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管理都市の魔女  作者: 白葉 四季香
【序章】全ての終わりと全ての始まり
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黒の霧


ーーーー2030年、2月末。東京都。


 いつもなら色のある夜の世界ですらも白で染められていた。雪は降ってはいなかったものの夜星や月明かりが見えるはずの空は街の光にかき消され自然光は届くことがなかった。その景色はいかにも都会独特なものを感じさせていた。



 その日、何かの予兆があるわけでもなく白の世界は"黒の霧"に覆われた。その影は東京を中心に広がっていき、日本全域を覆うには数分で事足りた。

 だが黒の影は停滞するわけもなく数分でそこにあったものを吸い取るように消えていった。

 なぜ黒の影が突然現れ、その正体は何だったのかは今でもわかっていない。


 影が消えて光が戻るとこの世に生きるありとあらゆる動物たちは消えていた。もちろん人間なんかが生き残れるわけもなく足掻く時間すらも与えられずに消失していった。

 この時代において高い知能を持つであろう人間ですらも消え去った世界だったが消失せずに残ったものもあった。

 建物や車などの無機物、木や水などの自然物。それと唯一知能や意思を持ち、人間以外のヒトのカテゴリに入る

…………魔導師。

 魔導使いである魔導師(まどうし)は人間と同じような知識を持っていたが、昔から非科学的なものだとされ人間達と隠れるように生きていた。


 魔導師たちは魔導で自分を守ることで消えることは無かったという。

 では、なぜ魔導師以外でないものはどうして消えてしまったのだろうか。



 例えば、科学者のダーウィンはこんな言葉を残している。


ーーーー最も強い者が生き残るのではなく、 最も賢い者が生き延びるのでもない。 唯一生き残ることが出来るのは、 変化できる者である。


 誰しも1度は聞いたことがある言葉だろう。

 だが本当に生き残れるのは変化できる者だけなのだろうか。

 そもそも黒い影から生き延びた無機物や自然物は自ら変化しようと考ることすらできないのである。

 変化しようという意思を持つことのできるものは魔導師だけだった。


 では、なぜそんな意思を持たないものが残ったのか。

 その答えは簡単で守るものがいたからというだけだ。

 存在は目に見えずともその答えはすぐにあの時代の魔導師が出していた。

 その存在は実体を持っておらず、大体のヒトは人間すらも消した黒の影から守るほどの守護者が存在するのかと疑うだろう。

 でも私自身や現代の魔導師ですらもその存在は何となくだが感じることができる。


 そして(のち)に感情を持たないものたちを守った守護者(しゅごしゃ)は高魔力を持つものとして精霊(せいれい)と呼ばれる存在へと変わっていった。

 以後、現在も魔導師と精霊は共存を続けていった。



 嘘のようだがこれが史実にある事実なのである。

 生き残った精霊や魔導師は世界を元に戻すため、自らの(マナ)を削り人間を作り出し、その人間は世界を繁栄させるため子孫を残し、世界の再生のために働いた。

 精霊と魔導師、人間は協力し合った結果として100年で世界が元の安定した状態になった。



 世界はほぼ再生を終了し進化の過程へと戻り始めた、2140年頃。

 その頃から魔導師は無力である人間を見下すようになっていった。

 最後には魔導師は人間を道具のような扱いをし始めた。次第に人間たちもそんな生活に耐えられなくなっていった。

 そして、人間は唯一魔導師に勝てるものとして街の整備で鍛えた機械を扱う程度の知識だけだったため、自分たちの知識を最大限に使い対魔導師の武器を開発することに成功した。

 それは魔導師を解剖し魔導師から魔力(マナ)を引き離し、その魔力を機械に移した《機械魔術兵器》である。

 その頃の人間はかつてあった協力心なんてものは微塵もなく、男女問わず魔導師のことを''魔女(まじょ)''というように呼ぶようになり、魔導師を殺す''魔女狩り(まじょがり)''を始めた。

 魔女狩りは魔力を多く持つものや指揮をとる魔導師から標的にされていった。

 それと同時期に曖昧な存在であった精霊も存在しなあものだとされるようになった。



ーーーー西暦2151年。


 魔女狩りが始まっておよそ10年経ったのが私の生きる時代である。

 魔導師と人間との仲はますます悪くなっていた。機械魔術と比べると能力的には魔導師が上であったが、一気に増えた人口の8割ほどが人間であったため2割の魔導師が生きるのは容易ではなかった。魔女狩りが始まる前とは魔導師と人間の地位は逆転していた。

 魔導師の多くは殺されないように隠れながら暮らすようになり、人間は魔導師を見つけただけで法律なんてものは無視で殺しにかかるようになっていった。

 それはまるで魔導師の生活は黒の影が現れる前と同じ、もしくはそれよりも悪い状態になっていた。


 魔導と同じ原理であるはずの機械魔術という魔法が当たり前となる一方で魔導というものが恨まれ、嫌われるものとなったこの時代。

 小さな都市に生まれてしまった魔導師は危険を感じてか生涯その地から出ることすらも少なくなっていた。

 それは私とて例外ではなく、ごく一般的の魔導師と同様にこの都市内からは出たことがない。


 対立し合う者同士が表面上だけの平和を語りながら生きているこの世界こそが、人間と私たち魔導師が生きる世界の全てなのである。

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