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管理都市の魔女  作者: 白葉 四季香
【第1章】管理都市の管理者
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 エリアの書き換えが終わり、練習場に入るとそこには森が広がっていた。

 100平方メートル、高さ15メートルあるはずの大きい立方体の箱のような形状のはずだが、その広さすら感じられないくらいに草花が生い茂っている。


 五希は配置についたようでその姿はもうなく、そこには気配すらも残っていなかった。

 五希の機械魔術は銃を使ったものらしいが詳しくはよく知らない。どんな魔術か探りを入れるも毎回「私に戦って勝ったら教えてあげる」と返されてしまう。しかも、五希に戦ったことがある人からの情報としては魔術は使っていないように見えると決まって答えるのだ。

 精神を操るような無形のもの操る魔術なのだろうか。でもそんな力は魔導でなければ不可能だろうし、そんなものが開発されたなど聞いたことは無かった。また、もし開発されていたとしても未発表の最新鋭の機械魔術を使うなど開発に関わった人くらいしか使うことはできないだろう。

 よって、五希の情報としては見るには難しい魔術を使う銃使(ガンナー)いであるということだけだ。

 ただ、普通の銃使いであるなら接近戦に持ち込めばいいものだが、五希は人と比べて卓越する運動能力を持っているため、格闘技を軽くしか習っていなかった千鳥にとっては勝てるかは接近戦では不安だった。


 千鳥は五希の攻略法をわからないまま適当に近くの木に登り、待機することにした。

 中央に釣り下ろされているパネルには10の数字が表示され、少しずつカウントダウンを始めていた。

「……残り5秒。まずは隠れている五希をみつけないとね。 …………2、1」

 0の数字と同時に顔の真横を銃弾がすり抜け、真横にあったはずの枝を吹き飛ばして行った。

 相変わらず五希は周りには見当たらないものの千鳥の位置は五希からは見えているようだった。

 地上戦が得意であった千鳥はすかさず草むらに降り、木に隠れるように背を当てる。


 水の機械魔術使いである五希がなぜ不利な森のエリアを得意と言ったのか不思議であったが、今ならわかる。

 それは魔術としてではなく、銃使いとして得意ということだったのだ。

「頭のいい千鳥ならもうこのエリアの意味わかったよね? じゃあ私に勝たせてもらうよッ!! 」

 どこからか響く五希の声を辿るように周囲を見渡すが、やはり気配すら感じない。


 途端レーザーのような線が幾重になって千鳥を取り囲んでいた。それが五希の銃の特徴だ。

 その銃は銃と言っても銃口からは水鉄砲のようにレーザー状のものを発射する。もう、水鉄砲のようにというより黒光りした本物の銃の形をした水鉄砲と言ったほうが的確のようにも感じる。

 右手に意識を集中しレーザーの発射する方向に手を向ける。

 右手だけにつけた手袋は熱を発する。

「……業火ッ!!」

 途端爆音とともに周囲に白煙があがり、消しきれなかったレーザーを避けながらレーザーの発射点へと急加速。

 五希は近づく千鳥に気づいた頃にはもう遅く、両手の銃をクロスして向かってきた千鳥の拳から防御した。

「あとちょっと遊べると思ったのにもう殴り合いなのか」

「殴るのは一方的に私だけじゃないかしら? 五希が銃を持つなら素手の私には不利じゃないかしら」

 手とは思えないほどにミシミシと軋む。

 五希は跳ねるように下がり、枝の上へ乗り、銃の中のマガジンをテンポよく取り替え、構え直す。

「もし千鳥が動けばこの弾で撃ち抜く! 真面目に魔術を使うなら距離を取ってやり直しをしてあげてもいいんだよ?」

「五希も結構私には甘いわね。 だから勝てないのよ?」

「勝敗はまだ決まってない。 私は本気で戦わないやつに本気で戦うのは馬鹿馬鹿しく思っただけ」

 千鳥は小馬鹿にするように笑うがその言葉に五希はむっとした。

 恐らく五希は本気なのだろう。

「初弾は面白い狙いだったと思うわよ。 でも正直避けきれるものの範囲ってとこね。 今だって五希が勝敗を握っているとでも思っているようだけど、この距離だろうと避け切れる自信はあるもの。だってそうじゃない? 避ける自信が無いやつがこんな接近するなんてただの馬鹿よ」

 そんなことくらい五希でも分かりきっているのだろう。

 それを承知で今、私の目の前に挑んでいる。

 五希は私の戦い方は恐らく誰よりも知っている。それは友としてでもあるがいつかの敵として誰よりも千鳥の戦いを見てきているからだ。

「まあ、そんなのはどうでもいいわ。 こんな殴り合い続くのなんて面倒だから五希にならアイツで戦ってあげる」

 千鳥は右手に込めて祈る。


ーーーー不死の術、開放。


 途端、木々の緑が爆炎とともに消えていった。

「私の魔術は知ってるわよね? 不死鳥を操る魔術であり、その力を以て全てを燃やし尽くすもの」

 五希は驚きと同時に先程よりも楽しんでいるように口角を上げる。

「そりゃあ親友であるのだから知ってるとも。 火の機械魔術の中でも上位のランクに入る力の幻獣種の類を操る力。 でも銃の腕前はプロの私に勝てると思わないで。 そんな鳥なんて私の弾丸で狩ってやるんだから!!」

「随分強気な発言だけどどこまで持つのかしら? 練習試合でコイツ出すのは久々なんだから楽しませてよね!」

 不死鳥は甲高い声を上げ、五希に向かっていく。

 灼熱を切り裂くような銃弾を何発も打つも不死鳥には傷すらつかない。


 五希は水の機械魔術を使っている。武器は双銃。だが、使うのは基本は片方だけ。

 五希も千鳥と同じように試合のとき以外は本気を出さないのだ。

 その水のレーザーは見るだけでその瞬足はよくわかる。恐らく触れたら刃物とと同じくらいだろう。


 私が狩ること不可能の"獣を操る幻獣使い"であるのなら、五希は百発百中で"獣を狩る双銃使い"ということになる。


 残り時間は5分を切った。

 魔術でここまでの力を出すのは久々なものだ。

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