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管理都市の魔女  作者: 白葉 四季香
【第2章】貧家の令嬢
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歴史書兼百科事典


「それでさっきから読んでるのは何の本なのよ?」

「あっ、これ? 悪魔辞典みたいな百科事典てきなものかな」

 悪魔が嫌いとかオカルト嫌いとか言いながらも結局のところは五希はそういう未知のもが好きなのだろう。


「そういえば七光(しっこう)悪魔(あくま)って知ってる?」

 ただでさえ悪魔関連の知識が少なかったが、その言葉は一切聞いたことのないもので疑問を持った。

「全く聞いたこと無いわ、有名なものなの?」

 五希は首を横に振りながら答えた。

「全然有名なんかじゃないんだけど、昔に関東周辺にいたらしいんだよ。 しかも''ななひかり''って書いて''しっこう''って読むなんて面白いと思わない?」

「確かに面白い名前ね。どういう悪魔なのよ?」

 五希が持ってきた何語かもわからない本のページをめくりながらそう答えた。

「なんか冷たい反応だなぁ。 まぁ、その悪魔が百年前の災厄をもたらしたって説もあるらしいんだよ!」

 五希はそう自慢げに話す。

「へー、そうなんだ。 悪魔も大変なことしたわねぇ」

 千鳥のどうでもよさそうな反応に五希の得意顔はみるみるうちに曇っていった。

「つまらなそうな反応だなぁ。 その悪魔が今でもいるって噂聞いたのになぁ?」

「噂は噂でしょ? 本当とは限らないじゃない。 見たことしか信じないってのが私の信条なのよ」

「…………まぁ、そうだけど。 じゃあ復刻の御三家はいなかったっていうのか?」

「へ?」

 驚きの言葉に慌てて五希に聞き返す。

「今、復刻の御三家って言ったわよね? そんなのどこで知ったのよ?」

「なんでそんな驚くんだよ」

 五希は何が何なのかさっぱりのようで頷くだけの反応をした。


 この時代の歴史は表側では魔女狩りが始まって以降、復刻の御三家関連の資料は今ではほとんど残っていない。魔女狩りと同時に魔女に救われた世界という位置づけを消すためだった。

 だが魔女狩り以降に生まれたはずの五希がその言葉を当たり前かのように言ったのである。

 魔女狩り以降に生まれた者で知っているのは魔導師が伝承として親から子へと残したものくらいだろう。

 だが、五希は魔導師ではない。管理都市内の知っているヒトなら調査済みであるからだ。


「で、復刻の御三家って言葉はいつ、どこで知ったのよ?」

「いつってずっと前からだけど? この家の本を適当に漁ってたら見つけたんだよ」

 部屋の本は五希が集めたものかと思っていたがそうではないようだった。

「この本ってヘンさんのものって言ってたけど誰が集めたものかはわかる?」

「誰ってヘン自身が集めて保管してるものだよ。 家にある本の大体は内容わかるけど英語の本とか、まず何語なのかもわからない本とか多いから全部ヘンに訳させてけどね」

 じゃあヘンという人物が魔導師の可能性もあるがこの地区には魔導師は住んでいなかったはずだった。

 魔導師でもないヒト達が持っているのは不思議だがヘンという人物はよほどの本の収集家なのだろう。


「まあ、読めないのに読むなんて五希らしいわね」

 笑い混じりに言う千鳥に五希は本を閉じて怒り出す。

「それ、遠まわしの悪口だよね? 私だってハローとハッピーはわかるからね」

「それだけで何の会話ができるのかしら」

 五希は机の本も読まずに戻し初めていた。

「ついでに言っておくけど御三家のことは他では喋らない方がいいわよ」

「なんでだ?」

 五希はかたす手を止めずに聞き返す。

「世間ではそんなものはなかったことになってるわ。 言ったところで魔女の味方だと思われて牢獄行きとかもありえるかもしれないわよ」

「そ、それは怖いな……」

 五希は身震いしていた。

「じゃあ、なんで千鳥は知ってるんだよ?」

「小さい頃に噂で聞いたのよ」

 千鳥は適当に考えついた理由でごまかし、母からの伝承については言わなかった。


「そういえばさっき家にある本の内容は大体わかるって言ってたわよね? それを見込んで五希の知ってる御三家のこと教えて貰えないかしら」

 五希は嫌そうにこちらを見る。

「さっきその話はするなって注意しといて自分で話をだすかよ」

「別に元から私は知ってるんだからいいじゃない。 今度五希とまた戦ってあげるからどう?」

 五希は悩んでいる顔が楽しそうに見えた。

「じゃあ教えてあげるよ。 まぁそんな条件なくても千鳥だったら教えてもいいんだけどな」

 今朝、御三家が生きていると書かれた手紙を思い出す。

 もし本当に倒さなければならないのなら五希の話は貴重な資料となるだろう。

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