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管理都市の魔女  作者: 白葉 四季香
【第1章】管理都市の管理者
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一戦を終えて


 一戦が終わり準備室に戻ると戦う前まで肌寒く感じていた冷房が丁度いい温度に感じられた。


 五希はまだ戻って来ていないようだ。

「まだ動けない状態なのかしら。 そこまで強いパンチではなかったと思うけど」

 千鳥は1人クスクスと笑う。

 私としては魔術戦でこんなに楽しめたのは久々で大満足というところだ。

 だが魔術的には惜しみなく使い切った感じはなく、最後が格闘技であったため戦闘術で勝ったような気がして少し心残りもあった。


 部屋の壁に付けられたモニターを見ると違う練習場で戦っている生徒達の姿があった。

 丁度制服に着替え終えたとき両開きのガラス扉が開いた。

「あら? もう起き上がれるの? 五希の頑丈さはさすがね! …………殴りがいがあって」

「ちょっと待てェ! 頑丈のこというまでは許すとして、最後の『殴りがい』ってのはなんだッ!」

 思っていた通りに突っ込まれるとは、面白いものだ。

「こんなに元気そうならもう大丈夫ね」

「何がよ!?」


「まあ、それはそれとして。 久しぶりに楽しめたわ。 本気出していいかもって思うくらいには」

 五希はその言葉を聞くなりため息をついた。

「結構いいとこまでいったと思ってたのにまだ千鳥が本気を出してくれないってのはちょっと不服だが、私も楽しかった!」

 五希は笑顔で手を前に出す。千鳥はその手を軽く握った。


「それで聞きたいことがいくつかあるのだけど、今日の試合で五希の銃は本当に水しか入ってないの? それと私は双銃だけだと思っていたのだけど何丁の銃を持っていたのかしら?」

 着替えようとロッカーに向かおうとしていた五希は後からでもわかるくらいギクリとしていた。

「べ、別に教えなくてもいいんじゃないかな? き、企業秘密? みたいな…………」

 目に見えて動揺している様子の五希に詰めの一手を入れる。

「企業秘密ねぇ……私の魔術を知っておいてそれは卑怯じゃないのかしら? 勝ったら何でも教えるって言わなかったっけ? 早く五希の魔術の仕組みを事細かに教えてもらいたいわぁ」

「何だよその言い方は……。 しかも、何でもなんて一言も言ってない!! 千鳥の魔術は千鳥自信には聞いてないじゃないか。 噂で聞いただけで……」

「はいはーい。 話しはそらさない! で? ネタばらししなさいよ!」

 五希は「トホホ……」と言うかのように諦めた様子で話し始めた。


「私の武器となるのは水鉄砲で間違えない。今回使った銃は双銃を合わせて一二丁だよ。 それだけで十分でしょ!」

 五希は上着として着ているマントを外すと中に隠されていた十丁の銃を見せた。

「本当かしら……。 銃の数は合ってても水鉄砲ってところは疑うわね。 さっきの戦いで氷のような弾丸が落ちていたのだけどどういうことかしら?」

「弾丸だって……!?なんで溶けていないの!?」

「溶けてないってことは五希は水使いではなく、氷使いということなのかしら?」

「違うって!! 私には氷は使えない!」

「ち、ちょっと!?」

 五希は証明するかのように壁に銃を向ける。すると五希の言う通り壁に残るのは水だけだった。しかも何故か威力は普通の水鉄砲並だ。

「じゃあ私が見た弾はなんだったの? まさか、幻覚なんて誤魔化しはいらないわよ」

 五希は観念したかのように銃に入っている残りの弾を出した。

「ここまでは言いたく無かったけど負けたからしょうがない……。 私の魔術はこれらの私の持ちうる銃から放つ水の水圧の変化。 この弾は魔術でも何でもなく、ただの凍らした弾丸ってだけで私の放つ銃には大体こいつをつけて飛ばしているだけだ」

「確かにそう言われればさっき撃って壁が壊れなかったのは話がつく。 でも水圧を変えられるならわざわざ固い弾丸なんて作らなくても良かったじゃないかしら?」

「残念ながら水圧ってのは私の魔術じゃ限界があるんだ。 水圧で速くしても照準に当たったときの威力は腫れる程度なんだよ。 それだと駄目ってことは頭のいい千鳥ならもうわかるでしょ? この意味が」

 千鳥は少し申し訳なく感じてしまった。


 魔術戦というのは相手を戦闘不能に近い状態まで追い込まなくてはいけない。普通に撃つと腫れる程度なら戦闘不能に近づけるには水鉄砲では鉛を入れる銃の何倍も打ち込むか威力を増さなければ勝つことは難しいだろう。

 五希のは銃を使うなら百発百中で当ててくる。そんな力があるのなら数発で決めたいところだ。

 それを可能にするには本物近い銃弾を使うのが良いということなる。

 その氷は恐らくかなり硬いものなのだろう。自分で作っているのならば混ぜ物をしている可能性もある。

 であるのだから五希は後者を選んだのだ。


「じゃあなんで水にこだわるのよ? 火の魔術なんか使えば鉛を使った銃が使えるじゃない」

 五希は静かに首を横ひ振る。

「私は多分火は使うことはできないと思うよ。 魔術の方から嫌う? って感じかな」

 私は五希の言っていることが全くわからなかった。

「火が使えないというより水の方がいい? ってことかしら」

「まぁ、言ってしまえばそういうことかな。昔から水には縁があるみたいな感じ」



 五希も制服に着替え終わったようでモニターを見ていた千鳥の横に立っていた。

「そろそろ戻らない?」

「ちょっと待ってくれよ。 千鳥にも聞きたいことがあるんだけど最後になんで千鳥の背後に私がいたってわかったんだ? 多方向から狙ったはずなのに」

 思ってもいなかった質問に少し笑ってしまった。

 五希は自分が使った策略の弱点に気づいていないようだ。

「さっき言ったように私には弾丸を使っていたことに途中てま気づいた。 多分その時見たのがライフルの弾。 双銃にしては口径が長かったからそう思っただけ。 それと同時に何丁も銃が周りに配置されていることに気づいた。」

「配置ってことは私が一定の方向にしか動いていないことに気づいたってこと!」

「そりゃ、そうよ。 五希は百発百中で当ててくる。 なら、ライフルを配置して双銃か何かで私の微妙な位置の場所に照準をずらして引き金を双銃弾で引いたんでしょ? そうしないと後半に入ったときの初弾を外すわけないでしょ? あと、最後のはショットガンかしら?」

 自分言いながらも、やはり五希の百発百中で当てる力は恐ろしいと思ってしまう。魔力を使わずに出来てしまうというのもこれまた驚きである。

「……ハハハハハッ。ここまでばれてたら負けてもしょうがないか。 さすが私の親友だぜ。 でも、まさか銃の種類も当てるとはね」

 勉強していたわけではないが神社には物騒にも色々と銃や刀など武器が多々揃っている。

 その中のものと同じものなら何となく想像がついた。

「ショットガンくらいなら私にもわかるわよ! あの散弾見ちゃえばわかっちゃうもの」

 勝つべくして勝ったような千鳥を見て、五希はもう負けを認めているようだった。



 話しに区切りを付けるとガラス扉へと向かった。

 そこには次の対戦相手と思われる2人の姿があった。

「今の子って2人とも五希のクラスの生徒よね? もう一人の子見たことなかったけど」

「あー、あのちっちゃい子? 今日入ってきた転校生だってさ。 基本無口だけど可愛いから目をつけてたんだ!」

「五希ってそういう趣味だったの?」

「そういう意味じゃない!」


 その少女の目は光を通すことのないような漆黒の瞳をしていた。

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