第41章:理容店の次男・・・菅谷なおき君(3)
これは、
「けっして触れてはいけない領域」なのかもしれない。
・・・なおき君のご自宅へあがったことはない。
が・・・
理容店のいちばん東側のうす暗い畳の和室を、彼が案内してくれたことがあった。
その部屋では、いまでいうところの「重度の知的障害者」の女の子が、ひとり、木枠の囲いの中に。
おままごとの道具や、
エンビ製の、子供用のジョーロなんかの、
いろいろなおもちゃ類が、
その囲いの中に、散乱していた。
・・・なおき君の説明によると、親戚のひとりだそうだ。
動きといい表情といい、
ひと目で「ソレ」とわかる・・・そんな様子・たたずまいであった。
ぼくたちを木枠の囲いの中から、
さらに部屋のガラスごしに見てはいるが・・・どこか「焦点」が定まっていないような、そんな印象だった。
なおき君よりも、少し年上に見えた。
「囲い」とは書いたが、
ぼくには少女が、実質、『座敷牢』に閉じ込められているように感じられた。
赤ちゃんのゆりかごを囲うような、あの木の格子のようなものだった。
・・・けっしてそのようなことはなかったのだが、
保護者の目が届かない時間帯に、彼女が勝手に部屋から抜け出して、怪我や行方不明や事故に遭わないようにするための、
やむをえない措置だったのだと思う。
なおき君に、このエピソードを書いていいのかは・・・
許可をもらっていないので、
「お叱り」が来るようなら改稿します。
m(_ _)m
追伸:
その少女には、2・3回会いました。
座敷には入らなかったけど。
・・・もちろん、
会話は成り立たなかったですけどね。
元気でいてほしいと思います。
そのうす暗い部屋のそとのコンクリート部分には、洗濯機が設置してあったせいか、
いつもそこらへんのエリアに近づくと・・・
強い洗剤の香りがたちこめていて、
それが、ツンと鼻を突く感じでしたね。
このお話も、
美絵子ちゃんは知らなかっただろうね・・・。




