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一話 新たな女王は涙を流す。

3章が始まりました!3章から鬱要素を入れて行くつもりです。



「やぁ、待っていたよ。キミのことを。今日もゆっくりとおやすみ。明日は長い日になるから……ね」


 ふんわりと風が頰を撫でる。周りに生えた木々がざわめき、花々は太陽を目指すように、力強く咲いている。

 ヴィオレットの囁くような声が、心地よい。

 私はヴィオレットの手を掴みながら、起き上がった。


「――ヴィオレットは、ラウゼを苦しめたいのかい?」


 別に言うつもりもなかった言葉が、喉の奥から出た。

 私は冷静になろうと、大きく息をついた。そうしないと、罵倒しそうだからだ。

 ラウゼは目を細めて柔らかく微笑んだ。


「私は誰かを苦しめたいわけではない。でも、私は私の国を強くするために手段は選ばない――とだけは言っておくね」

「……王様の暗殺も、グリーズが死んだのも、キミのせいなのかい?」

「うん。そうだよ?」


 ヴィオレットはあっけらかんと言った。そう言いながら、クッキーのお皿を食べてとばかりにこちらに押し付けるので、私は一つだけ口に入れた。


「王様は会談時に暗殺、グリーズ君は魔力暴走薬を摂取させて暴走させた。そして今日は特別な日。シロからクロの世界に変える、最初の日」


 相変わらずの、ヴィオレット語が発動した。こうなってしまうと何を言っているかは分からない。

 けれど、どこか不穏な雰囲気を感じた。

 にこにこと微笑むヴィオレットが、少し怖く感じた。


「なんで、キミは私に優しくするんだい?」

「――――そう。知りたいのね。強いて言えば、私はキミと特別な関係だから……かな。

 私はキミとの関係を詳しく言えない。言ったらキミは困るから。私からは、言わないよ。キミが探してね。私とキミの関係を」


 ヴィオレットふふ、と笑った。私は眉を顰めた。


「キミ、色んなものを探させたがるよねぇ」

「うん。それが、彼との約束だから」

「……彼?」


 私が聞き返すが、ヴィオレットは知らん顔。答える気はないらしい。王様なだけあって誤魔化しが上手い。

 情報を得ようと話をするも、ひらりひらりとかわされて、何も得ることが出来なかった。


 そろそろ目が覚める時間になった時、最後にヴィオレットはそっと耳打ちをしてきた。


「……いいかな?今から言うことを、起きてすぐにして。約束だよ?」

「え……?何だい?」

「まず、キミは一度、大きく深呼吸をしてね。そうしてから空間魔法は大好きだと唱える。それだけでいい。ね?簡単でしょ?」


 簡単かどうかなんて、聞いてないし、まず何のためのものなのかも聞いていない。何のこと、と聞こうとするが、意識がどんどんと遠くなっていく。


「いい?絶対だよ?そうじゃないと……キミ……は……」


 ヴィオレットの説明している声は、最後まで聞くことができず、気がついたら自分の部屋で目を覚ましていた。



「えっと……なんだっけ?深呼吸?」


 私は素直に大きく深呼吸をした。そうしてから、ヴィオレットの言う通り、唱えた。


「空間魔法が好きだ…………って、何してるんだか。バカみたいだよぉ……」


 あまりにもバカみたいだったので、私は頭を抱えた。ラウゼに聞かれたかもしれない。だとしたら恥ずかしい。

 私はそっとラウゼのベッドを覗き込んだ。


「………………は?」


 槍や荷物を残して、空のベッド。いつもの寝相の悪いプラチナブロンドの髪の少女はいない。


「ラウゼっ!どこにいるんだいっ!」


 幾ら叫んでも、しんと静まり返っている。

 もしかして、もう出発した?こんな早朝に?……いや、それはない。荷物が全て置きっぱなしなんてことはないに決まってる。

 でも、もしかしたら、荷物を置いて行った可能性も――!


「ラウゼっ!」


 私は部屋を飛び出した。ドアと壁がぶつかり、大きな音を鳴らした。

 ラウゼが居なくなってしまっていたら、どうしよう。そんなことを考えながら、ラウゼと喧嘩したときのように、無我夢中で走った。


「ぎゃっ!何するんだよぉ!」


 走っていたら、いきなり私の肩を掴まれた。

 ぞくりと猫のように全身の毛が逆立った。


「たすけ……。のまれ……」

「きゃああああっ!!」


 自分らしくもない、甲高い声が飛び出た。私は反射的に手を振り払い、大きく後ろに下がった。

 

 赤い炎で出来た牙が印象的な化け物。

 

 それは、Cクラスの先生だった。先生が、グリーズのように、魔法が暴走して怪物へと成りかけていたのだ。


 先生は、炎の適正魔法らしい。熱い火の粉が先生から飛んでくる。

 私は全力で走り出した。箒を呼ぶ余裕もない。だからといって走っても、私は体力が本当に少ない。もう息切れがしてきた。

 後ろを振り向くと、先生は私と同じくらいのスピードで追いかけてきている。私と同じくらいとは、幸いなことに、随分と弱体化しているらしい。


「一か八か……やるしかない」


 私は足を止めて、手を前に突き出した。


「   Ἀληκτώ《アレクト》!!    」


 私が使える、唯一の攻撃魔法。雷が先生を貫いた。先生が雷のおかげで痺れて、足を止めた。


「ふぅ……効いたみたいだねぇ……。それにしても、先生が急に魔力暴走なんて、おかしいなぁ」


 そう思ったところで、私はヴィオレットの言葉を思い出した。

「グリーズには、魔力暴走薬を使った」

 そう、確かに言っていた。先生にも、その薬を使ったのだろう。しかし、それは意味がない。

 Cクラスの先生は、はっきり言って強くはないし、特別有能でもない。


 じゃあ、なんで暴走しているのだろう。もしかして、魔法学園の中に薬をばら撒いたのだろうか。だから、私に暴走をさせないように深呼吸をさせた……とも考えられる。


「だとしたら、クロノスやラウゼも暴走する危険がある……」


 ――怖すぎる。ラウゼの暴走も怖いが、クロノスの暴走が、怖い。彼は心臓の時間を止めて、一瞬にして人を殺せるのである。

 …………私の考察が違うことを祈るしかない。


「ぐ……くる……し……」

「……ま、まだ動いてるのかい……?」


 考えている間に、先生がまた動き出した。痺れがなくなったらしい。私はまた魔法を撃とうとしたが、何かに吹き飛ばされて、途中で終わってしまった。


「無詠唱っ!?」


 なんと、先生が無詠唱で炎の魔法、Ἥφαιστος《ヘパイストス》を撃ってきたのだ。

 全身が火傷でヒリヒリと痛んだ。私は壁を使って何とか立ち上がった。仕方がない。空間魔法で逃げよう。そう思い、唱えかけたそのとき。


「  ΑΦΡΟΔΙΤΗ《アフロディテ》  」

 

 黒いイバラが先生を拘束した。

 この黒いバラは、一度見たことがあった。私はすぐさま叫んだ。


「クロノス!」

「…………フェ……る…………る」


 倒れた先生の後ろから、クロノスが見えた。しかし、どこか様子がおかしい。

 よく見たら、首筋に黒い薔薇が侵蝕していた。

 私は顔をさぁっと青くさせた。全身の血の気が引く。私の考察は合っていたのだ。

 クロノスは、魔力暴走をしている。


「クロノスっ!暴走しないでっ!深呼吸!深呼吸をしてよぉっ!」

「……ごめ……。フェル……ル。……逃げ…………」


 必死に叫ぶが、クロノスはこちらに襲いかかってきた。

 ここで逃げても、クロノスは時間が止めれるので、意味がない。


「クロノスっ!」

「だ……めだ。…………はやく、逃げろ…………」

「逃げても、キミ相手じゃ意味がないから!」

「…………大丈夫。……考えが……ある」


 そうは言っても、体を動かせないのかクロノスは壁に手をついて、私を端まで追い詰めた。吐息がかかるくらいの位置だ。私は身を固くさせた。

 いつものように、蹴り飛ばせない。怖くて、体が動かない。ぶるぶると、全身が震えた。


 (何かいい方法はないのかい?早く考えろ……私!)


 クロノスを落ち着かせる……。彼が落ち着いていた時を思い出す。


 (……あ)


 そこで一つ、思い当たることがあった。クロノスはいつも、狂気に満ちた時、私を抱きしめていた。そしてその直後は驚くほどに元に戻る。

 いつもふざけているのかと思ってたけど、もしかして違うのかもしれない。

 抱きしめるのは簡単だけど、ダメだった時にリスクがありすぎる。それに、恥ずかしい。

 ……でも、それ以外思いつかない。

 

「えいっ!」


 気が抜けるような掛け声で、私は思い切ってクロノスに抱きついた。クロノスは壁に手をついたまま、ピクリと反応をした。


「…………フェルル……?」

「お願い……!戻ってよぉっ!!」


 クロノスは壁からそっと手を離した。そうしてから、そっと私を抱きしめ返した。あまりにも優しく抱きしめるから、私は目を丸くさせた。


 少し抱きしめてから、クロノスは私から手を離して抱きしめるのをやめた。彼の首に薔薇は残っていたけれど、目は元の理性的な目に戻っていた。


「ありがと。心配かけた?もう大丈夫だから」

「……遅いよぉ。心配、したからねぇ。もう、戻らないかと思った」

「ごめんな?怖かっただろ。なぁ、フェルル。今の何だ?キミは知ってる?」


 クロノスが珍しく真剣に尋ねてくるので、私は真面目に答えた。


「うん。私もよくわかってないけど、あれは魔力暴走らしい。適正魔法が暴走して、最終的には怪物になって、後戻りができなくなる。グリーズも、戻れずにラウゼが止めを刺した」

「ふーん。……じゃあ、ラヴァンドたちの様子も見に行った方がいいかもな」


 クロノスがそう言ったので、私はこくりと頷いた。ラヴァンドたちも、暴走している可能性がある。

 急いで行った方がいいだろう。しかし、どこにいるか全く見当がつかない。

 一番無難なのは自室だろうから、近いラヴァンドの部屋に向かうことにした。


「そういえば、ラウゼはどうしたの?」

「……朝起きたらいなかったんだよぉ。クロノスは何でこんなところに?」


 箒に乗りながら、状況確認をする。

 ラウゼが城に行ってしまった可能性は話せないから、少し慎重に話した。

 クロノスは、めんどくさそうに理由を話した。


「できるだけフェルルから離れないと、フェルルを殺しちゃいそうだった。だから、逃げようと思ったんだけど、途中から体の制御が効かなくなったんだよ。で、さっきに至るってわけ」

「なんで私?」

「キミが好きだから。多分、怪物になる前にキミに殺して欲しかったから、無意識に向かってたんだよ。キミが殺さなかったら一緒に死のうとしてたかもな」


 歪んだ感情だ。私は冷や汗を流しながら苦笑いをした。まず、私じゃクロノスを絶対に殺せない……って、もしかしてさっき攻撃してこなかったのは、そう言うことだろうか。

 なんか、寒気がしてきた。

 じゃあ、私が殺そうとしたら、クロノスは死を享受していたと言うこと?

 そんな恐ろしいことを考えている内に、ラヴァンドの部屋に着いた。


「おい、ラヴァンド。いる?」

「いる。…………ジョーヌも、いる」


 ラヴァンドの部屋の中からラヴァンドの声が聞こえた。

 何故かジョーヌと一緒にいるらしい。しかも、どうやら無事のようだ。暴走している様子はない。

 私たちは顔を見合わせて、笑った。


「入っていい?」

「入っていいが、警戒して入ってくれ!今エルゼを押さえてるのだ」

「ラウゼがいるのかい!?」

「えぇ……いる……けど。危ない……かもしれな……」


 微かにラウゼの声が聞こえた。

 やはり、ラウゼは暴走してしまったらしい。それにしても、暴走するのに法則はあるのだろうか。

 推測ではあるが、魔力が高くて、適正魔法がある人が暴走しやすい……気がする。


「開けるぞ?フェルル。ボクのそばに居ろよ?守れないから」

「わかってるよぉ」


 私はクロノスに近づきながら、言った。もしかしたら、ラウゼが戻れない可能性もある。私はごくりと生唾を飲んだ。

 クロノスはドアを乱雑に開けた。その中にいたのは――。


「なんか、クロノスと全然違うねぇ」


 ラウゼはクロノスよりも余程余裕があるのか、ベッドに座り込んでいた。ラヴァンドは呑気に手を振っている。

 ジョーヌは、斧を右手に持ちながらラウゼの前に立っていた。警戒はしているらしいが、ラウゼは比較的安定している。まだ暴走はしないだろう。


「フェルル……。無事で……よかったわ。クロノスも……てっきり暴走していると……ばかり」

「なんとか、今は押さえてるから、平気だよ。それよりも、ジョーヌとラヴァンドとフェルルは何もないの?」


 私たちは揃ってこくりと頷いた。私は暴走しそうな気もしていないし、ラヴァンドやジョーヌも、そのようだった。

 クロノスは私の近くに居ると、平気みたいだ。彼曰く、愛して欲しい欲のおかげで自制心が上がる……らしい。…………ちょっと引く。

 ラウゼはクロノスと違って私が近くにいても意味が無さそうだ。言葉がどうも途切れ途切れになっている。


「とにかく、一回学園外に逃げよう。ボクもこれ以上居たら、また……」

「いや……それは無理」


 クロノスが提案をしようとするが、ラヴァンドの言葉に遮られた。ラヴァンドは窓のカーテンを勢いよく開いた。


「なっ……」


 私は何も言えないほどに絶句した。目の前にあったのは、大量の怪物が暴れ回り、町を壊し尽くしている姿だった。

 エクスゼウス魔法学園は、山の上にあるから良い方なのだと気づいた。

 少しの理性が残った人々が殺され尽くされている。見ていられない。私は髪飾りに触れた。あの髪飾りを買った店も、壊されていた。

 エクスゼウス魔法学園だけでは、ない?

 私は自分の考えが浅はかであったことを感じた。


 ヴィオレットは、エクスゼウスの全ての町に、魔力暴走薬をばら撒いたんだ。そして、エクスゼウス人が自分の街を襲ったと言い、戦争を正当化する――。それがヴィオレットの考えだろう。恐ろしい考えだ。人間のやることではない。


「……こうなったら、国外に逃げるしか……ない、と思う」

「フェルル。……国外に空間魔法……って使える……かしら?」


 ラウゼにそう問われて、私は少し考えてからこくりと頷いた。隣国のメルクリウスくらいなら使えるだろう。魔力が3日ほど使えなくなるのは見えているし、魔力のストックが無くなって、五年はここまで繋げないのが見えてはいるが。


「メルクリウスになら、使えるよー?三日くらい魔法は使えなくなるけどねぇ」

「それなら、お願いして、いいかしら」


 ラウゼにお願いされたら、断れない。私は両手を前に突き出した。

 長い詠唱を、頭の中で唱える。いつも私たちが使う魔法は、魔法文字を使った短縮呪文だが、今回は短縮呪文は使えないだろう。


「……フェルルが唱えている間に……荷物、まとめよう」

「そうだな!私は一回部屋に戻るぞ!」


 私が唱えている間に荷物をまとめるらしい。みんな次々と部屋から出ていった。ラウゼは私の荷物も纏めているのか、二つも鞄を取り出した。

 …………それにしては、ラウゼの荷物を入れていないような。嫌な予感がするが、私は慌てて気持ちを切り替えた。

 魔法に集中しなくては。

 私は前集中を呪文に捧げた。なんだか、ふらふらと視界が回ってきた。まずい、魔力切れが近い。さっき攻撃魔法を使ったせいで、少し足りないかもしれない。

 メルクリウスまで魔法の効力を伸ばすには、もっと魔力が必要なのに。


「もっと……魔力……を」


 私は更に魔力を込めた。ぐるぐると視界が渦をまく。平衡感覚がおかしくなる。途切れそうな意識をなんとか繋ぎ止めて、ようやくメルクリウスまで繋ぐことができた。


「フェルル……!大丈夫!?」

「大丈夫……。繋げたから……魔法を展開……する」


 私は自分がどこに突き出しているのかすら分からなくなった手から、溜めた魔力を放った。


「 περισσότερ Χάος《ペリソッテロ・カオス》 」


 轟音が鳴り響いた。

 しかし、それ以外の異変はなく、いつもよりも大きな空間の穴が目の前に展開されていた。

 こんなに複雑な術式を組んだのは久しぶりだが、なんとか、成功したらしい。


「早く!早く、入って!長くは続かないから!」

「わ、分かった!」


 ラヴァンドが怖がりながらも勢いよく、空間魔法の中に飛び込んだ。ジョーヌ、クロノスと続いて穴の中に入る。

 しかし、ラウゼが一向に入ろうとしない。


「ラウゼ!早く逃げて!」

「私は残るわ。貴女は先に行って」

「そんなこと……出来るわけないっ!」


 私はラウゼの腕を何度も引っ張った。ラウゼの腕は宝石に蝕まれているのか、固く冷たい。


「私がそんなことをするように見えるかい?私は親友を置いていくようなことは出来ない。着いてくるがいい。それが正解だよ」

「いいえ、間違いよ。私はもう、逃げないと決めたの。私は王。このエクスゼウスの女王よ」


 素が出るほどに動転する私を置いて、ラウゼは私の手を握った。私はキッと睨みつけた。めいいっぱい、出来る限りに。


「……そんなこと、いいよ。逃げても、いいんだよ。キミだって、やりたくてこんなことしてるわけじゃない!無理するな……。キミだって、どうなるか分かってるよね?キミが私を殺してしまうかもしれない。逆も然りだ。早く……いいから……!逃げてよ……」


 ラウゼは私に二人分の荷物を持たせた。私は驚きのあまり固まった。


 あ、これ見たことがある。似た光景を。私は電撃が走るような衝撃を覚えた。

 夢だ。夢で、似たようなことをした。確か、ラウゼの屋敷に泊まった日だ。シロの鳥籠に行けなかった、あの日だ。次の日に、王様が暗殺された、あの日だ――!


「貴女の願いは聞けないわ」

「…………ラウゼ?」


 ラウゼは強がりな笑みで笑った。無理矢理笑った、不器用な笑みだ。私とは、正反対な笑みだった。


「私はこの国が好きよ。あなたたちと共に過ごしたこの国が、私は愛おしい。だから、私が守る。私がこの国をメルクリウスの手から守るの。だから、着いていけない。

 今まで、ありがとう。

 

 貴女とまた会えること、願っているわ。

 私の親友」


 ラウゼは私を勢いよく押した。ただでさえふらふらとしていた私はあっけなく空間の穴に落ちていく。

 どんどんと私の部屋が遠くなっていった。

 ぽたりと小さな水滴が一粒、私に降ってきた。それが何なのか理解した私は、空間が閉じる直前に叫んだ。


「ラウゼの、馬鹿ぁぁぁ!!!」


 ふんわり、花が咲く。ラウゼらしかぬ笑みが、妙に脳内にこびりついて、ぷつりと消えた。

 


 

次回、ようやく勇者登場!...長かった。

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