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管理都市の魔女  作者: 白葉 四季香
【第1章】管理都市の管理者
13/30

対面


 4時間目の機械魔術実技授業が終わると午前中の授業は全て終わりとなり、すぐに昼休みとなった。


 千鳥は食堂で適当にパンを買い、食事を済ませた。

 ちょうど食堂を出るとき、何故か出入口に人がごった返していた。どこからともなく別の場所から出れば良かったという後悔が浮かんだ。

 何事かと思い、周囲が集まる原因となっているであろう壁の張り紙を見た。

 そこには先月の機械魔術実技試験の順位が張り出されていた。

 この場から身動きが取りにくいということもあり、ゆっくりと出口に進むついでに五希の順位を探す。

 今回の1位は毎度の通り三年の還田(かんだ) 半都(なかつ)だ。

 五希の今回の順位は14位だった。確か今までの最高順位だろう。

「トップの五希ですら14位か。 全校生徒およそ三千人からにしてはトップだけど中々トップ10には入らないものね」

「随分失礼なこと言うものだな。 また校内2位だったからって油断してたら私が追い抜いちゃうんだからね!」

 この混雑の中に声の主を探るように周りを見渡すと集団が開ける場所から手が差し出されていることに気づき、その手を握りしめた。すると引っ張られるようにしてその集団から抜けることができた。

 声の主であった五希は今から昼食をとろうとしていたようで入口の騒ぎにため息をついた。


「そういえば、さっきはありがとな。 一応自分のクラス同士のことだから私がケリをつけた方が良かったと思っていたけど私はばかだからあのやり方すらもわからなかったんだよ……」

 五希は数十分前の転校生をいじめるかのような魔術戦のことを言っているのだろう。

「別にいいわ、言いに行ったのは私であるけど止めたのはその監視役の先生だもの。 私がしたことといえば最後の放送くらいでそこまで感謝される筋はないわ。でも、もし試験のときだったらあんなあまいことはできないわ、五希からもあの子にそのことを言っておきなさいよ」

 五希はこくりと首を縦に動かすとそうそう、と言って話を一旦切り上げる。


「そういえばなんで千鳥は毎回いいことするときは嘘みたいなことつくんだ?」

「嘘? 私はそんなことしたかしら?」

 何のことを言っているのかさっぱりわからず、思わず五希に聞き返した。

「だってさ、さっきの試合だって。 止める気もしないような態度とってた割に真面目に止めに行ってくれたじゃないか」

 「あぁ、それ……」と思い出しながら話し始める。

「実際、五希があの部屋から出ていったこときには止めるつもりはなかったのよ? あの子の魔術も気になっていたからね。 私はそれ以上続けても何も進展が無いと感じたとき、そのままだとあの子が試験のときにまた同じことをやる可能性があると思ったから試合の中止に頼みにいったのよ」

 その言葉を聞いて五希は何とも言えないような表情をした。

「ちょっと千鳥のことが私にはわからなくなってきたような気がするよ。 あの試合のときは意外と嫌なやつだと思ってたけどその次に助けていいやつって思い、結局最後は微妙なとこだ」

 千鳥自身は自分の意思や行動は間違っていると思ってはいない。

 しかし周りが間違っていると思えば間違えということになるのだろうか。

 自分の考えは変えることはないようにはしていたがそこまで言われると悩んでしまう。

「でもその光景を見てて未だに悩んでいることがあるの。 何故あの子はあんなに全身から血が流していたというのに静止できていたのかということよ」

 五希もそれには疑問のようでその子に聞いてみると言い、別のドアから食堂へと向かった。

 千鳥もクラスへ戻るべく教室へと足を進めようとしたが、その大群の後方に五希と今まさに噂をしていた少女がいたのだ。



「あの、君? ちょっと話がしたいんだけど今大丈夫?」

 その名も知らない少女に話しかけるものの、その少女は吸い込まれるような漆黒の瞳で見つめるもだけで口を開く事はなかった。

 いつか、五希は喋らないクールな子と言っていたがそのとおりの雰囲気である。

 その少女の表情からは数十分前のあの血だらけの光景は忘れているかのように静止するばかりだ。その身体(からだ)も痛みが感じられないほど綺麗に、華奢な身体へと戻っていた。

 千鳥はあの試合で何の防御も無しに血だらけで立っているというのは魔術でなければ魔導による痛覚麻痺か何かだと考えた。

 もしそれがあっているのならその少女は魔導師(まじょ)ということになる。

「今日の放課後に屋上に来なさい。 魔術の使い方……魔導のことも教えてあげる」


 千鳥は呟くようにすれ違いざまに彼女の耳元でそう囁いた。

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