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紅時雨と砂の味  作者: 來夢
第二章:壊される魂と、偽りの家族

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第9話:鋼鉄の残影

NEXUS要塞の第9区画。直径五十メートルを超える円形広場は、今や火花と硝煙が渦巻く殺戮の場と化していた。


三人を包囲するのは、黒いセラミック装甲を纏った二十体以上のアンドロイド。それらは一様に、十字型の赤い電子眼(モノアイ)を無機質に明滅させ、静止したまま次の命令を待っていた。


「……父ちゃん、こいつら、さっきのドローンとは訳が違う……」


桜猟が『朝梅』と『夜桜』を構え直し、荒い息を吐く。


「ああ。……一体一体が、一流の剣士に匹敵する間合いの取り方をしてやがる。気を引き締めろ」


朔夜の言葉が終わるか終わらないかのうちに、一体のアンドロイドが爆発的な踏み込みを見せた。


ドォォォォン!


鋼鉄の床が踏み抜かれ、一筋の黒い影が桜猟の視界を横切る。


「速っ……!?」


桜猟は反射的に刀を交差させたが、激突の瞬間、全身の骨が軋むような衝撃に襲われた。アンドロイドが振るう特殊合金の太刀。それは、ろみなが打つ刀の鋭さと、機械特有の圧倒的な質量を併せ持っていた。


「くっ……重か……っ!」


桜猟が押し戻される。そこへ、別の二体が左右から同時に襲いかかった。一人が低い姿勢から足を払い、もう一人が空中で身体を捻りながら、脳天を割り振る斬撃を放つ。


「桜猟、下がってろ!」


蹴鞠が壁を蹴り、弾丸のような速度で割って入る。彼女の鋭い回し蹴りがアンドロイドの側頭部に直撃したが、手応えは最悪だった。


「嘘……!? 直撃したとに、首一つ揺れん……っ!」


アンドロイドは表情一つ変えず、空中でバランスを崩した蹴鞠の首筋に、冷徹な手刀を突き出した。


「しまっ……!」


絶体絶命の瞬間、朔夜の『紅時雨』が赤い閃光を放ち、アンドロイドの腕を肘から先まで斬り飛ばした。


「蹴鞠、深追いするな! こいつら、俺たちの動きを完全に予測してやがる!」


三人は広場の中央で背中を合わせる。周囲のアンドロイドたちは、損傷した個体を後方に下げ、新たな個体が隙間なくその位置を埋める。その無機質で合理的な連携は、もはや恐怖を通り越して不気味ですらあった。


「……個体の戦闘効率、維持。第5フェーズへ移行」


加工された合成音声が室内に響く。直後、アンドロイドたちが一斉に刀を構え直した。その構え——切っ先を僅かに下げ、右足を半歩引いた独特のフォームに、朔夜の心臓が激しく脈打った。


(……この構えは、まさか……)


休む間もなく、第二波が押し寄せる。今度は連携の精度がさらに跳ね上がっていた。三位一体の攻撃。一人が囮となり、二人が視角の外から死神の鎌のような鋭さで斬り込んでくる。桜猟の頬を刃がかすめ、蹴鞠の衣装が切り裂かれる。


「クソッ、きりがなかバイ……っ! 叩いても、斬っても、すぐに次が来るっちゃん!」


桜猟が叫ぶ。朔夜は、口の中に広がる「砂の味」に耐えながら、紅時雨から漏れ出す赤い霧を全身に纏わせた。白濁する視界の向こうで、アンドロイドたちの赤い電子眼が、まるで自分たちを嘲笑うかのように整然と並んでいる。


一体、また一体と斬り伏せるたびに、朔夜の胸に広がるのは、勝利への手応えではなく、底知れぬ「違和感」だった。

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