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管理都市の魔女  作者: 白葉 四季香
【第1章】管理都市の管理者
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ヒトへの願い


 ドアを開けると夏草の匂いが冷たい風に乗せられて森に住んでいるかのように錯覚するくらい気持ちが良かった。

 この初夏のこの頃は早朝が一番生活するには快適な気温だろう。


「ところで、私はそろそろ学校だけどあんたは今日も社の掃除と手入れするの?」

「そりゃ、そうに決まってるでありますよ!自分はこれでも巫女ですからね!!」

 桜時は自慢気に言っているが巫女の仕事を巫女がやるのは当たり前の話しだ。

「あと、あんたの場合はその仕事やりながらの衣装作りやるんだろ?人にあんな昔ながらの衣装を人に着せて何が楽しいんだか……」

「アレは昔ながらと言うな!!立派な対魔道装備であると同時にカッコかわいいコスプレなのです!」

 必死に必要なものとして言いくるめようとするが最後にコスプレと言ってしまえば元も子もない。

 確かに桜時の縫製技術はプロが作る対魔導礼装並のものだろうが、基本使うのは私くらいで売り出せばいいと思うのだが毎回それを提案すると「趣味だからいいんです!」の一点張りだ。

 礼装以外にも私の私服や桜時自身の服、巫女服は全て桜時の技て作られたものだった。

「はいはい、わかったからー。んじゃ、行ってきまーす」

「むぅー……いってらっしゃいです!」

 手を大きく振り続ける桜時の姿を背に高校へ向かうべく長い階段を降りていった。



 桜時は千鳥の保護者であって母でも魔導を教わった師でもない。

 前管理者の母は十年前に魔女狩りで殺されてしまった。そして、その母こそが千鳥の師であり桜時の師でもあった。

 管理者という仕事を継いだのが千鳥であったものの表上は桜時が担当している。表といっても管理者というものは表に立つことは基本的無いため管理者代行の桜時の仕事はこの都市を管理する霊地である社の掃除や千鳥の世話役程度だ。


 なので千鳥と桜時の主従関係は簡単に言ってしまえば主と召使いの関係と等しい。



 今から向かう学校というのは機械魔術師育成のための専門高校である市立機械魔術専門学院(しりつきかいまじゅつせんもんがくいん)である。

 その高校は名前の通り機械魔術を研究し、魔術をモノからモノへ移植するものや魔導師の魔力を数値化しデータに移すもの、そしてそのデータを使いやすいように礼装や武器に加工するものなどの機械魔術をひたすらに発展させるような授業が多々ある。

 それ以外にも魔術をぶつけ合う普通学校の体育代わりの機械魔術実技授業や月一度に行われる全学年で魔術を競い合う実技試験もある。


 でも、もしその中に私のような魔導師が見つかれば周囲の人間や今までそばにいた友達ですら魔術の照準を自分に定め、一瞬にして殺される運命だろう。

 当たり前のことだが千鳥が魔導師、ましてや管理者だと知っている人間は学校の中には誰もいない。


 いくら強い魔導師でも数百人の機械魔術師相手に勝てる気などからっきし無いだろう。

 確かに死と隣り合わせの空間で生きていくには辛いものがある。だが、それは自分が魔導師だと気づかれなければいい話なのだ。

 人間と魔導師の比べ方は一般に魔導を使えるかどうかだ。であるならば、人前で魔導を使わなければいい話なのである。

 そう考えてしまえば人間に隠れながらの生活も容易い。


 機械魔術を覚える者は大半は魔導師に何らかの恨みを持ち、魔女狩りに参加する人間だ。

 そう考える私としてもやはり人間の近く、ましてや機械魔術を習う人の近くで生活するのは危険だろう。

 せめて普通の学校に行った方がいいのだろう。


 そんな危険な場所に行く理由は母を殺した人間でもまだ心のどこかで信じてしまっているからなのだろう。魔導に対しての恨みを持っている人でもいつかは魔導師を認め、同じヒトと見なしてくれるであろうと。


 母の願いは全てのヒトが共存できる平和な世界だった。

 だから私の願いも少し違うが秩序の安定した平和というのが願いだ。

 

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