↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
PR

鬼の角が生えてきたんだけど、それは角どころか、とんでもない代物であった。

作者: 孑孑(ぼうふら)
掲載日:2026/07/24

本書には、過激な身体部位の欠損・侵食表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。

―星の命を喰らい、絶望を糧に芽吹く結晶。

自らの意識が侵食され、恐怖と痛みに塗れながらも抗い続ける一人の物語。

崩壊していく理性の果てに待つのは、救済か、それとも完全なる破滅か――。

星の血脈を巡る、仄暗いファンタジーの開幕です。

暗闇のなか、額の皮膚を押し破って生えてきたのは、漆黒の結晶だった。

ただの角ではない。それは星の生命力《魔晄》を吸い上げて増殖する、寄生型クリスタルの幼体。

「……見つけたぞ、宿主よ」

脳内に直接響く冷たい声。触れたものを瞬時に魔晄へ還元するその角は、肉体だけでなく精神までをも侵食し始めていた。

額から生えた結晶は、脈動するたびに凄まじい激痛を脳髄へ送り込んできた。

肉が裂け、骨が軋む音が頭の中で木霊する。溢れ出た血は額を濡らす間もなく、結晶の根元へと吸い上げられ、輝く漆黒の粒子へと変質していった。

「くっ……あ、が……!」

膝をつき、必死に床へ爪を立てる。額の異物に触れようと手を伸ばしたが、指先が結晶の表面に近づくだけで、視界の端々が蒼白い光の粒子に分解されそうになった。触れれば、自らの腕すら瞬時に魔晄へと還元されて消滅する。その恐怖が腕を硬直させた。

『無駄だ。我は星の血を喰らい、お前の命を核として芽吹いた者』

脳に響く声は冷徹で、哀憫の欠片もない。

『お前の絶望も、恐怖も、すべては我が増殖するための上質な糧に過ぎぬ』

結晶から伸びる微細な結晶線(ルート)が、皮下組織を這い回り、頭蓋骨の隙間を通って脳の深部へと潜り込んでいく感覚があった。思考が少しずつ削り取られていく。大切な思い出、誰かの笑顔、自らの名――それらが急速に冷ややかな概念へと書き換えられていく。

視界が歪み、世界が蒼黒い魔晄の色に染まり始める。足元の床から、周囲の暗闇から、星の生命力が物理的な濁流となって額の結晶へと引き寄せられていくのが見えた。

「誰が……お前などに……!」

掠れた声を絞り出し、最後の理性を振り絞って立ち上がる。だが、意識の奥底で、冷酷な声が嘲笑うかのように囁き続けていた。

『抗え。抗うほどに星の力は巡り、我が侵食は加速する。さあ、見せてみろ――お前が完全に我という結晶の器となるまでの、醜い悪あがきを』

本作をお読みいただき、ありがとうございます。

本作は、『FINAL FANTASY VII』の世界観に漂う「魔晄」という魅惑的かつ不穏な概念をベースに、「肉体と精神の不可逆な侵食」という寄生ホラーの要素を掛け合わせて執筆したダークファンタジーです。

額を破って生える漆黒の結晶、触れたものを還元する圧倒的な脅威、そして脳内へ直接潜り込んでくる冷酷な対話者――絶望的な激痛と侵食の中で、主人公がなお抗おうとする人間の執念と尊厳を描くことに注力しました。

この後、主人公が侵食に呑み込まれて異形と化すのか、あるいは絶望の渦中で己の意志を糧に力を従えるのか。物語の行く末を想像しながら楽しんでいただければ幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。