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引きニートの兄を更生させるために異世界転生  作者: 桜木はる
第1 - 4章 【剋殺・過去】
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92話 『ザトールの様子は?』

遅れてしまい申し訳ございません!

勉強してたら忘れてました……

    ――――――――


 『きっと、ルリちゃんだってミナちゃんだって、カグラさんが元気になってほしいと願ってる』


    ――――――――


 その後私たちはザトールに戻った。ガイルさんに聞いたところ、ザトールの街では死人はほとんど出なかったという。これも、ガイルさんやイリアさんが黒化した街の人達を浄化してくれたおかげだろう。私たちが帰ってくると、二人は「お疲れ様、そしてありがとう」と、笑顔でそう言ってくれた。

 街を鎮めるだけでも大変だったはずなのに……

 そして、酒場にイリアさんも連れて行き、今後の事について話をした。私たちのこと、カグラさんのことなど、また、あの山で何があったのかなどを。

 これといって驚く様子も見せなかった。これが俗にいう慣れっこだ。


「集落の人達は残念だったけれど、もう終わったことは何をしようが無い。で、これから集落をまた再生させようとしているわけね」

「そうです」


 イリアさんは腕を組み、自身ありげに微笑んだ。


「ふふーん、任せなさい! 私にできない事なんてたぶんないわ!」


 ……確証が薄い。

 ともあれ、この事をイリアさんに手伝ってもらえるのはありがたい。この人占い師やってるだけあって皆からの人気度はあるだろうから心配することはないだろう。


「早速私は行ってくるわ!」


 そう言って、イリアさんは外に出て行ってしまった。

 サンソン集落にどれほど人口がいたかは分からないが、カグラさんが納得できるくらいの人は欲しい。そうじゃないと、報われないだろうし。


「「そうだな……俺は酒場で呼びかけをしてみるよ」


 ガイルさんは軽く溜息を吐いて、ポーチから大きな白い、何かを紙を取り出し文字を書き始めた。

 えー、何々……『サンソン集落の住人募集』……?


「雑過ぎませんか?」


 私がそう言うと、ガイルさんは頭を掻いてまた新たな紙を取り出して書き始めた。


「あっ、新しいアルバイトも募集しとくか。どうせお前らいなくなるしな」


 違う、そうじゃない。


「サンソン集落の魅力とかですよ。昔行った事があるんですよね?」

「いやぁ、行ったことあるけどよ。あの時は活気があったからなぁ。魅力があるとすれば、そうだな……疲れが良くとれる美容にも効く温泉があることくらいしかな……」

「それでよくないですか?」

「あ、そうだな。確かにこれでいいかもな」


 ガイルさんはペンで、『疲れが取れる温泉がある集落、サンソン集落に来て、是非疲れをいやしてみませんか?』という風に書いた。

 あれ? これってただの宣伝じゃない? いや宣伝でもいいのかな。それでサンソン集落を気に入ってくれる人がいて、住んでくれる気になる人が出ればいいわけだし。


「それじゃあ、私たちはこんな状況ですが街の人を見に行ってきます。あと、この話の事も言ってきますね」


 そうして、私達は酒場を出て、まずは街の中央の広場に行った。街の店はどこも開いておらず、中央広場に皆で固まっているようだった。


「この状況で行くのか?」


 お兄ちゃんが腰を当てながrそう言った。


「この状況だからこそでしょ!」


 お兄ちゃんもメルちゃんもカグラさんも目を点にして首を傾げた。


「皆さん! 聞いてください!」


 私が広場で大声で叫ぶと、街の人は皆こっちを向いた。


「この大陸を脅かす元凶はもう封印されました。これで、この街は危険になることはないし、治安が乱れることも殆どないでしょう。でも、一つだけ……」


 私はそこからの言葉を詰まらせてしまった。自分で言おうと思ったはずなのに、何故か私の口がそうさせてくれない。これを言ったらカグラさんがどう思うか……それが気がかりで、私が言いたい事を云えなかった。


「なくなりかけた村があります。それは、今回の件で、恐らく最大の被害が出た村です。今はもう……それに、今回の件の発生元の近くにある村です。でも、その村には今でも魅力があります。疲労回復効果のある温泉、村の範囲、この街にはない自然な長閑さ。よそ者の私にでも分かるくらい魅力はあります。こんな状況で言うことではないとは分かってます。でも私は、その村をどうにかしてあげたいんです。どうにか……」


 街の人達はざわついている。具体的な事を何一つ言っていない私に不信感を覚えているのかもしれない。根拠の一つや二つくらい用意してくればよかったかもしれない。


『私たちが行きます!』


 その中で、声を挙げてくれた女性と男性がいた。あの人たちは確か、カフェを流行らしてくれたカップル……?

 二人は私たちに近づいてきて、女性が恥ずかしそうに頬を右手で掻き、話をし始めた。


「お恥ずかしい話、実は私、まだ自立ができてないんです。それで彼と相談してて、自立をするなら、新しい場所、環境でしようって、その方が、逃げるという選択肢はなくなるからって、話し合ったんです。それで今、その村に行くことができる機会ができた。だから、私たちはその村に行きたいです」


 予想外の人だったため、言葉が出なかった。


「あ、ありがとうございます」


 女性は両手を後ろで合わせ、私の返答に笑顔で答えてくれた。

 そのあと、他にも手を挙げてくれた人が何人も何人もいた。そして、計十八人が集まった。皆自立をしたかった人たちらしい。それも、男女ともに九人という素晴らしい割合だ。


「皆さんありがとうございます」


 カグラさんは止まらない涙を後ろを向きながら袖で拭いていた。これで良い事をしたと、胸を張って言えるだろう。


▽▲▽


…………誰に? 一体誰に胸を張って言えばいいというのだろう。私は誰に……


▼△▼


「――? なつ……?」


 メルちゃんの声が聞こえた。


「どうしたの? 固まっちゃって。手を目の前で振っても反応しないし」


 私は正気に戻り、さっきまで中央広場にいた人たちの姿がなくなったことに気が付いた。


「皆は何処に?」


 メルちゃんは私が話しかけると笑みを浮かべた。


「村に来る人の名簿を作るって言って、何処かに行っちゃったよ。あと、街の人はそれぞれ自分の家に戻ったみたいだよ。なつめがボーっとしてたから、私はここにいるだけ」

「そっか……」


 私が何かを考えてる途中で皆動いていたんだ。まったく、何を考えていたんだか……私が『私』に少し戻ってから、調子が狂ったみたい。

 それはさておき、私は次に何をすればいいのかな。


次話もよろしくお願いいたします!

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