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管理都市の魔女  作者: 白葉 四季香
【第1章】管理都市の管理者
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管理者と弟子の神聖術


「そういえば大通まで来たけど鵺って子はどこに住んでいるのかね?」

 先頭を突っ走っていた桜時はふと止まり、振り返った。

 神社を出た後は適当に家の屋根やら低いビルの屋上やらを飛び移りながら今は人気(ひとけ)の多い大通りに出ていた。

「そんなこと言われたって私にもわからないわよ。 適当にいつもの廃墟に向かえばいいわ」

「でも、それでは魔女狩りなんてできないのではないのです? 鵺という少女がどこにいるかもわからないのですよ?」

 戸惑う紫雨に、桜時は自分のことのように自慢げに語り出した。

「大丈夫ですよ、紫雨様! 千鳥の能力を忘れたのですか」

 そこで紫雨はハッとして思い出したがそれでも不安そうだった。

「でもそんなもので本当に来るのです?」

「なめてもらっては困るわよ。 私の魔導は簡単に言ってしまえば"ヒトを自由に動かせる力"。 しかも神聖術を使えばそのヒトがどこにいるのかが特定できる。 私からしてみれば魔導師の1人くらいこの場所に連れてくることなんて造作もないわ」

 私はそう言うと今いる廃墟の屋根から飛び下りた。


 そこは魔女狩りのときによく使っている駅の廃墟だ。大通りから近いわりに基本的、日中ですら人が滅多に来ないため、魔導を使うならここが最適だろう。

 目を閉じ、地面に手を当てる。

 そして数時間前に見た並木 鵺という少女を思い出し、1区全域を頭でイメージし、鵺の今いる場所を光の速さで探していく。だがその場合はイメージというより千鳥の意識だけで実際に見ているような奇妙なものだ。

 その力は魔導のものではなく管理者とその弟子にのみ使える神聖術によるものである。

 神聖術というのは何かを消費し何かを作り出す魔法という概念は魔導と変わらないが、神聖術は神の力を使って起こす奇跡だと言われている。

 だが、固有魔導や精霊魔導とは違ってマナとしているものの現実味が無さすぎるため、私を含めた多くの魔導師は神聖術と呼びながらも大気中の魔力の粒子を使っていると考えている。

 この力を使えば管理している区内であれば建物の中で隠れていようと発見できる。


「見つけたわよ」

 恐らく自分の家にでもいるようだった。見つけたのは小さなアパートの中だ。

「やっぱり千鳥の神聖術は使い安くていいなぁ。 わたしのなんて使用期限有りのお札、しかも手作業で紙切って文字書くっていう大変さ! さらには、お札を使うのが能力じゃなくてお札を作るのが能力だから作ったら魔導師であれば誰でも使えてしまうっていうね……」

「でも、私としては便利に使わせてもらっているわよ」

 励ましの言葉を添えても尚、1人で落ち込んでいる桜時は放置した。


 再び地面に手を当て、魔導を開放する。

 目に見えた鵺に今私達のいる場所に来るように脳内にすり込む。

 すると鵺がアパートを出ていく様子が見えた。

「今家を出たところだわ。あと五分もすればここまで来るわ」

「オッケー。 じゃあ私はどこにいればいいかなぁ」

 魔導戦を好む桜都は落ち込みからすぐに立ち直ると楽しそうに周りをキョロキョロ見渡す。

「桜時は今日必要ないかもね。 あんたの精霊魔導(スピリット)は土でしょ? こんなとこでまかれたらいかにも魔導師が戦ってたのがバレバレじゃない」

 桜時のテンションは一気に下がっていくのがわかる。

 その様子を紫雨は不思議そうに見ていた。

「桜時が精霊魔導(スピリット)を使えないのなら、固有魔導(オリジナル)を使えばいいのではないのです?」

「残念ながら固有魔導(オリジナル)は訳あって禁止中なんだよね。 一応、前管理者の弟子だったから神聖術は使えるんだけど……」

 桜都はそこで言いよどむ。それを付け足すように千鳥が解説を始めた。

「桜都の固有魔導(オリジナル)は周りに多大の迷惑を撒き散らす能力だから使えない。 神聖術はお札を作るっていう戦闘向きでは無いからね。 唯一戦闘向きである精霊魔導(スピリット)もここでは使えない。 となると、意味がないのよ」

 千鳥の言葉は音が出るほどグサグサと桜時に刺さっていく。

 紫雨はふむふむと真面目に聞き込み、桜時はまた表情が澱んでいく。本当に桜時は表情が変わりやすくて面白い。

「どうせ私一人でも倒せる敵よ。 桜時は紫雨と一緒に見物してなさい」

 桜時は紫雨と共に悲しげに先程いた近くの屋根へと戻った。



 桜時を目で見送り、前を見ると鵺の姿があった。

「あら、早かったわね。 放課後の延長戦に招待してあげたのよ」

 鵺は驚く様子もせずにフラフラと立っている。

「管理者様が此方をここまで連れてきたのですか? やはり殺す気なのですね」

 鵺は放課後のように逃げる気がないようだった。万が一に備えて桜時のお札を数枚使い、防音のためと逃がさないためこ結界を張っていたが防音のためにしか使わなくて済むだろう。

「死ぬ決心がついたのかしら。 じゃあ優しく殺してあげるわッ」

 心臓を狙う一刺しを猛進の速さで鵺を目掛けて千鳥は走っていった。


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