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美奈、召喚される

ジャンルをコメディーに変えるべきか悩んでます。

 よく晴れた昼下がり。青く澄み渡る空。時折優しく吹く風に、木々はそよそよと揺らいでいた。そんな庭の様子を窓から眺め、カンパレア王国の筆頭騎士クリスティーナは振り返ってもう一度室内を見渡した。


 暗く、じめじめとした石造りの部屋の中では、黒いローブを羽織ったひ弱そうな男たちが部屋の床に這いつくばり、一心不乱に巨大な魔方陣を描き続けていた。クリスティーナは腕を組んで彼らを見下ろし、はあ、とひとつ溜息を吐いた。

「外はこんなにも心地よい陽気で溢れているというのに、このような場の警護とは何の因果か……」

 彼女は残念そうに呟き、再び窓の外を見た。外に広がる宮殿の庭では、降り注ぐ陽の光の中、美しい色の蝶がひらひらとその羽を舞わせていた。思わずそれに見とれていると、彼女の背後から呼びかける声がした。


「……クリス様」

「わあ!」

 突然低い声でぼそりと呼びかけられ、クリスティーナは思わず飛び上がった。心臓の鼓動を抑えつつ彼女が振り向くと、そこには黒いローブを纏った小柄な男が立っていた。男は長年の部屋暮らしの所為かその顔はすっかり土気色で、ぎょろりとした大きな目の下には真っ黒なくまがあった。その顔を見るや否や、クリスティーナは少しのけぞった。

「な、なんだ、ゾドバか。突然話しかけるな! お前の声は心臓に悪い!」


 クリスティーナはこの男――宮廷付きの魔道学者ゾドバが苦手だった。その異様な風貌も元より、普段は誰とも喋る様子も無く、ひたすら室内で魔道学の研究に打ち込んでおり、時折口をきいたかと思えば低く小さな声で一言二言だけぼそぼそと喋る。一体何を考えているのかまるで分からないゾドバを、彼女はどう扱ってよいものか分からず困り果てていた。

 そんな彼女の心境を知ってか知らずか、ゾドバはその大きな目でぎょろりと見上げてぼそりと口を開けた。

「……それは、大変失礼いたしました」

 その言葉の後、暫く二人は沈黙のまま目を合わせていた。

 ゾドバは何やら言いたげだったが、クリスティーナの言葉を待っているようだった。頬を引きつらせながら、ようやくクリスティーナが口を開いた。

「な、何だ? 何か用があったのではないのか?」

 ゾドバはなおもその目線と表情を変えずにゆっくりとした口調で答えた。 

「はい。魔方陣が完成いたしました……。召喚を開始する準備を行いますので、しばしお待ちを……」

 クリスティーナは彼の顔から目を逸らしながら答えた。

「あ、ああ、今日はオプス神の召喚だったな。なるべく早めに頼むぞ」

「……承知しました」

 そしてゾドバは黒いローブの男たちを集めてそれぞれに指示をした。男たちはその言葉に従い、各々部屋から出て行った。恐らく神へ捧げる物を用意しに行ったのだろう。最後に、ゾドバは傍らの若い男に指示を与えた。

「……ドリウスよ、地下に保管した洗礼用の聖水を取りに行かねばならぬ。共に来てくれ」

「承知いたしました」

 若い男の名はドリウスといった。彼はゾドバの下で魔道学を学ぶ助手であり、その優秀ぶりはクリスティーナの耳にも入っていた。だが、やはり彼もゾドバに負けず劣らず寡黙な人物であり、これまた彼女の苦手な部類の人物だった。

 ドリウスとゾドバは、聖水を取りに共に部屋を出て行った。そして、部屋の中にはクリスティーナ一人が残された。彼女は窓の外を見ながらぼそりと呟いた。

「まったく、魔道学者という連中はどうして皆ああいう風に陰気なのだろうか?」


 その部屋は宮殿の庭の一角に建つ建物、王国魔道研究所の中にあった。

 ゾドバは魔道研究所の主席研究員である。この日は、彼の主導で巨大な魔方陣による神々召喚の実験を執り行うことになっていた。なお、今回は豊穣の神であるオプス神より今年の農作物の収穫高に関する神託を頂くことが目的であり、その見届け人としてクリスティーナが選ばれたのだった。また彼女がこの場にいることは、学者たちが誤って邪悪な存在を召喚してしまった際の処理役としての意味合いもあった。

 だが、こういった類の召喚実験で何かが召喚されたことは過去に一例も無く、クリスティーナは恐らく今回も失敗するだろうと踏んでいた。彼女は誰も居なくなったその部屋の中で、今日何度目かも分からない溜息を吐いて、床に書かれた巨大な魔方陣を見つめた。

 そこには直径二十尺もある巨大な円の中に、びっしりと幾何学模様が描かれていた。これを書き上げるために、ゾドバら研究員は昨日から夜を徹して作業していたという。魔方陣の周囲には魔法の品がいくつか置かれていたが、彼女にはそれが何であるかはよく分からなかった。

「第一、こんなものを床に書いたところで、本当に神が呼び出せるのか怪しいものだ」

 そう呟いて、彼女は窓際から離れて魔方陣へ歩み寄った。

「そもそも何と書いてあるのだ、これは?」 

 彼女は腕を組んで魔方陣を見下ろした。

 魔方陣には古代魔法文明の言語で豊穣の神を呼び出す意味の文が書かれていた。彼女にはその言語を読むことはできなかったが、古代の言語とは一体どういうものか、と好奇心でそこへ近づいた。

 そして、彼女が魔方陣の中へ足を踏み入れた瞬間、激しい衝撃が彼女を襲った――




――「……クリス様」


 小さく呼ぶ声に気付いて、彼女は目を開けた。研究員たちが不安げな表情でその顔を覗きこんでいた。


「ふえ?」

 美奈はその目を擦りながら身体を起こした。暗く、じめじめとした部屋の中。周りを黒いローブで身を包んだ男たちに囲まれていた。その中の一人――ゾドバがぼそりと言った。

「クリス様……気付かれましたか」

 美奈は状況が理解できず、しばらくぼーっとした様子でゾドバの顔を見つめていた。そんな彼女に構わず、ゾドバは言葉を連ねた。

「魔方陣の中に足を踏み入れてはなりませぬ。お陰で魔力の流れが少し乱れてしまいました」

「……まりょく?」

 ぼそぼそと喋る男の言葉の全ては聞き取れなかった。美奈は辺りを見回し、呟いた。

「え……、ここどこ……?」

 それを聞いて、研究員たちは顔を見合わせた。

「化学室にいたはずだけど……なんでこんなとこに居るんだろ?」

 首を傾げる美奈を見て、ドリウスが不安げな表情でゾドバに言った。

「ゾドバ様、どうやらクリス様の記憶が混濁しておられるご様子ですが……」

「いや、これは、もしや……」

 ゾドバはしばらく考え込み、とある仮説を立てた。そして、その仮説を検証するために彼女にある質問を投げかけた。


「……失礼ですが、貴方様のお名前は?」

「え? あたしの名前? 来須(くるす)美奈(みな)だけど……」

 美奈は突然名前を問われたことにすこし驚いたものの、はにかみながら答えた。

「なんと……!」

 ゾドバは感嘆の声をあげた。それは彼の中で仮説が定説になった瞬間だった。そして彼はその大きな目をさらに見開き、ドリウスの肩を叩いて美奈に背を向けた。


「こちらへ来い、ドリウス!」

「こ、これはどういうことでしょうか、ゾドバ様?」

 ドリウスはゾドバがその様子を豹変させたことにも少し驚いたようだった。先刻までまるで無表情だったゾドバの顔は興奮のあまり紅潮しており、その声も内から溢れる高揚感に溢れていた。

 二人は美奈に背を向けたまま、声を潜めて話し出した。


「魔方陣に足を踏み入れたことでクリス様の中に何か変化があったようだ」

「変化、とは?」

「ドリウス、お前には分からんか? あのご様子、明らかに普段のクリス様のものではない。あんなに朗らかな表情のクリス様など、お前も見たことはないだろう? 恐らく、魔方陣に足を踏み入れたことで何か高次の存在が憑依されたに違いない……!」

 そう自信満々に語るゾドバの目は輝いていた。自らの師がそんな様子で語るのであれば、ドリウスも当然その説を心から受け入れた。


 そして、彼らはまた美奈に振り返り、美奈に問いかけた。

「……失礼。もう一度お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」

「え、来須美奈、です」

 それを聞いて、二人は頷いた。

「……ふむ」「なるほど……」

 名前を聞くやいなや考え込んだ二人の様子に、美奈は少し戸惑った。

「えと……どうかしたの?」

「いえ、少しお待ちを……」

 二人は慌てて取り繕い、また美奈に背を向けてひそひそと話を始めた。


「ドリウス、どうやら"クルスミナ"という名の神が憑依されたようだ」

「聞いたことがありませぬな。何の神であられるのでしょうか?」

「……豊穣の神を呼び出す魔方陣によって現れたのだ。それに近いものであるのは間違いなかろう」

「では、当初の予定通りに進めましょうか」

「うむ、まずは捧げ物を持ってくるのだ」


 そして二人は他の研究員に合図をし、神に捧げる予定だった品々を運ばせた。洗礼済みの野菜や果物、肉、魚、塩や小麦粉などの食材、そして数々の魔法の道具などが次々と部屋の中に運び込まれ、それらは美奈の前に整然と並べられた。そして、ゾドバはその内から果物が積まれた皿を選び、他の研究員らと共に美奈の前に跪いて、それを恭しく差し出した。

「クルスミナ様、まずはこれをお納めください」

「え……、うん」

 瞬く間に自分の前に色々なものを並べられて唖然とした美奈は、言われるがままにその果物の皿から桃に似た果実をひとつ手に取った。


 ――これを食べろってことなのかな?


 美奈は、手に持った果実のにおいを嗅いでみた。甘く良い香りがした。そして、恐る恐るそれに噛り付くと、口から鼻にふんわりとバラのような良い香りが吹き抜け、さらに梨のようなみずみずしさと共に、桃にハチミツをかけたような甘さが口いっぱいに広がった。それは美奈がこれまで全く体験したことの無い味であり、驚きのあまりつい声が出た。

「何コレ? すっごく美味しい! コレ、超ヤバイ!!」

 その言葉を聞いて、ゾドバとドリウスは顔を見合わせた。そして美奈に気付かれないよう小声で言葉を交わした。


「ゾ、ゾドバ様! 今、ヤバイって、ヤバイって言いましたよね!?」

「うむ、私もそう聞こえた。これは今年は大凶作になるという意味だろうか?」

「か、確認してみましょう!」

 そしてゾドバは仰々しい口調で美奈に問いかけた。

「クルスミナ様、その作物の来年の取れ高などはいかがなものでしょうか?」

「ふぇ!?」

 その果実を夢中でほおばっていた美奈は、予想だにしなかった問いかけに驚いた。そして、愛想笑いと共に答えた。

「え、えーと、そういうのはあたしには分からないかな……あははー」

「な、なんと?」

 ゾドバは思わぬ返答にうろたえた。そして、また美奈に聞こえないようドリウスと小声で話し出した。


「ドリウス、どうやらこの方は豊穣の神ではないようだ……」

「……間違えたのでしょうか。なら、この方は一体……?」

 不安げな表情でひそひそと話す二人を見て、美奈は二つ目の果実を手に取りながら言った。

「えと、作物のことなら農家の人に聞いたほうがいいんじゃないかな?」

「……ノ、ノーカー?」

「うん、農家の人」

 それを聞き、ゾドバはいそいそとドリウスの肩を叩いて美奈に背を向けた。そして二人はまた小声で話を始めた。


「ノーカーとは何だ? 神の名前か? お主、知っておるか、ドリウス?」

 ドリウスは美奈の言ったことを冷静に分析し、ゾドバに伝えた。

「分かりません。しかし、"作物のことならノーカーに聞くべし"と。さらに"ノーカーは人"と仰られたかと……!」

「人、とな? どういうことだ?」

「作物のことに詳しいのは、豊穣の神オプスに他なりません。とすると、オプス神がノーカーという名の現人神として光臨された、という意味では……?」

「ふむ、ならば、この方は転生を司る神、ということになるな。我々はオプス神を呼び出したのだが、すでに転生された後であったので、この方が現れたのだろう」


 そして二人はまた美奈のほうに振り返り、問いかけた。

「クルスミナ様、そのノーカーという者はいずこに現れたのでしょうか?」

「え? 農家の人なら、畑とか田んぼとかに行けば居ると思うけど……」

「……なんと、そのような場所に居られると!」


 ゾドバは慌てた様子でドリウスに指示を出した。

「ドリウス、至急手配するのだ。王国の畑のいずこかにノーカーという名の現人神が光臨されておる!」

「し、承知いたしました! それではすぐに騎士団長へ報告を……!」

 そう言ってドリウスはばたばたとその場から離れ、部屋を出て行った。


 一方、美奈はそんな周囲の様子を一切気にすることも無く、二つ目の果実をぺろりとたいらげた。さらに三つ目の果実に手を伸ばそうとしたとき、ふと自分の目の前に並べられている様々な魔法の道具に気がついた。


――これ、何だろ? なんだか不思議なものが一杯置いてあるな……


 美奈はその中の一つを手に取った。それは小さな皮袋で、袋を通して中身がぼんやりと赤く光っていた。興味をそそられた美奈は、その袋を開け、中を覗こうとした。

 すると、それを見たゾドバが慌てて注意した。

「あ、クルスミナ様、それは火吹き竜の炎袋でして……!」


「きゃーーーーーー!!!」


 袋の中を覗いた瞬間、そこから強烈な熱気が吹き上げてきた。美奈は悲鳴をあげ、思わず目を閉じた――





――「美奈、美奈ってば!」


 呼びかける声と共にゆさゆさと身体を揺り動かされ、美奈は目を開けた。すると、目の前には火の付いたアルコールランプと、その上でぽこぽこと沸騰する液体の入った試験管があった。


「あ、熱っ!」

 美奈はアルコールランプの熱気に気付いて思わず飛び起きた。傍らにいた友人――沙希が呆れた顔をした。

「アルコールランプの横で寝てれば、そりゃ熱いわよ……」

 美奈は辺りを見渡した。周囲では、生徒たちが和気藹々と化学の実験を進めていた。

「え? 何? 化学室!? さっきの桃は!?」

「……桃、って、寝ぼけてる?

 てか、どうして実験中に寝れるのか不思議だわ。いつの間にか寝てるんだもん」

 溜息を吐く沙希の横で、美奈は思わず天を仰いだ。

「あぅー、もう一個食べときゃよかったよー」

「夢の中の桃の話はいいから。ほら! 実験進めるよ!」

「はーい……」

 少し苛立った様子の沙希に促され、美奈は渋々ノートを開いて実験の様子を記し始めた。




――――――


 カンパレアの王都のはずれの小さな丘に、ひとつの神殿が新たに建造されていた。クリスティーナとヘモドロスは、転生の神を奉るために作られたその神殿の中を歩いていた。


 クリスティーナは真新しい神殿の中を見渡して、感嘆の溜息と共に呟いた。

「しかし、あの実験が成功したとはな……まさか本当に神が現れるとは……」

 その言葉を聞き、ヘモドロスが不思議そうに問いかけた。

「おや? クリス様もその場に居られたと伺っておりますが?」

「残念ながら、私は魔方陣に足を踏み入れた衝撃で気を失っておったのだ。誠に惜しいことをした」

 クリスティーナは悔しそうに下唇を噛んだ。あの日、彼女が目を覚ましたときには、すでに神が立ち去った後だったと聞かされていた。

 ふとヘモドロスが口を開いた。

「ところで、ここの神の名は何と仰られましたかな……?」

「確か、クルスミナという名前の神だったとか。私は初めて聞いた神だったが、どうやら転生の神らしいな」

 その名前を聞いて、ヘモドロスは少し考え込んだ。

「クルスミナ、聞き覚えがありますな……どこで聞いたのか……」

「ほう、その神の名を聞いたことがあるのか。さすが博識だな、ヘモドロス」

「いえ……」

 その名をどこで聞いたのか、ヘモドロスは懸命に思い出そうとした。そして、とある情景に辿り着いた。


 ――『クリス様じゃないってば! あたしは来須(クルス)! 来須美奈(クルスミナ)っていうの!』


 そう、それはあのオーガ討伐の旅の最中、取り乱したクリスティーナが発した言葉だった。それに気付いた瞬間、ヘモドロスは思わず声が出た。

「あああっ!!」

「ど、どうした?」

 突然大声を出したヘモドロスに、クリスティーナは驚いた。いぶかしげな表情をする彼女を気遣い、ヘモドロスは平静を装いながら問いかけた。

「…いえ、なんでもありませぬ……

 その、念のため確認しますが、神が現れたときクリス様は気を失っておられたのですな?」

「……そうだが?」

 それを聞き、ヘモドロスの額に冷や汗が流れた。

 ――これは、恐らく実験中に取り乱したクリスティーナの様子を見た魔道学者たちが、彼女に神が憑依したと勘違いしたのだろう、と直感した。

 真実に気付いたヘモドロスだったが、すでに建ってしまった立派な神殿を見渡し、それを心の内にしまうことにした。あとでレグルスにも口止めをしなくては……、と考えていたその時、神殿の奥から一人の男が近づいてきた。

「おお、クリス様」

 その男――ゾドバはクリスティーナの姿に気付き、声を掛けてきた。

「む、ゾドバか……?」

 ゾドバの姿を見て、クリスティーナは目を疑った。大きい目は相変わらずだったが、その顔の血色は良く、以前よりは少し逞しくなったような気がした。彼は神と会話したことで自らこの神殿の建造を王に進言し、さらにはその神殿を理想的なものとするべく毎日建造現場へ足を運んだという。その日々が彼をここまで変えたのだろう、と彼女は思った。

 ゾドバは口元にぎこちなく、けれど心からの笑みを浮かべてクリスティーナに言った。

「いや、先日の召喚は大成功でした。しかし、あれと同じ実験を何度か行ったのですが、うまくいかないのです。依り代として研究員たちを使っておるのですが、どうやら相性が悪いようで……」

「ほ、ほう……」

 その口調も以前とは異なり、はきはきと気力に満ちた物言いだった。クリスティーナは、以前とはまるで別人のようになったゾドバに驚いていた。ゾドバはなおも続けた。

「そこで提案なのですが、是非またクリス様に実験に参加して頂きたいと思いまして……」

 それを聞き、思わずヘモドロスが口を挟んだ。

「な、ならん! それはならんぞ、ゾドバ殿! クリス様はお忙しい身じゃ!!」

 クリスティーナは、突然激しい剣幕で怒鳴りだしたヘモドロスに驚いた。

「ど、どうしたのだヘモドロス。突然大きな声を出して……」

「クリス様、ぜっっっっったいにお受けになりませんように!! 絶対ですぞ!!!」

「わ、分かった分かった……。すまんなゾドバ、こういうわけだから私の参加は諦めてくれ」

 クリスティーナは苦笑いを浮かべ、ゾドバの誘いを断った。ゾドバはとても残念そうな表情をした。

 

 なお、兵士たちが王国中の畑を必死に捜索したものの、当然"ノーカー"なる人物は発見されなかったことは言うまでも無いだろう。



カンパレアで信仰されてる神々はローマ神話に準じています。


もちろん、クルスミナ神はローマ神話にはおりませんが。

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