3 負けイベント?いいえ、無双イベントです
「さ~て?まずは何からし・・・」
《マスター!さっきの魔力反応がこっちに向かって猛スピードで接近中です!》
「なぜにバレた!?50キロ離れてるんだぞ!?」
《おそらく向かって来ているものも魔力探知のようなものを持っていて、さっきの私たちの魔力に反応してきたのではないでしょうか?》
「くそっ!失念していた!こっちも魔力を探知できるんだからもともとこの世界にいたやつらは出来て当然だろうが!俺のアホが!・・・よし、しかたない。どうなるかわからないが迎え撃ってやろうじゃないか。フィア、魔力反応との接敵まであと何メートルだ?」
《驚異的なスピードで迫っています!残り約30キロメートル!》
「30キロ!?人じゃないなそれ・・・魔物とかいうやつか?いや、この世界じゃ魔法があるんだからそれぐらい速度を出せてもおかしくはないのか?」
「まあいい。どちらにせよ迎え撃つ準備をしておいて損はないだろう」
《マスター!ついさっき私宛にメールが届きました!》
「メール?しかもフィア宛に。だれからだ?」
《匿名です!中身を見ますか?》
「フィアはメールの中身を確認、そして誰からメールが届いたのか考えておけ」
《?マスターは見ないのですか?》
「ああ、俺はちょっとそこらへんに壮大な罠を張ってくるわ」
《了解です!》
「よろしく」
◆◇◆
《マスター!接敵まで残り約1キロ!すでに目視可能です!》
「そうか、わかった。でもちょうどよかったな。ついさっき罠を張り終えて最終チェックまで終わったところだ」
そういいながら未確認の敵が来る方向を目を凝らしてみてみる
「おお・・・見えたな」
そこには・・・
「でっかい砂埃が」
そう。敵が走りながら巻き上げる砂埃のせいで砂の塊が移動しているようにしか見えないのだ
「これじゃあ敵の大きさが目視じゃわからないな・・・まあフィアがいるから問題ないけどな」
《敵の大きさ予測、結果が出ました!推定体長2メートルの四足歩行ようです!》
「2メートルか・・・大きいが予想の範囲内の大きさだな」
《あと、最初に感じた魔力よりも大きさが小さくなっています。おそらく魔力を消費し続けながら移動しているものと推測されます》
「なら、ここに来るまでにすでに弱体化しているってことだな。魔力を消費しながらということは身体強化みたいな魔法でも使っているのか?まあ、そんなこと気にしても一緒か」
《思考に没頭していて罠を張るところを見ていなかったのでよくわからないのですが、敵は罠で仕留めきれそうですか?》
「たぶんだが仕留めきれるだろう。最悪仕留めきれなくても余裕で勝てるくらいにはボロボロになっているはずだ」
《それは頼もしいですっ!私はマスターが死んでしまうと一蓮托生で一緒に消滅してしまうのでほんとに頑張ってくださいね?》
「りょ~かい。・・・来たな」
さすがにここまで来れば敵の姿もよく見える
大きさは予測通り2メートルちょい、四足歩行でパッと見た感じはデカい狼みたいな体をしている。それだけなら地球にいても成長しすぎただけで済むかもしれないがこいつは全身の体毛がすべて黒く、目が赤く光っていた。
こんなの地球にいるわけがないから、改めて異世界に来れたんだと確認を取ることが出来た
そしてこのブラックウルフ(仮名)の顔には若干の疲労の色が見て取れる。
50キロもの距離を連続で走り続けたのだから当たり前といえば当たり前なのだが。
目を凝らしてブラックウルフの顔を凝視していると目の前にステータスウィンドウのようなものが見えた
「ん?」
***
名前・001
種族・キングブラックウルフ(?)・【暴走】
レベル34
攻・3500
防・2540
敏・3000
魔攻・2000
魔防・3500
魔力・5000
『スキル』・爪撃Lv8・闇魔法Lv2・影魔法Lv4・無魔法Lv6
属性
闇・影・無
称号
《元キングブラックウルフ》《嘆きのキングブラックウルフ》《元ブラックウルフの王》《実験体》
***
「は?なんだ?これ」
《どうしましたかマスター?》
「いやあいつを見てたら視界の中にあいつのステータスウィンドウが出てきてな。多分スキルにあるこの見極めの目ってのが関係するんだろう」
《へえ~面白いスキルがあるんですね~》
「そうか?鑑定スキルはありふれてるだろ?」
《いやいや見ただけで対象の情報が見られるんですよ?そんなのがありふれてたらたまったもんじゃないでしょう?》
「あ~言われてみれば確かにそうだな・・・まあいいだろう?」
《え、ええそうですね・・・そ、それよりもマスター!そろそろ本格的に構えておいた方がいいのではないですか?》
「ん?大丈夫、そろそろだから。ほら罠にかかるぞ」
《え?そこには何もありませんが・・・あっても魔力反応ぐらい・・・ってまさか!?》
と、そのとき
バシィィィンッ
何かの弾けるような音とともに少し離れた何もないところにブラックウルフがぶつかった。それと同時にブラックウルフを中心にして透き通った淡い青色に光る幾何学模様が回転しながらブラックウルフの体が収まる広さまで横に広がった。
ブラックウルフは野生の本能かその範囲から出ようとしたが透明な壁がドーム状にうっすらと浮かび上がりその壁にぶつかり外に出ることが出来ない。それに勢いをつけようにもその大きな巨体では十分に動けない広さしかないため満足に動くことすらできない。
そしてその壁を覆いつくす勢いで、透明な壁に沿うように半径15センチほどの今度は赤い幾何学模様が無数に展開された。
《・・・・・》
ブラックウルフは体当たりでの突破を諦めたのか動くのをやめ自身の影から黒く鋭い針を数えるのもバカらしいほどに発射している。鋭い針を飛ばすあの攻撃は当たればただでは済まないだろう・・・無論当たればだが。
しかしそんな攻撃も壁を破ることが出来ない。当たっては砕け、あるいは弾け、宙に霧散していく。
そんなブラックウルフの必死の抵抗のなか無慈悲にも術は完成に近づいていく。
赤色の幾何学模様が無意味な抵抗を嘲笑うかのようにゆっくりと回転を始め、その回転は徐々にスピードを増し、模様がギリギリ目視できる速度まで加速した。
そして次の瞬間、すべての幾何学模様が一気に収束しピンポン玉ほどの大きさの球体になったかと思いきや瞬きをする間に光を吹き出しながらブラックウルフに向けて次々と弾けた。
連続する轟音とともにまばゆい赤が視界を埋め尽くす。
その光の合間から偶に見える黒は見える度に傷を負いボロボロになっていく。
そして、無限に鳴り続けるとも思えた轟音がついに止んだ・・・
煙が晴れ、見えた光景はそうそうたるものだった。
ただし見えない壁の中のみだが。
地面はひび割れ、抉れボコボコになり、ところどころ地面がガラス化している。
そんな中ブラックウルフはこの攻撃を耐えきっていた。
無論無傷ではなかったが。
全身が元の艶やかな黒を失い焦げた跡が残っていて一部はまだ黒い煙を上げていた。
そして体のいたるところが焼け爛れ、炭化している。
左目が潰れ、痛みと疲労と傷のせいでふらつきながらも顔は苦しみと怒りで埋め尽くされ、もともと光っていた今や隻眼となった赤い瞳はより一層輝きを増しているように見える。
怨念が込められた眼差しで強く睨む目を見ると今にでも襲い掛かってきそうだ・・・いや、既に魔法は終わったのであの強固な壁はもう無いからあいつは動こうとすれば動けるのだ。
あとはあいつ壁が無くなったことに気付く前に勝負を決められるかが勝敗の分かれ目だろう。
《な・・・な、ん・・・ですか。いまの・・・》
「返事は後だ!・・・<ロックバレッタ>!」
手をあいつに向けて魔法を発動すると、俺の手の平のあたりから高速回転する弾丸の形をした石が出現し敵に向かって発射された。
その速度はただの石ながら魔力という推進力により亜音速でブラックウルフに迫る。
だが、ブラックウルフは亜音速なのにもかかわらず避けようと左に動き、驚くことにあいつは頭を狙った攻撃を避け切った・・・が、攻撃そのものを避けるには至らず石を肩にくらい右肩の半分が吹き飛んだ。
これはつまり本来の、重傷を負っていなければ亜音速の弾丸を避けることが出来るということだ。ただ、それが生身での能力か魔法によるものかはわからないが。どちらにせよ凄まじい身体能力だ。
だがこれでさらに機動力を奪うことが出来た。
「GAAAAAAAAA!」
「よしっ順調、順ちょ、うっ!?」
一瞬安心した瞬間にあいつは右手が使えないにも関わらず左前脚と後ろ足でこっちに向かって跳躍しながらさっきの黒い針を発射してきた。
だが疲れて、さらにもうほとんど魔力がないのか先ほどよりも小さく遅く、量も少なくなっていた。
そしてそれは鍛えた俺の素の身体能力でも見切ることのできる速度だった。
頭や足などの受け流しずらいところは最小限の動きで避け、胴体に向かってくる針は柔術の技で受け流しながら勢いを利用して後方へと弾き飛ばした。思ったよりも威力が高く手の甲を少し切ってしまったが針で穴だらけにされるよりマシだろう。
そこにブラックウルフが突っ込んでくる。
驚いたのかは定かではないが少々動きが鈍かった。この巨体との近接戦闘は遠慮したかったので、理由がどうであれ正直ありがたかった。
相手の頭突きを跳躍して避けて上からロックバレッタを発射する。
それでもこいつは驚異的な反射神経と運動能力で掠りながらも右に避けた。
そして避けながら左前足をこっちに振り上げてきたので体を限界まで捻りながら避け、俺はそのまま地面に着地した。
こいつは振り上げたままの左前足を今度は振り下ろしながら後ろ脚を使ってこっちに跳躍しようとしていたからあいつの足元に水を創り泥沼にした。
そのせいでこいつは踏ん張れずに滑り腹を打ち付けるようにして倒れた。
直後、地面がワイヤーのように細くなりながら盛り上がりブラックウルフの前足と後ろ脚を拘束した。
俺はこいつに近づくため念のため怪我のために使うことができない右前脚の方から回りこんだ。
こいつの背中に魔力を練りながら手の平を添え、そのまま発勁とともに魔力を打ち込んだ。
これは検証した結果、練成した魔力を発勁で内部に打ち込んでいるようだ。
つまりこの場合体内に攻撃性を持った魔力を打ち込んで体内を直接攻撃するということだ。
防御を無視して攻撃を伝えるから『魔浸透』・・・とでも名付けようか。
魔力を纏った発勁の衝撃で地面がひび割れ陥没した。
ブラックウルフはめり込み身動きが全く取れなると同時に血反吐を吐いた。
俺はもう一度近づこうとするが黒い槍がブラックウルフを囲うように地面から突き出ていて、近寄ると追加で槍が突き出てくる。
「くそっ、思ったよりも苦戦してるな。どうするか・・・」
《ちょ、ちょっと待ってください!何ですかこの戦い!》
「ん?なにがだ?」
《なにがだ?じゃありませんよ!何なんですかさっきの地面が陥没した攻撃ッ・・・いや、そもそも開幕のレーザーみたいなのってなんですか!?》
「ああ、あれは小型の荷電粒子砲だよ」
《荷電粒子砲!?あれはほとんど架空の兵器じゃないですか》
「でもここは異世界。つまり地球じゃ架空の世界だってことだ」
《あっ》
「それに荷電粒子砲が架空だったのは加速器の小型化ができなかったからだ。てことはそれを実体のない魔法で補えばいいってことだ」
《な、なるほど・・・確かにそうですね・・・って荷電粒子砲を受けて結構元気に動いてるあのブラックウルフ、おかしくないですか!?》
「そこなんだよ。今んところの俺の推測では多分込める魔力が足りなくて十分に加速できなかったんじゃないかと推測している」
《・・・う~ん。その推測が一番それらしいですね》
「だな」
《あ。あとあのさっきやった地面が陥没する攻撃ってなんだったんですか?やっぱり魔法か何かですか?魔力が検知できましたし》
「いや?ただの発勁だ」
《発勁が使えることに驚きですが発勁にしては衝撃が大きすぎませんか?》
「ああ。それは魔力を練って腕に纏って、発勁と同時に魔力を打ち込んだからだろう。ちなみに魔浸透と名付けた」
《そんなことが可能だったんですね・・・》
「あれ、名前は無視?」
《ってそんなことよりどうするんですか!まだ終わってませんよ!》
「そんなこと・・・」
《なに落ち込んでるんですかマスター!》
「いや・・・なんでもない。・・・そうだな。あっちが槍だし、目には目を。槍には槍を、だな」
《?》
魔力をあいつがめり込んでいる地面に集中し、土を押し固めるイメージとともに槍の形を思い浮かべる。
そのまま地面から突き出るようにイメージすれば完成だ・・・魔力を開放する。
直後あいつのめり込んでいた地面からブラックウルフを貫きながら地面と同じ色をした槍が突き出した。
「なかなかにえぐいな・・・う~ん地面を固めて作った槍だから<ロックランス>とかでいいか」
そこには地面から突き出た3本ほどの槍がブラックウルフを貫いてブラックウルフを空中に浮かべている光景がある。
ブラックウルフはもうピクリとも動かない。
ステータスを見ると死亡と書いてあった。
つまり、
「終わった~!」
《終わりましたね。お疲れ様です、マスターっ》
「ありがと、フィア」
《にしても思ったより元気でしたね。あの狼》
「あいつはブラックウルフっていうんだ。でも確かに強かったな。最初の荷電粒子砲で仕留める気だったんだけどな」
《なにか原因がありそうですね》
「ああ。俺はステータスがあるこの世界ならHPも決まっていると思ったんだがどうやら決まったなかったらしい。テンプレなら決まってないとおかしいだろうが」
《いや、無いのが普通ですよ?それ》
「いや、まあそうなんだがな・・・まあ、いいか。勝ったからな」
《ふふっですね》
「よっし。これからテンプレを信じてブラックウルフを解体す・・・る・・・ぞ」
ドサッ
《マスター、どうしましたか!?マスター!?》
俺の意識がだんだん遠のいていった。
ポーン
〈レベルが上がりました〉
戦闘の表現は難しいですね・・・
ちゃんと伝わっているのだろうか・・・?
みたいな感じで不安です
次回からおそらく、きっと、少しずつ進むはず(^_^;)
こうご期待!!(←一度言ってみたかった)