私はそばと汁のハーモニーを楽しみたいのです。

ネギを猪口の中に入れ、箸で麵を掴み汁につけ、汁が落ちないうちに麵を啜った。

麵は食べたことがないくらいコシが強く、食べ応えがある麵だった。それに、何といっても汁が美味しい。甘味や少しのしょっぱさがうまく調和していて、もちもちの麵とよく絡み合っている。

 他の二人も麵を美味しそうに啜って食べていた。

 すぐに食べ終えた私たちはお金を払って店を出て行った。


「美味しかったね!」


 メルちゃんがお腹をポンポン叩きながらそう言った。


「ね。なんで昼時なのに人がいないんだろうって思っちゃうよね」

「人には言えない事情があるんだろ。俺らが口を出すような事じゃない」


 いつにもなく冷徹だ。


「これからどうする?」


 店の前で立ち止まって、私たちは考え始めた。先に次の大陸行きの船の切符を買うのは悪くないけど、それを買ってからが一番の問題。私としては、セナさんの姿を一度でもいいから見てみたいという願望がある。


「セナが来ない限り行動を勝手に進めるのはどうかと思うんだよな、俺」

「何で?」


 私が訊くと、お兄ちゃんは、「一応仲間だし、仲間の意見を全て一致させてからにしておきたい」と言った。そのことは私も少し思っていた。この町についてや、切符の買い方など何も分からない状況で勝手に行動するのは少し危険だとは思っていた。

 私はまたポーチカラウサギのぬいぐるみを取り出した。顔を引っ張ったり、長い耳を結んだりしてみたが、何も起きない。


「……ここにいたってどうしようもないし、セナさんが戻るまでいれる宿屋に行こう。途中宿屋っぽいとこあったから、そこ行こう」


 ウサギのぬいぐるみをポーチの中に入れ、私たちは宿屋を探しに、来た道を戻り、宿屋がある場所に向かった。


次話もよろしくお願いいたします!

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