第53章:国井そろばん塾(8):ちょっとはずかしいハナシ
・・・ぼくにはですね、
この木幡のそろばん塾の広場で、ひとつ、個人的に
『忘れられない、はずかしい思い出』というものがございます。
あれはたしか・・・
美絵子ちゃんと知り合って間もない、1980年の春ごろでしたかね。
広場で遊んでいたときにね、
見知らぬ児童・・・たぶん、よその小学校の子だったと思うんですが、
ぼくと同世代っぽい、見た目がちょっと生意気な感じの男子児童がひとり、
ふらりと、ぼくたちの広場に入ってきました。
どこか「スカした」印象の、人を小ばかにしたような表情と立ちふるまい、動き、態度。
・・・1学年あたり、ひとクラスしかない、児童の数がよその小学校よりもずっと少なかった川崎小学校に、こんな野郎は存在していませんでした。
たぶん、矢板東小学校か、矢板小学校あたりの学区から、何か親戚にでも用事があって来ていたんでしょうね。
(・・・なんだ、コイツ? ナマイキな。ちょっと因縁つけてやっか。)
温厚で、自分からケンカをしかけることなんてなかったぼくでしたが・・・
この日は、このスカした野郎が、なぜかむしょうにムカツイて、
彼に因縁・・・いいがかりをつけました。
「おい、テメー、どこから来たんだ?」
「なんだキミは、失礼な。どこからだってかまわないだろう。なにか、ぼくがここにいて、不都合なことでもあるのかい・・・?」
「なんだと? テメー・・・名前は?」
「キミのような無作法ものに名乗る名前なんてないね。」
・・・やけに落ち着いた態度と「正論」に、
ちょっとひるんだぼくでしたが、
周りをちらっと見てみると、
下級生の女の子たちが、コトのなりゆきを遠巻きに見守っています。
・・・ヒソヒソと、なにかささやきあいながら。
「・・・うるせえ! この野郎、ここから出て行け! ヨソモノめ!!」
ぼくは、彼のシャツの胸ぐらをひっつかんで、顔面にパンチをくらわしてやろうとしました。
・・・が!
逆に、カウンターパンチを浴びて、その場に叩きのめされ、
「うっ・・・ちっ、ちくしょう・・・おぼえてろよ・・・。」
と半べそをかき、情けない捨てゼリフを吐きながら、
ヨロヨロと広場をあとにしました。
「・・・なぁ、キミ。ケンカを売るのはいいけどさ、次回からは、ちゃんと相手を見極めてから売ることだね、ボーヤ。はははは!」
・・・いやぁ、カッコ悪かったですよ(苦笑)。
こっちからケンカふっかけておいて、
見事に「返り討ち」にあって、「説教」までされちゃうとはね・・・。
こんなハナシ、
恥ずかしくって、とてもじゃないが、美絵子ちゃんには言えなかったですよ、ええ。
でも、いまではそれも、
少年時代の「なつかしく、いい思い出」ですね♪
m(_ _)m




