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管理都市の魔女  作者: 白葉 四季香
【第1章】管理都市の管理者
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騒音少女


 音の無い教室の中、外から聞こえる息のそろった掛け声が一定のリズムで微かに教室を満たす。

 私は学校へ向かう途中に思いついた朝の学校での暇つぶしをしている最中(さなか)だ。それは、家では桜時に邪魔をされてすることのない二度寝をすることである。

 校庭から聞こえるリズムは一眠りするには十分な音になり快適に感じる。

 千鳥はこれからは毎日続けても嫌にはなることはないだろう。


 だが、そのメロディーは数分もみたないうちに壊され、それと同時に夢の中も壊すような騒音にも似た声が教室を満たし尽くしたのだ。

「千鳥ぃー、聞こえてる? ちぃーどぉーりぃーさぁーん!!」

 声を聞くなりキーンと耳鳴りが響き、快眠が壊され渋々顔を上げる。すると、そこには騒音の正体である猫耳の髪留めを付けたツインテールの少女の姿があった。

 その騒音少女"五希(いつき)"は「起きてたなら返事してよぉ」などとグチグチ言いながら隣の席に座った。

「何で朝早くから私のとこに来るのよ? 私からしてみればとんだ迷惑ってもんなの分かってるわよね?」

「教室の出入りは自由だから来てもいいんじゃない。先生も怒らないしさ」

 五希の言い分は正しいものの先生に対してしか考えていないようだった。

 ため息をつきつつ、五希にもわかるように話を付け加えた。

「別に来てもいいけどせめて静かにしてもらえないかしら? 私は見ての通り寝ているんだからそれくらい考えられるでしょ?」

 それで千鳥の思ったことを理解したようだったが、納得いかないようだった。

「早起きはいいことだと思うんだけどなぁ。昔から人を起こすのは日課のようなものだったから、つい慣れで寝てる人は起こしたくなっちゃうんだよ!」

 五希の言葉から要するにこれからも毎朝寝ていたら容赦なく起こしに来るということなのだろう。なんて迷惑なことこの子は思いつくのだろう…….。

 考えてみればどちらにもうるさい人がいるのなら社で寝た方が良いのかと思ったが、そこにも同じようなヤツがいることを思い出し八方塞がりになってしまっていた。

「その日課は早々にやめたほうがいいわね。昔に起こされていた人も大層嫌がってたと思うのだけど?」

 五希は千鳥の指摘に「あははぁ」と受け流していた。

 どうやら本当に昔起こされていた人も嫌がっていたようだ。その子の代わりが私になるのは今すぐにでも断りたいが、そんなもの五希は聞く耳すら持たないだろう。


「そんなに暇なら部活にでも入ればいいんじゃない?朝練で声出すなら誰も文句は言わないでしょうしね?」

 千鳥の言葉に不満に溢れた顔をしていた。

「えぇー、嫌に決まってんじゃん! だって朝練ある部活って運動部しかないんだよ。 体動かすのは好きだけど疲れるのは嫌だからね!しかも朝練なんてやったら、その日一日中疲れが溜まって勉強なんてできやしないよ! こう言う千鳥だって部活入らないの? 魔術戦の順位だって毎回ベスト3に入ってるくらいなんだから部活の勧誘の一つや二つくらいあるでしょ?」

 五希の言う魔術戦というのは月一度に行われる学校の生徒で行われる一対一、二対二、団体戦のそれぞれで機械魔術をぶつけ合う"機械魔術実技試験"のことだ。

 管理者として戦いに慣れているということや身体(からだ)が魔力を使うのに適しているということもあり、千鳥にとっては機械魔術であろうとこの学校の生徒全員に勝つくらいであれば容易いものだろう。とが、魔導師である千鳥には学年1位は取っても校内1位を取ってしまうと魔導師とバレてしまう危険があるためギリギリで上位を取れる校内2位辺りが限界というものだろう。だがその考えは他の魔導師からしてみれば1位も2位も大差ないのだろう。


「まぁ、確かに部活の誘いは結構あっても全て断っているわよ。 私の時間を無駄にはしたくないもの」

「千鳥らしい理由だな。 でも、くれぐれも部活やってるにはその言い方はしない方がいいな。 部活を無駄な時間なんて言うと嫌われる原因だからね」

 適当に「はいはぁい」と受け流した。


 五希は数分経っても席を立つ様子は見られなかったので、仕方なく雑談をすることにした。

「前から思っていたけど五希のその腕と顔以外の全身の包帯とか右目の眼帯とかって何のためのものなのよ?ずっと付けてるから怪我って訳ではないでしょ?」

「え、これのこと?」

 五希は自分の全身を眺める。

 すぐに答えようとした五希だったが、少し考えながら話し始めた。

「前まではふざけておしゃれだとか言ってたけど、本当は古傷みたいなものなんだよね……」

「……なんか聞かないほうがよかったわね」

 千鳥は申し訳なく思い、謝るように言ったが五希はその逆の反応をしていた。

「古傷みたいなものであって古傷じゃないからね! 体にこんな大きな怪我負ったことないしね」

「なんか自分の思ったことにすごく後悔したわ」

「なんでだよ!?」


 その後は五希のくだらない会話を聞いていると、朝練の終わりを教えるチャイムが鳴った。

「さてと、そろそろ私は戻るとするかな」

「もう明日は来なくていいわよ」

 五希は千鳥の話を聞くのも待たずに手を振りながら教室を出ていった。

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