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管理都市の魔女  作者: 白葉 四季香
【第2章】貧家の令嬢
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黒い手紙


 一人でずっと喋り続ける桜時は千鳥が放っておいても続く。

 まるで食卓を囲むのは二人だけではないかのように感じてしまう騒がしさだ。

 鵺のいる部屋に行った後、いつもより早い朝食にを取り始めた。

「それでぬえぬえは大丈夫だったのかな?」

 変なニックネームを付出した桜都はスルーして普通に答える。

「並木 鵺は眠っていたわ。 私は平常通り学校行くから今日はずっと桜時が見ときなさい」

「はいはーいっ!」

 桜都はそう言うと何故か表情が曇っていった。

「ずっと思ってたんだけど千鳥はなんでそこまで学校に行くのですか? しかも機械魔術師の育成するような学校に。 昨日なんて管理者会議を断ってまで行くなんて、そんなに必要があるものなんですか?」

 機械魔術を覚える学校ということは魔導師を嫌い、倒すためという理由の人が大半だろう。

 ならば魔導師であるのなら近づきたくはない場所ということになる。

 だが、桜都や普通の魔導師というのはこのままではいけないということがわかっていないのだ。

 魔導師が生きるにはどうしても人間と関わる必要がある。隠れている生きるだけでは魔導師はいつまで経っても過去の汚点は消す事はできない。

「学校っていうのはそんなに危険ではないわよ。 しかも私にだけ危険って言っているけど紫雨だっているのよ? いざといえばどうにかなるわよ」

 桜都は変わらず不安の表情を浮かべる。

「まぁ、学校行く理由は楽しいからとか人間が作った機械魔術が知りたいとかが理由で、そんな顔しても学校は辞めないし会議になんて行く気はないわ。 暇なときに行く程度でいいのよ、あんな低脳ばかりの管理者の集会なんて」

「一応重要な会議のはずですよ、そんなんで行かないんですか。 紫雨様だって学校を途中で抜けて行くくらいじゃないですかっ」

 そういえばと思い出すと昼休みはいつもいる食堂に紫雨はいなかった。

 そのときにはもう学校を出ていたのだろう。

「今更私が行ったところで会議に何故来ないとか最年少のくせに生意気だとかぐちぐち言い出して会議になんてなりはしないわ。 しかも会議の度に手紙貰っているからそれだけで充分よ」

 桜時は納得いかないようだったが一旦話に区切りを付けた。


「ところでその手紙というのは読んだんですか」

「読んだ、それで捨てたわ。 普通にいつもと同じように会議に来いってことから始まって最後にも同じ言葉で閉じるってものよ」

「それで内容はなんだったんですか?」

 もういつもの桜時に戻っているようだった。桜時もあれ以上は話を続けても意味がないと思ったのだろう。

「内容なんてものは昨日紫雨が言ってた鵺のことよ」

「他には?」

 千鳥は「そういえば……」と思い出すようにその内容を話し出した。

「あともう一つあったんだけどよく意味がわかんなくてね。 なんか''復刻ふっこく御三家ごさんけ''がここら辺に紛れてるから気をつけろだとかなんとか」

「復刻の御三家ですか! そんな者達がまだ生きていたのですか!?」

「私だって驚きよ、普通に考えたらとっくに全員死んでいるはずなんだから。 でもそんなに凄い魔導師となると寿命すらも操れるのかしら」

 少し不思議な話だが現人神あらひとがみとも言われた魔導の御三家が生きていたのだ。

 興奮気味にもなる。何故なら寿命が人間よりも短いはずの魔導師が100年以上も生きていたのだから。


 およそ120年前の黒い影から生き残った魔導師は数十人いた。そのときは大半が世界の終わったと絶望する人が大半だったがその中で魔導に優れ、希望を捨てなかった者が三人いたと言われている。

 その三人はリーダーのように前に立ち、復刻をもたらし後に復刻の御三家と呼ばれた。

 復刻の御三家はヒトを作り出す力、時を作り出す力、在り方を作り出す力を持つ者達と言われていた。


 今のこの世界があるのはその御三家がいたからと言っても過言ではないだろう。

 でもそんな昔の英雄であろうものが現在も生きているのだろうか。

「その話が嘘か本当か、知るには本当に現れてみないとわからないってことよ」

「会ってみたいものですね! 昔の話とかもしてみたいですね!!」

 黒の影が現れる前の文化が好きな桜時にとってはその知らせは良いことだったのだろう。

 だが、あの手紙には最後に''気をつけろ''と書いてあったのだ。それはどういう事を意味するのだろうか。

 まあ、何はともあれ実際に現れてみないと分からないということだろう。


 千鳥は茶碗を片すと荷物を持って学校へ向かうことにした。

「あの少年は待たなくていいのかな?」

 と遠くで桜都は言っていたがそのまま戸を開けて外に出ていった。


「別にあいつとは友達ですらないんだから」

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