変わり果てたララポット
「おい!お前!なんてことしてくれるんだ!死んでたかもしれないんだぞ!」
暁さんの手を握り返そうとしたが、信二がその手を払いのけ、胸ぐらをつかむ
「おっと。これは血気盛んなことだ。」
やれやれという感じに、暁さんは首を振った。
「何言ってるんだ。お前もわかってんだろ?この世界は弱肉強食。弱きものは文字通り食べられるってな。」
「くっ。」
信二はくっと唇を噛む。言い返されないのだ。それが真実だから。ついでにいうとこの世界では、正義の味方こそ先にゾンビになる。教室でもそうだった。友達を助けようと向かっていったものから死んだのだ。
「暁さん…。椿玲奈といいます。私達は塚山大学の学生です。今まで隠れて過ごしていました。でも、武器がなくて、ここまできました。もし良かったらここで生活したいと思ってます。」
私は頭を下げる。何故かわからないが、わかったのだ。この人は強者だと。ジャージ姿にボサボサの頭。パンデミックが起こる前までは、絶対に関わろうとは思わなかった人物に頭を下げる。生き残らなくちゃいけないから。信二とともに。
「そっちは?」
「小倉信二だ。信二でいい。」
ぶっきらぼうにそういうと信二はそっぽを向く。嫌い…なのかな?
「玲奈に信二か。改めてララポット対策本部隊長、暁源次郎だ。」
「本部とか隊長って?」
「 別にそんなに重要なもんじゃねーよ。ただのリーダーさ。」
暁さんはふっと肩を竦めてわらう。
「なあ、そろそろ教えてもらおうか。音楽なんかかけてゾンビをおびき寄せた理由を!」
「まあまあ、そうあせんなって。ちゃんと話してやるよ。ここを案内しながら…な。」
「物がいっぱい倒れてる…。」
キレイだなと思っていた植木鉢や、くつろぐためのソファーはゆがみ、ファッションブランドのお店はぐちゃぐちゃ。まるで、台風でも通ったかのようにひどい有様だった。
「ここには、24人の人間がいる。しかも、女子供ばっかだ。その中で、男性は俺を含めて6人。」
「6人?えらく少ないな。」
「パンデミック発生当時はまだいたんだ。そうだな、15名くらいか?平日の昼間だったから、少なかったが、従業員はいたしな。」
「出ていったか…。」
「そうだ、っと着いた。お前らはここで寝てくれ。開放的で悪いが。」
そこは有名なファッション店の中。そこに、敷布団が二つ置いてある。掃除はしたのだろう。床はキレイだが、ここで寝るとなるとかなり抵抗がある。でも…
「ありがとうございます。」
「玲奈、嫌だろうが、布団があるだけマシだと思おう。それより続きだ。」
「あ、そうだった。続きだったな。そうだなー。まずは俺がここに来た時から話した方がいいだろう。」
そう言って、暁さんは話し出した。あの日、9/13日にここで、何が起こったのかを。
少し短かったですね。
明日の7時には続き更新します!