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クモラの冒険~この腹ペコ幼女が魔王だって!?~  作者: 荒月仰
最終章 墜ち往く陽、真なる勇気に向かいて
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聖魔剣カン・コルディア

 俺たちは再び互いを結び付けて一つの存在となった。

 煌めくような白い鎧を纏った漆黒の影。体格も普段とは違っていた。蜥蜴のようにずんぐりとしていた体もシュッとして、尾もなくなっていた。漆黒に塗られた聖騎士のようだった。


 凄まじい魔力が迸った。

 アルバートを含むその場の全員が、あまりの勢いにのけぞりそうになった。


 俺たちは感じていた。互いの力も、心も、完全に同調していることが。

 力が溢れてくる。万能感に満ち溢れてくる。何でもできる気がする。


【今こそ決着を付けようぜ、アルバート!】


 力強く宣言して、右手に刺々しいデザインの黒い剣を生み出す。


「あ、あれって……魔剣マールム!?」

「ま、間違いない!魔王モラクレスが使っとった剣や!」


 ハンナとアレクスが仰天して言った。


 俺たちは鋭く駆け出して、魔剣を振るう。勇者はそれを聖剣ではじき返すが、さきほどまでの余裕はなかった。両者の実力は完全に拮抗したように見えた。


【うりゃああああああっ!】

「うおおおおおおおおっ!」


 目まぐるしい速度で、互いに動き回って剣を振り回す。剣戟の激しい音が鳴り響き、火花が散る。俺たちのぶつかり合う衝撃のあまりの激しさに、みな固唾を飲んで見守るしかない。


 魔剣の切っ先が、勇者の体を掠めた。

 奴はそれを受け流したが、いよいよ押され始めていることに気が付くと、キッと表情を引き締める。


「……いいだろう!もはや温存など考えぬ!パワー最大出力だ!」


 驚くべきことに、勇者の纏う神々しい気が更に増した。

 だが俺たちは少しも慌てちゃいなかった。激しい戦闘の最中(さなか)でも、明鏡止水の心持ちだった。


 勇者が放たれた弾丸のように突撃してくる。

 俺たちは魔剣でそれを受け止める。そこからまたしても壮絶な攻防が繰り返されたが、勇者の強力な斬撃を受けた時にパキンと嫌な音がした。


 見れば、魔剣にひびが入っていた。

 それを見た勇者は間髪入れずに強烈な追撃をお見舞いする。魔剣は真っ二つに折れて、その勢いで俺たちは吹き飛ばされてしまった。




「……まずいな、魔剣が折れちまった」

「魔剣を失った以上、勇者の聖剣に対抗する術はないぞ……どうするつもりだ?」


 シューザとハインリヒが慌てたような様子を見せる。


 ふたりだけではない。全員がもはやこれまでかと、諦めかけた表情に変わっていた。

 まったく違う心境なのは、俺たちだけだった。欠片も絶望しちゃいなかった。たしかに魔剣は折られてしまったが、まだ打つ手は残されている。とっておきの手が。


 俺たちはすばやく起き上がると距離を取り、右手に再び剣を生み出す。

 この場の全員が驚きに目を丸くしていたことだろう。なにせ俺たちが生み出したのはさきほどの魔剣ではなかった。そして勇者の聖剣とも違う。というか、その辺の武器屋で売られていそうな何の変哲もない普通の剣だった。おまけに半透明で実体がない。


 当然だった。

 この剣は他でもない、夢魔法によって生み出したものなのだから。


「なんだその剣は……?何のつもりだ……?」


 勇者は当然の疑問をぶつけてくる。

 俺は委縮も気後れもなしに、堂々と言い放つ。


【無敵の剣だよ。絶対無敗の最強の剣だ】

「無敵の剣だと?それがか?」

【そうさ。俺は弱くてダサい自分が嫌だった。ガキの頃はよくおもちゃの剣を振り回して、夢に描いていたのさ。アンタのようなカッコイイ勇者になって、無敵の剣で悪い奴らをこらしめていくような夢をな】

「ふざけるのもたいがいにしろ!たかが夢の産物で、いったい何ができると言うのだ!」


 勇者は激昂する。

 けれども俺たちは少しもふざけてなんかいない。


【見せてやるよアルバート。光と闇が合わさった時、無限の力が生まれる。そこに不可能なんかねえ!できないことなんかねえ!俺は夢を……現実のものにしてみせる!】


 夢のつるぎを携えて、俺たちは駆け出した。

 一気に魔力を剣に集約させる。


(いくぞクモラ!)

(うん!)


 途端に、夢のつるぎが実体を帯びていった。

 そして白と黒の光に満ちていく。神々しさと禍々しさを兼ね備えた外見と迫力に変わる。


 これは聖剣でもなければ、魔剣でもない。


 創造魔法:”聖魔剣カン・コルディア”――!


 白黒の剣を携えて、俺たちは立ち向かう。

 勇者は信じられないといった形相で、聖剣を構え直した。


「バカな……!こ、こんなことが……!」


 あの勇者が、初めて動揺した表情を見せていた。

 俺たちが振るう聖魔剣をなんとか受け止めるも、既にペースを乱されていた。


 見ただけで分かってしまったのだろう。この剣が聖剣をも魔剣をも超える、すさまじい力に溢れていたことが。

 そして世界のどこにも存在しない剣であった。当然だ、これは俺の夢の具現化なのだから。今まで創造魔法で作り出せていたのは実際に見たことがあるもの、つまり現実に存在するものに限られていた(インヴィディアの体に関してはクモラのイメージだが、実態は人形というありふれたものだ)。


 俺たちはこの時、実在しないものを生み出すという、神の御業にも似たことをやってのけたのだ。


 聖なる魔剣を振るい、勇者をどんどんと追い詰めていく。勇者は鋭く後退するも、体勢を崩して隙を晒した。それを見て俺たちは一気呵成に駆け出す。


((いっけえーーーー!!))


 ――夢を現実に!


 聖剣ユースティティアは、豪快に叩き折られて、刀身が撥ね飛んだ。


「聖剣が……!これはいけるで!」

「いっちゃえーー!アンタたちーー!」


 アレクスとハンナがはしゃいでいる。


 勇者は聖剣を破壊されたことに驚きつつも、追撃されぬように距離を取る。

 しかし俺たちもすかさず追い縋った。


「くっ、おのれ、光と闇の調和した力……まさかこれほどとは!」


 言いながら、勇者は神聖魔法で防御壁を展開する。

 だが何の意味もなさない。光だけの力で、光と闇の合わさった無限の力にかなうものか。


 聖なる魔剣から放たれた特大の一撃が、勇者を防御壁ごと叩き斬った!


「ぐああああああ!」


 アルバートが叫ぶ。

 まだ終わりではない。俺たちは剣を消滅させると、右手にありったけの魔力を込めて、アルバートの体に叩き込んだ。


 闇魔法:”破戒”――!

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