第54章:国井そろばん塾(9)
・・・まぁ、前章のようなことは、
その後はいっさい、起こりませんでした。
例の「カレ」も、ニ度とそろばん塾エリアには姿を見せなかったので、ぼくも、そんなくだらないことは忘れてしまいました。
アレは、もちろん、いきなりケンカふっかけたぼくが一方的に悪かったんですけどね(笑)。
・・・髪の毛がちょっと「巻き毛」で、実にイヤミな野郎でした。
「ハンサム」からは程遠い、そばかすだらけでブサイクでスカした、面長の、にくったらしい面構え。
きっと皆さんだって、あんな不愉快なヤツとは友達にはなれなかったと思いますよ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
そろばんの授業・・・というのか、「ノルマ」は、本当に苦痛でいやなものでしたが、
塾が始まる前の時間や、ノルマのあと・・・そして、塾がやってない日の平日の放課後、美絵子ちゃんと下校時に仲良く別れてからの、広場や、そろばん塾周辺での夕方のひととき。
・・・実に楽しくて、味わい深いものがありました。
当時の広場の風景も、ありありと・・・鮮明に脳内に記録されてます。
広場に入ると、正面には、いまもある木幡西公民館でしょ。
そんで、右手に滝本さんち。
左手には、滝本さんの長男さんの土建関係の資材置き場。
裏には、篠が生い茂る藪。
道路側には、いまはない、ゴミステーション。
公民館のすぐ手前には、プレハブのそろばん塾。
公民館の裏手にも、篠の藪があって、金網のフェンスの向こうには、小さな川が。
そのあたりからは、美絵子ちゃんが暮らしていた、山口セツさんの家の裏の様子も見えました。
田んぼがあって、畑もあって・・・。
菅谷なおき君や遠藤君、田中ゆりこさんの家の裏側も見えましたね。
線路の土手。
毛の短い、両耳の垂れた大きな黒い洋犬飼ってた、いまは取り壊されてなくなった老夫婦の藤長さんち・・・令和のいま、もうとっくにいないですけど。
そろばん塾生が、誰もいなくなった夕闇の中・・・
藤長さんのおじいちゃんといっしょに、彼の家の前で「焚き火」しながら、ゆらゆらとゆらめく炎を、無言で、そろってぼんやりと眺めていたこともありましたっけね。
そばには、例の黒い犬が座っていて、
軍手はめたおじいちゃんが犬の頭をなでると、焚き火の熱であっためられたせいか、
軍手にしみついた、おじいちゃんの体臭と、
こうばしい「犬のにおい」がいりまじって、あたりに広がりました。
・・・そこから100mほど向こうでは、
美絵子ちゃんが、セツさんの家の中で、リアルタイムで過ごしています。
ヨネちゃんの駄菓子屋、チイちゃんち・・・。
そうそう。
大越かっさんのゲーセンもありました。
なつかしくって、たまんないですよ。
最後に、
『神山文房具店』のエピソードで、
この『美絵子メモ・パート3』をシメたいと思います。
m(_ _)m




