一枚のメモ
校内の涼しさを忘れさせるくらいの熱風が外に一歩足を踏み出しただけておそう。
それと同時に皮膚が溶けているかのように汗が吹き出す。
昼休みに教室に戻ると机の上にメモが置かれていた。
それには『放課後、校門の前で待っててね!』と書かれたものだった。
そのメモの文字からはいつものハイテンションが伝わってきた。
名前らしき文字は一文字も無かったが、少しバランスの悪いくせ字から五希のものだとわかった。それに、何せ朝に待ち合わせ場所以外の五希の家に行くことは約束をしていたからだ。
そして、放課後。
メモに書かれてあったように校門の前で五希を待つ。
この大気は初夏にしても暑すぎるほどの気温ではないだろうか。
背後からは「やっほー」と言いながら暑さなんてものは関係なしかのように走ってくる五希の姿があった。
「待たせたね。 それじゃ行こっか」
「もう溶けそうだわ。 早く案内して貰えるかしら」
五希は楽しそうに千鳥の手を取って引っ張るように歩いていった。
学校から歩いて数分で目の前に大きな家があらわれた。
いつも住んでいる神社なんて比べものにならないくらいの大きさで警備員などはいないが屋上には狙撃の銃が壁の隙間からちらつかせる。それだけで十分に人を近づかせない雰囲気を漂わせている建物だった。
「どうぞ、入って!」
そういいながら五希は大きな門の近くのカメラに目を向けると門が開いていく。
千鳥は呆気にとられ、何が何なのかわからないまま五希家へと入っていった。
家に入るドアも門と同じようにカメラを見ると自動的に鍵が開く音がした。
ドアを開けきるとそこには一人の男が立っていた。
「お帰りなさいませ、五希様。 そして千鳥様、ここまで足を運んでいただきありがとうございます」
丁寧に会釈する態度からしてこの家の使用人のようだ。
まるで執事のような風貌だ。