学校へ行こう 2
少し短めです。
「やめてください!!」
静まり返ったこの空気の中声の聞こえた方をみてみると、女の子2人と先輩と思われる男の人たちとがもめていました。
声を発した気の強そうな女の子が後ろで泣いて怖がっている女の子を庇う様に先輩に立ち向かっています。
先輩のほうは見たことがありました。
いわゆる『不良』という奴で、この学校にも少数ながらも存在している伝説的な存在で、よく風紀ともめていると聞いたことがありました。
雰囲気が険悪な上、不良という怖い存在なので、正直関わり合いたくありません、というか関わりません。
「先にこの席に座っていたのは私たちです! 席ならほかにも空いていますし、そちらに座ればいいじゃないですか!」
「も、もうやめようよ……。 私たちが場所を変えればいいんだから……、ねぇ…」
泣いている女の子はこれ以上騒ぎを大きくしたくないのか、女の子の腕を掴んで止めようとします。
しかし、女の子元々が気の強い性分らしく、止まる様子は全くありません。
あっ、振り払った、と思うと勢いよく振り返ります。
なんだかその姿が千代に似ている気がして、こんなにシリアスな場面なのについ笑ってしまいそうになりました。
「こんなのに負けて仁美は悔しくないの!?」
と仁美と呼ばれた女の子まで睨みつけます。
―――パタパタ―――――
「そっちのはよくわかってんじゃねえか。それに、『こんなの』とはずいぶんな言い草だなあ、オイ。 入学した手の一年生が俺たち三年生にたてついてんじゃねえぞ! それとも何か?俺たち庶民は学年なんか関係なしに、見下されなきゃならないのか、えぇ!?」
ガシャンと大きな音を立てて蹴られた椅子に、食堂内の空気がピリピリしはじめます。
いや、事情は知らないけど聞いてる分には女の子の言い分が正しいんじゃないんですか、なんて僕は1人場違いなことを考えていました。
私立栂崎高校はエレベーター式のためか、全体的に落ち着いた上品な雰囲気が漂っています。
どこぞの財閥の坊ちゃんや茶道の宗家のお嬢様がいることもそれを助長しているのでしょう。
でも、僕のような『外部受験生』は普通の家柄の、いわゆる庶民が多く、「気取っている」「見下している」と感じてる人が結構います。
事実、そんな人たちもいますし、『暗黙の了解』というもので生活のいろいろが差別化されています。
向こう側の方もメリットがないのがわかっているからか『選民意識』というものがあるからか、話かけることすらしません。
まぁ、そんな人ばかりでもありませんが、大部分は見下しているような態度を取っているような気がします。
それらの考え方が溝を作る原因であると僕は思っていますけどね。
ちなみに僕はそんな考えはありません。
「見下してなんかいません、でも間違っているのは先輩方でしょう!? 私は正論を言っているまでです。 私は何一つ間違ったことは言ってませんから譲るつもりはありません」
火に油を注ぐこの発言はこの状況では非常にまずいです。
下手な正義感を信じて振りかざす女の子は本当にこれでどうにかなると思っているのでしょうか。
空気が更に凍り付いて、このままだと風邪引いてしまいそうです。
―――パタパタ―――――ボテッ―――――――――――――――――――
ところで、さっきから動き回っている物体ですが、勘のいい人ならわかるはず……なんかちっこいのがいるって
あの子は紛れもなく「あいつら」の一人です。
確かあの子は「居酒屋 共食い」で働いているウェイトレスだったと思います。
動くたびにひらひら揺れるスカートをはいて一生懸命働く姿がとても可愛くて印象に深く残っていました。 決して変態的な意味じゃないので勘違いだけはしないでください。
何でうちにはこんな子がいないんだろうと、見るたびに不思議でたまりません。
給仕に忙しいのかわざと気にしていないのかはわかりませんが、今いる位置はあと少しで火の子が掛かりそうな危険な位置で、事件の進行よりもむしろこっちの方が心配でハラハラしています。
「てめぇ、なめてんじゃねえよ!!」
ごぎっ
あっ、と思った時には女の子は殴られていました。
確かに女の子の心配はしましたが、半分自業自得なので放置します。
次はもっと上手く立ち回れることを願っています。
でも方向がまずいです。
さすがにあの子も気づいたようで、ゆっくりと倒れてくる女の子を見つけて目を見開いて硬直してしまいました。
つい、馨がいるのも忘れて飛び出していこうとした瞬間
突然女の子の動きが止まりました。
よく見るとすぐ傍に誰かが立って、その女の子を支えていました。
「何をしている」
凛とした鋭い声が食堂内に響きました。
2013/1/6 少しだけ改訂しました。
2013/1/12 上記に同じくです。