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紅時雨と砂の味  作者: 來夢
第二章:壊される魂と、偽りの家族

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第8話:黒幕の算段

NEXUS要塞の中層区画。朔夜たちがNEXUSの精鋭部隊や警備ドローンを蹴散らしながら前進する中、最深部の管制室では、浅葱と歪が「盤面」の最終調整に入っていた。


「浅葱様。第一、第二防衛ラインを突破されました。彼らの戦闘効率は予想を15%上回っています。特に桜猟の成長速度……母の打った刀とのシンクロ率が異常です」


歪は淡々と報告を続けながら、ホログラムディスプレイ上に妖刀『紅時雨』の解析データを展開した。そこには、刀から放たれる未知のエネルギー波形が、朔夜の脳波を侵食していく様子が克明に記録されている。


「それでいい、歪。……あの刀は、主の精神を削りながら真価を発揮する。朔夜が疲弊すればするほど、紅時雨はその輝きを増すんだ。私が手に入れるのは、使い古された鉄屑ではなく、絶望によって研ぎ澄まされた『完成形』でなければならないからね」


浅葱の目は、狂気を孕んだ熱を帯びていた。彼の目的は、単に御門家を滅ぼすことではない。


「御門を傘下に収め、その血脈が守り続けてきた武力と象徴を我が物とする。……そのためには、彼らの心を徹底的に折らなければならない。誇りも、愛も、希望もすべて。……ろみなを奪ったのは、そのための最も効率的な手順に過ぎないよ」


「合理的です。『ろみな』という個体の喪失、および敵対化による精神的衝撃……。これこそが、御門朔夜の自我を崩壊させ、紅時雨の封印を完全に解く鍵となります」


歪がキーを叩くと、モニターに実験室の映像が映し出された。そこには、数多の管に繋がれ、瞳から光を失ったろみなが、深い眠りについていた。彼女の脳内データは、すでに要塞のメインサーバーへと吸い上げられ、浅葱の私設軍隊であるアンドロイドたちへと転送され続けている。


「……浅葱様。御門朔夜を完全に無力化した後は?」


「決まっているだろう。彼が守りたかった子供たちの目の前で、私が紅時雨を抜き放つのさ。彼らが信じてきた歴史が、私という新たな主によって塗り替えられる瞬間。……それこそが、私の渇望した景色だ」


浅葱にとって、ろみなの命や家族の絆など、紅時雨を手に入れるための「触媒」でしかなかった。彼は御門というブランドを自らのコレクションに加え、その力で世界の裏側を支配する帝王として君臨することを夢見ていた。


「まもなく、彼らは第9区画に到達します」


歪の指が、最後のアンドロイド軍団を起動させるコマンドの上に置かれた。


「ふふ……。ようこそ、地獄の品評会へ。……さあ、歪。『彼女』たちに、盛大な歓迎をさせなさい」


浅葱が指示を下した瞬間、通路の照明が一斉に赤く染まり、けたたましい警告音が要塞全体に鳴り響いた。 それは、最愛の妻の技術を模倣した、血の通わない鋼鉄の軍勢が解き放たれる合図だった。

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