表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クモラの冒険~この腹ペコ幼女が魔王だって!?~  作者: 荒月仰
第3章 肥沃なる死地、救恤の平野
25/97

魔力系統について

 やがて夜が来た。

 河べりで焚き火を囲みながら、アレクスは先ほど言っていた魔力系統とやらの講義を開始する。


「ほーい、そいじゃ始めよか」

「で、魔力系統ってのはそもそもなんなんだよ?それは火属性が得意とか水属性が得意とか、そういうのとは違う話なのか?」


 ちなみに六属性の内どの属性が向いているかは生まれつき決まっているらしい。これは魔法を扱う才能とは別なので、例えば体質的に火属性が向いているからといって火属性の魔法が得意になるとは限らない。


「いや、属性とかそういう話やないな」

「簡単に言うとね、魔力系統ってのは”魔力をどう扱うのが得意か?”っていう話なのよ」


 アレクスとハンナ、分かっている側が講義を続けていく。


「魔力系統には大きく分けて四系統が存在する。戦士系、武闘家系、魔法使い系、神官系の四系統や。さらに戦士系と武闘家系は前衛系、魔法使い系と神官系は後衛系なんてまとめて呼ばれたりもする。前衛後衛の意味は分かるか?」

「ああ、前衛は戦闘の場で前に出て敵と直接対峙する役回り、後衛は後ろの方から前衛のサポートをしたり敵を妨害したりする役回りだろ?」

「せやせや」

「これはあれか?魔力が重要か否かの違いなのか?」

「いや、違うな。ステッドもクモラも誤解しとるかもしれんが、前衛職とて魔力は重要なんやで?」


 へ?そうなの?

 戦士や武闘家ってのは魔力がたいしたことない代わりに鍛え上げた肉体で戦うような、そういうイメージだったんだが……


「なんかこう、魔法の才能無い奴が前衛をやるイメージだったからさ」

「まあ、あんさんの認識も完全に間違っとるわけやない。魔力系統と魔力を扱う才能は別モンやさかい、魔力を扱う才能はないが何か戦闘職に就きたいとなるとやっぱり体一つで頑張れる前衛職になってしまうからな。けど戦士だろうが武闘家だろうが、極めるとなると最終的には魔力が重要になってくるんや」

「魔力系統ってのは、その魔力にも向き不向きの個性があるってことなのよ」

「さっき魔力系統には前衛系と後衛系があると言ったが、その二つを分ける点は何か?それはずばり魔力を、”自分の体の中”で扱うのが得意か、”自分の体の外”で扱うのが得意かの違いなんや」


 相変わらずアレクスは話すのが上手いな。ハンナのフォローもナイスだ。

 バカな俺でも理解ができてきた。


「なんか分かって来たぞ。魔力を自分の中で使うのが得意なのが前衛系、自分の外で使うのが得意なのが後衛系ってコトだな?こういった魔力の個性ってモンが生まれつき決まっていると」

「そういうことやな。前衛職は魔力を身体強化に使い、後衛職は魔力を使って不可思議な現象を起こしとるワケや。後者がいわゆる狭義の魔法やな」

「こういう魔力の向き不向きを考慮した上で、どういった職に就くかを決めていくのよ。戦わない仕事なら深く考える必要なんてないんだけど、戦うとなるとやっぱり自分がどんな魔力系統なのかは把握しておいた方がいいからね」

「な、なるほどなー」

「ちなみに同じ前衛後衛でも、さらにその中で分かれる。前衛職だと、戦士も武闘家も魔力を自分の中で扱うのが得意という点では一致しとるが、体力や耐久力といった防御方面の強化が得意なんが戦士系、筋力や瞬発力といった攻撃方面の強化が得意なんが武闘家系になる」

「後衛職も似たようなものよ。魔力を自分の外で扱うのが得意ってのは同じだけど、他者に害を及ぼす現象を発生させるのが得意なら魔法使い系、他者に益をもたらす現象を発生させるのが得意なら神官系になるわ。あ、言うまでもなく私は神官系だからね?益をもたらす側なの!」


 玉潰しかけてきた奴がなんか言ってるぞ。


「はえー、勉強になるな。みんなこういう自分の特性を理解した上で職を選んでいたんだな」


 俺も魔王の力が扱えるようになる以前は、なんらかの魔力系統だったのだろうか?

 いや、いずれにしても魔力を扱う才能自体がなさそうだからダメだろうな……


 と、ここで俺はこのような話を聞くことになったきっかけを思い出し、疑問を呈する。


「あれ?そういや盗賊ってのはどういう立ち位置になるんだ?」

「盗賊がいったいどんな戦い方をするのか、そういう話やったな。さきほど説明した四つが魔力系統の基本類型なんやが、それ以外にも系統は存在する。その代表的なものが盗賊系なんやが、コイツは立ち位置的には前衛と後衛の中間にあたるんや」

「あ!だからさっき武闘家っぽい戦いも、魔法使いっぽい戦いもできるって言ったんだな!」

「そういうことやで。盗賊系の魔力系統はな、魔力を自分の体の中で扱うんも体の外で扱うんも、どっちも程々にできるんやな」

「あくまで程々止まりなのよね。どっちもできる反面、極めるとなるとやっぱり正真正銘の前衛系や後衛系には及ばないわ」

「良く言えば臨機応変、悪く言えば中途半端な魔力系統や。よく器用貧乏と揶揄されるが、ステッド、こういったタイプは何が脅威になるか分かるか?」


 俺は顎先に手を当てて、うーんと考える。

 ぱっと浮かぶ長所がないってコトだよな?


「何で攻めて来るか分からねえ、とかか?」

「その通りやで」


 アレクスがにんまりと笑った。


「得意不得意がはっきりしとる魔力系統はどういったことをしてくるかが読みやすい!反面、こういった中途半端なタイプは読めないことが強みになってくるんや。そしてこういう特性はな、卑怯でずるがしこい奴の方が扱うのが上手いんや。せやから盗賊系なんて不名誉な名が付いとるんやで」

「す、するってえと、シューザって奴も肉弾戦と魔法、どちらもお得意ということで?」

「せやな、中途半端とは言ったが相手が大盗賊シューザともなると話が変わってくる。アイツが見劣りするんは、それこそ勇者パーティ三強のようなヤバすぎる連中と比較した時ぐらいや。肉弾戦なら並みの戦士や武闘家では一瞬でのされてまうし、魔法も並みの魔法使いや神官では足元にも及ばん」

「勇者と三強以外だと、間違いなく一番強い奴ね」


 俺は緊張感を覚え、ごくりと生唾を飲み込んだ。

 既に警告されていることだが、やはり油断のならない相手なのだ。


「シューザは風属性の魔法を得意としとる。風魔法による身体強化、後は花魔法による妨害工作とかやな」

「花魔法?なんすかそのお洒落な魔法は?」

「あんさんも分かっとることかと思うが、この世界に存在する属性は六つやが魔法が六種類しかないわけやない。花魔法は風魔法の派生や。つまりどっちも風属性の魔法なんやな」


 そういや、俺もハンナとの戦いで、闇属性の派生魔法である夢魔法を使ったな。それと同じようなものか。


「色んな植物を生やして敵の動きを封じたり、状態異常にしたりしよる。妨害や攪乱に特化した魔法や。シューザはこの魔法が得意でな、金品持ってズラかる時によくこの魔法で追手の足止めをしていたらしい。おかげでアイツはただの一度も捕まったことがなく、大盗賊の名を欲しいままにしたんや」

「風魔法、そして花魔法か……うーん、コイツは強敵そうだぞ……」


 次なる相手との死闘を予想し身構える俺に、アレクスがポンと手を添える。


「まあそれでも、ステッドとクモラならなんとかやれると思うで?やはり魔王の力は伊達なモンやないし、おまけにワイらには太極という秘密兵器があるからな」

「そ、そうだな……!」


 太極……相反する同士が入り混じることで爆発的な力が生まれる現象。

 これを上手く扱えればきっとシューザにも勝てるだろうか?三強にも、そして勇者にも。


「あれ?そういや魔力系統の話に戻るんだがよ、勇者ってのはどういう分類になるんだ?」

「勇者か……アレは特別やな、なんせ神に選ばれた存在やさかい。一言でいえば完璧や。魔力を内で使うも外で使うもどちらも最高レベル。文字通りの規格外やな」

「や、やっぱそういうかんじなのか。そいじゃ魔王は?」

「魔王も似たようなモンやろ。せやからあんさんは七大罪の化身をすべて解放して、魔王の力を完全復活させなあかん。それができて初めて勇者と同じ土俵に立てるんや」

「ふんふん。それじゃあさ、商人は?」

「アホ!商人に魔力なんて関係あるかい!単なる商売人やぞ?」


 ちょっと知的好奇心が刺激されて、色々と聞きすぎてしまったようだ。

 ふと横を見れば、クモラが俺の方に寄りかかって寝息を立て始めている。道理で心地よい重みを感じたわけだ。


 見上げれば月も高く、夜は更けていた。

 ハンナがパンっと、手を叩く。


「はい、話も終わったわ、もう寝ましょ?私もう眠くなってきちゃったわ」

「せやな。ステッド、明日に備えて今日は休もうで」

「ああ、そうだな」


 俺はクモラを寝床に運んでから、自分も夢の淵へと漕ぎ出していった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ