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管理都市の魔女  作者: 白葉 四季香
【第2章】貧家の令嬢
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訪問者は夜に潜む


「あなた、今なんて言ったのよ? 私が管理者ですって、おかしな冗談はやめてもらえますか」

 ヘンはくすくすと抑えるように笑っている。

「では、言い方を変えましょう。 光の精霊の加護を持ち、ヒトの心を惑わす魔導師。 それはあなたですよね?」

 その真っ黒なスーツに身を包んだその男は魔導管理者としての千鳥を知っていたのだ。

「その問いに答えるのが礼儀なのだろうけど、もしも私が問いの答えを教えたらあなたは死ぬことになるわよ」

「そのことなら、安心して答えていただいて大丈夫ですよ。 あなたには私を殺すことはできない。 何故ならあなたは残念なことに私よりも劣っているのだから」

 ヘンの横顔は勝ち誇っているかのように微笑を浮かべていた。



 何故、ヘンは私が管理者であることを知っているのだろうか。それはすぐに察しがつく。

 例えばある区に住んでいれば誰が管理者なのかはその区に住む魔導師ならばすぐに耳に入る。魔導師同士の裏での噂から漏れ出した情報によるものだ。

 管理者というのは人間だけではなく、魔導師にも姿を隠すことは多くある。だが、どんなに隠そうとしても魔女狩りのような殺しを続けていればどこかから噂が湧いていく。


 そう、答えは単純なものでヘンという男は魔導師であるからというものだ。

 答えは先程まで桜時と話していた予想と真反対なものとなってしまっているがそれが一番信憑性のあるというのが残念ながら現状なのである。


 だが、魔導師だろうと人間だろうとこの都市のルールを破ったのは事実だ。管理者を知っているという時点でルールは知っていたはずなのだから。


「この都市のルールを破ったあなたは残念ながらもう死ぬのよ。 私はこれでも他の管理者と比べてあまいから自分の耳に入らなければ管理者を知らないやつらだと思うようにはしていたのに残念よ」

「ルールか……、そのようなものがまだ残っていたとは。 『一つ、魔導管理者はどのような場合でも親族、弟子、魔導管理者の同士以外には知られてはいけない』というつまらないルールに縛られているとは悲しいものだ」

 相変わらず楽しんでいるかのように口角を上げる。

「でもあなたはそのつまらないルールを破ってしまったのよ。 そこまで一言一句覚えているのならそれ破った者はどうなるかは知っているのよね?」

「ルールを破ったものは処刑される、でしたよね。 でも最初から言っているではありませんか。あなたには私を殺すことができないと」

「そう、じゃあ試してあげるわよっ」

 そう吐き捨てるようにして言うとヘンの腹へと蹴りを入れようと足を勢いよく振る。

 だがその足はくうをかき、ヘンの姿は目の前から消えていた。

「だから言ったではありませんか。 私に敵うほどの力はあなたは持っていないでしょう?」

 背後からの声に振り返ろうとするがいつの間にか刃物らしき光りが視界に入った。気づけば腕も身動きが取れないように掴まれていたのだ。

「あんたの目的は何? ただの召使いって訳じゃないでしょ?」

「五希様に使える普通の召使いですよ。 目的なんてものもありません。 この神社まで来た理由なら私達が住むに値する都市の魔導管理者かを見定めに来ただけですよ」

 両腕を片手で抑えるほどの力を使っているにもかかわらず、声色と顔は平常心そのものだった。

 私達というのは五希のことだろうか。

「今の状態から考えると私が管理者だと不満ということになるのかしら」

「不満ではありませんよ。 私達の条件にはあっていないというだけです。 なのであなたには魔導管理者をやめてもらいます」

「…………なっ!?」

 思わず驚きを隠せなかった。

 こいつは今、軽々しく管理者をやめろと言ったのか。

「あんた何言ってるかわかってるのよね?」

「はい。 あなたがやめて別の人に変わってもらいましょう。そのためには今の魔導管理者には消えてもらいます」

「そんなことさせないわよっ!」

 千鳥は本能的に刃物に自ら首筋を掠らせ、精霊魔導スピリットを発動させる。

 途端ナイフは持ち主であるヘンに反して光線で突き刺すように鋭さを増していく。それに気づいたヘンはその刃先を千鳥に向けて投げた。

 千鳥は避けるように後退るが思ったより早く、すぐに目先へと近づいて来た。

 だが、そのナイフより手前には紙が浮き、その一枚の紙に刺さるこのなく突き立っていた。

「危ないところでしたね」

 横には桜時が立っていた。


「神聖術による結界ですか……。 あなたよりも彼女の方が適している」

「褒めてもらったようですが、なんか嬉しくないてす。 千鳥を侮辱するのに来たのならさっさと帰ってもらえますか」

 ヘンは丁寧にお辞儀をする。

「では、またの機会に伺います」

 そしてヘンは鳥居の外へと消えていった。


「もう来なくていいです! まったくなんなんですか、あの黒い人」

 桜時は石畳を何度も蹴っていた。

「あの人はほんとなんなのかしらね。 でも、さっきは助かったわ、あなたの変な力でも使えるときはあるのね」

「助けてもらってそれはひどくないですかぁ?」

 桜時は頬を膨らませていた。桜時を見てると緊張感から解放され、一気にほっとする。

「それでも一応感謝してるのよ」

 千鳥はそう言うと開きっぱなしの玄関へと向かっていった。

 御三家の会議の前に今の自体を説明しないといけないだろう。


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