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主食戦争!  作者: 唐紅
2/20

学校へ行こう 1

おはようございます、米倉俊平です。

今日も日の出とともに起き上がって、手早く朝ごはんを食べて弁当を持って学校に向かいます。

ちなみに、今日の朝ごはんはトーストとジャムでした。

巷で人気の高校の制服を着て、玄関横の鏡で確認してから家を出発します。

「あいつら」も朝が早いので、やってくる前にとっとと退散してしまいます。

うるさいのはめんどくさいです。


駅まで自転車10分、電車に揺られて25分、学校まで歩いて20分、約1時間かけて街中の学校に通っています。

僕の家はこれといった遊び場も特徴も無い片田舎にあるので、なんだかんだで毎日労力がかかります。

別に近くに学校がないわけでも、『巷で人気の制服』に憧れてこの学校に入学したのでもありません。

もちろん、偏差値や特待制度、進学実績や校風などの理由があることは事実ですね。

でもそれだけではありません。 主な理由は………









街中では「あいつら」と遭遇しないからですよ。


『準都会』というか『ベッドタウン』であるこの町は、家からちょっと歩けば田んぼや畑が見えてきます。

駅をはさんで表は何棟もマンションが建っていますが裏手は山一色、養鶏場兼卵の直売場が駅から歩いて約5分。

一般的にはのどかな良い町になるのでしょうが、僕にしてみればあまり『のどかで良い町』には思えません。

確かに緑があって人が密集し過ぎないこの町は、夜になれば虫の声が聞こえてきて夜空に星も浮かんで見える良いところです。

でも、僕は人とは少しだけ見える範囲が違うので「あいつら」の姿や声、気配など、いろんな物を感じ取ってしまい、とても疲れてしまいます。

正直、もうちょっと自重して欲しいです。

そんなこんなで、わざわざお金を出して遠い道のりを頑張って通っているわけです。



話が逸れましたが学校に到着しました。

僕の通う、私立栂崎[つがさき]高校は小学校から大学までエレベータ式の学校で、金がばら撒くほどある様な方々が通うためか、校舎はもちろん食堂から備品までいつも新品同然で一流の品ばかりです。

誘拐事件を防ぐためであろう警備員の横を抜けると、馬鹿みたいに広大な敷地が広がっています。

何棟もある大きくて綺麗な校舎は広々としていて高級感が漂います。

超本格的な弓道場や射撃場、スポーツジムを彷彿とさせるトレーニングルームなど、一体いくら金を使ったんだと言いたくなるような設備の充実さ加減には、今はもう驚きません。

通っている生徒の質も良いのか、なんとなく上品な雰囲気がします。

でも、元からいた人たちは保守的な面もあり僕みたいな『外部受験組』とはあまり関わり合いがありません。




だだっ広い廊下を抜けてやっと教室にたどり着きました。


「おはよう、馨」

「ん、おはよ」


今返事を返してくれたのは、綺麗な顔に短い黒髪、目に強い意志の光を宿す、いわゆる『イケメン』に分類される斎藤馨さいとう・かおる、僕と同じ『外部受験生』です。

受験の時、不注意で学校の透明ガラスにぶつかって気絶した僕を、保健室まで担いでくれて以来の親友です。

今でもその時の話を持ち出してからかわれるのは、あまり面白くないのでむすっと不機嫌になってしまいます。

朝補修なんだっけ、と話しかけて始まったしゃべりをしながら席に着くと、ちょうどよく先生が来たみたいです。

ああ、今日もまた一日が始まるなぁ、と意識を黒板に向けました。





―――時は流れて昼休み


僕らはいつも食堂で一緒に昼食をとります。

1学年が1000人を超えるためか食堂はいつも人でにぎわっているので、早めに来ないと席が埋まって座れなくなります。

そのため馨が700円の日替わりランチセットを頼んでいる間に2人分の席を確保するのが習慣になりました。


食堂も豪華なシャンデリアから食器の一つ一つまでこだわりがあるようで、僕が持つとなんだか持たされているような感覚に陥ってしまいます。

ふと、食堂の一角に目を向けると妙に騒がしいところがあります。

さっき言ったとおり、この食堂はたくさんの人が訪れるので、とても広く外部の店まで出店しています。

すると当然食材の種類も多くなり、「あいつら」も増えるわけです。

僕が入学した時には既に学校の食堂に居酒屋作ってました。

しかも店名が「居酒屋 共食い」ってどうなんですか、それ。


一度好奇心に負けてちらっと、ほんの少しだけ様子を見てみたのですが、びっくりするくらいの情報量を誇っていました。

保護されてしかるべきの個人情報から学校の経営に関することまでとにかくたくさんの情報があり、いっそのこと『情報屋』に名前を変えたほうが良いと思いました。

まぁ、9割方愚痴でしたけどね。 何ですかねこの無駄なハイクオリティ。

これはすごい、とおもったのですが、馨に『見える』ことを知られて気味悪がられたくありませんから有事の時以外は近寄りませんし、基本方針として僕は「あいつら」のことは無視します。

僕の人生をめちゃくちゃにされたくありません、家の中だけで手一杯です。



「相変わらずだな、その弁当」


馨は日替わりランチのサラダをつつきながら弁当に目を向けます。

近所のスーパーで買った安い弁当箱は、多額のお金がかかっているであろうこの学校の雰囲気には全くつりあっていません。

中世のヨーロッパをイメージしたような内装や、顔が映りそうなほど磨かれたテーブルとは不釣合いな手作り感満載の僕の弁当。

蓋についている動物のプリントが場違いだと囁いているような気がします。

ちなみに今日の献立は、白ご飯と昨日安売りをしていた野菜と卵の炒め物、がメインで端の方に昨日の晩の肉じゃがが少しです。

これでも豪華な方なんだけどな。


「学費と交通費が馬鹿にならないから節約しないと。食費ぐらいは浮かせたいし」

「何かあったら遠慮せずに来いよ、お前一人ぐらいならどうにでもなるしな」

「肉食え、肉」と白ご飯の上に乗せてくれる馨は少しぶっきらぼうながらも優しいです。


「ありがとう」と礼を言って食事を再開すると、どこからか「きゃあ!」と黄色い悲鳴が聞こえるのもいつものこと。

そして、なんだか嫉妬のような視線を向けられるのもいつものこと。

サッカー部で活躍する馨は地味に有名です。

やっぱり馨はかっこいいもんなぁと、妙に納得しながら食べ進めます。




あれ?なんか向こうの方が少し騒がしいみたいだね、と口を開こうとした瞬間


「やめてください!!」


どこからか高く鋭い声が上がりました。

分割します


2012/11/27 文章を少し改訂しました。

馨の設定を変えました。

2013/1/12 文章を改訂しました。

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