第13章:大越かっさんのゲーセン(7)
・・・店内は、うす暗かった。
足元に何かが落ちていても、つまずくほどではなかったが・・・とにかく暗い店内だった。
・・・当然であろう。
アーケードのビデオ・ゲームをプレイするお店なんだから(笑)。
客層は・・・そうねぇ。
オトナはあまりいなくて、
中学生とか、川崎小学校のOBの先輩なんかが多かったかな。
そして、ぼくのように、好奇心が旺盛な、現役の川崎小学校の、高学年の児童。
・・・ちなみに、
女子については、ただの一度も、店内で見かけたことはない。
すべて、むさくるしいオトコばっかしだった。
でも、かっさんがよーーくと客の動きを監視していたせいもあって、
客どうしの「ケンカ」も「こぜりあい」も、ぼくは見たことはない。
タバコを吸う者もいたが、
換気機能がよかったせいか、ノドがもともと弱いぼくでも、むせるほどではなかった。
両替機のそばに、半裸で、パンストの、無名の日本女優なんかのポスターが貼ってあったりして、
どこか、ぼくがどこぞで見た・・・
「オトナのおもちゃ店」に似ている雰囲気はあった。
温厚な店主・・・かっさんではあったが、
聞いたウワサによれば・・・
「けっして、カレに言ってはいけない、タブー」が、ここには存在していた。
店舗の1階部分のほとんどが、
ゲーム・コーナーではあったが、
その奥には、4畳ほどの畳の和室が見えていた。
そして、その2階エリアはというと・・・
数々の「エロい写真」や、
海外の北欧あたりの、バキバキの「洋物ポルノ雑誌」や、「オトナのおもちゃ」「誰かのセーラー服」「マネキン」「女性の下着」なんかであふれかえっていた・・・らしい。
おそらくは、
かっさんを、おもしろおかしくイジろうとした、冗談や、悪ふざけのつもりの、
単なる「フカシ話」だったのだろうが、
ソレをされると、かっさんが烈火のごとく怒り出して、別人になったように、怒鳴りちらす・・・
こんな、「ちょっと怖いウワサ」も、
ぼくたちの間では、ひそかに・・・しかし、真剣な表情で、まことしやかに、ささやかれていたものだ。
・・・おりしも、そのころ、
日本の小学生の間では、
空前の『口裂け女』ブームだったからなぁ・・・。
ちょっとした、
「都市伝説」みたいなものだったのだろう。
・・・美絵子ちゃん。
ご近所だった君は、
そんな不気味なウワサ話・・・聞いたことはなかったか~い??




