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浮気

作者: 華泥棒

「亮のバカ!!もう知らない!!!!」



アイツのその言葉が頭の中でずっと ずっと 1日中こだましてた。



俺 坂下 亮は今日彼女とケンカした。


ケンカの理由は 俺の浮気。


浮気はこれまで何度かしたことがあったが ああやって怒鳴られたのも 頬をたたかれたのも初めてだった。


アイツはたいした力ないから たたかれてもそれほど痛くはなかったけど・・・



静まり返った俺『達』の部屋


鳴らないインターホンと携帯


人の気配のない空間




・・・気持ち悪い


吐き気までしてきた。



「・・・ケホッ」


咳き込む。


あぁ そういえば俺が咳すれば それだけで風邪薬だとか買ってきてたなアイツ・・・


心配性なんだよ。


浮気だって・・・心配しすぎだ。


遊びだよ あれぐらい。


ただ 酔った相手が『キスしてよ』とか言い出すからしただけで・・・


好きなのは 愛してるのは


お前だけだってわかんねぇのか?


「・・・んなの 言わなくてもわかると思ってたんだけどなぁ・・・」




言わなきゃわかんねぇこともあるってことか。



キスは言われたらする。


罪悪感なんてなかった。


だけど


アイツ以外の女にくっせー甘い台詞を言ったことはなかった。


『好きだ』『愛してる』


そんなの アイツ以外に言ったことはない。


キス以上のことだって アイツにしかしたことねぇぞ?


意思表示をしてはいるつもりだった。


「・・・・・・そういや アイツに俺から電話したことなかったな」


いつも 電話はアイツから。


メールはたまに俺からするけど・・・


あ・・・だめだ んなの考えたら声聞きたくなってきちまった・・・


目をつむって椅子に座ると今朝のことを思い出す。




『・・・遅かったね 朝帰り?』


『あー・・・バイト先の女につかまった。』


『・・・え?』


『バイトが終わって帰ろうとしたら客の女が飲みに誘ってきたんだよ』


『・・・何したの?』


『何って?キスだけ』


『だけってなに・・・?』


『酔ったいきおいで向こうが誘ってきたからしただけだよ』


『・・・・・』


『何?』


『なんで私以外の人とキスするの?私のこと好きなんじゃないの?』


『好きだよ?お前のこと。愛してる 世界で1番愛してる』


『だったらなんで?なんで私以外の人と・・・』


『なんでお前以外としちゃいけねぇの?』


『なんでって・・・』


『たかがキスぐらいで怒んなよ お前にいくらでもしてやってるだろ?』


『キス・・・ぐらい?』


『キスぐらい だろ別に。キスぐらい誰にでもできるぞ俺は。あ、人間の女ならの話だけどな!アハハッ』


『亮のバカ!!知らない!!!!』


バシンッ!!!!





長い長い巻き戻しと再生が終わる。


そういえばアイツ 泣いてたっけ・・・


そういえばアイツ どこ行ったんだ?


そういえばアイツ 今風邪ひいてんだっけ?俺のがうつったっつってたな・・・


そういえばアイツ 財布持ってねぇな


そういえばアイツ 携帯は持ってるな




『そういえばアイツ』が続く。


アイツのこと以外考えられない




携帯が鳴る。


「・・・誰だ?」


ピッ


電話に出ると聞き覚えのある女の声。


『もしもし亮〜?今ね〜1人なの〜家行っていー?』


「別にいいけど?」


『じゃあ今から行くねぇぇ〜〜〜』




ピーンポーン♪


ドアを開けると見覚えのある顔。


名前なんて覚えてねえ。


「ごめんね急にぃ〜会いたくなっちゃったの〜」


「あっそ」


部屋はやかましくなった


インターホンと携帯は鳴った。


人の気配もある


なのに 吐き気がおさまらない


アイツじゃなきゃだめだ


「ねぇ亮・・・キスしてぇ?」


「・・・・・・」


女の肩を握って顔を近づける


・・・だめだ


気持ち悪い


「・・・無理」


「えぇ!?なんでぇぇ!?」


「・・・・・気持ち悪ぃ」


「はぁ!?何それぇ!最低!亮のバカァ!!!!」


『亮のバカ』


同じ言葉なのに 違う


女は泣きながら部屋を出て行った。


アイツも泣いてた あの女も泣いてた


なのに 違う


全然違う




「・・・・・・・・・・・・・梓」


1人の時 初めて名前をつぶやいてみた


声が聞きたい


顔が見たい


抱きしめたい


キスしたい


梓・・・




カチャ・・・


気づいたら携帯を握ってた。


プルルルル・・・プルルルル・・・


「・・・もしもし?」


「・・・・・・梓?」


「亮・・・」


「・・・梓 愛してる」


「え?亮?」


「梓 帰ってきてくんない?」


「やだよ・・・だって亮 私以外でもいいんでしょ!?」


「・・・無理 お前じゃないと・・・なんもできねぇ」


「・・・・・」


「梓・・・会いたい」


それだけ言うと 意識が遠のいた。






「・・・ぅ 亮・・・亮・・・」


「・・・・・ん」


目が覚めるとそこはベッドの上で 横を見ると心配そうな梓の顔があった。


「・・・梓」


すぐに梓に抱きつく。


「だめ!寝てなきゃ!」


「・・・なんで」


「バカ・・・熱あがって倒れたんだよ?もう・・・」


あぁ 吐き気はそのせいか?


・・・いや やっぱそれだけじゃないかも。


「・・・梓 愛してる」


「・・・バカ 病人が何言ってるのよ」


「・・・悪かったよ もうしねぇ。お前以外の女とキスしねぇよ・・・」


「当たり前でしょ!?常識よぉ!」


「・・・梓 こっち来いよ」


梓の腕をつかむと梓はため息をついた。


「・・・しょうがないなぁもう 私がいないとだめなんだね?」


「・・・あぁ 俺はお前がいないと狂っちまうよ」


「バカ・・・んっ」





冷たい梓とキスをして あたたかい布団の中で 君と抱きしめあった





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― 新着の感想 ―
[一言] 目の前でねっとり他の男とキスしてやりゃいいのに。
2017/08/19 10:03 退会済み
管理
[一言] そういえばアイツ、というフレーズの繰り返しが恋してる感じを伝えてくれて、すごく良かったです。恋人に会いたくなるようなお話ですね。
2006/11/14 22:29 退会済み
管理
[一言] あったかいですね。今の恋を頑張ろうと思えましたw
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