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オメーはたぶん忘れちまうだろうが、まぁ、いいだろう。

人間という種族に生まれたからには私みたいなやつといつまでもつるむのは良くない。

だから...なんだ、っ、元気でやれよ。



目が覚める。

辺りには草木が茂り、太陽が暖かく見守っている。

ここはどこだろうか。

そんなことを思いながら、少年は立ち上がる。

「あれは...」

少年の目指した先には街が広がっていた。

茶色い屋根が大半をしめるが、ところどころに赤い屋根や、青い屋根が見える。

その景色がなんだかおもしろく見えて、気づけば無我夢中にそこを目指して歩いていた。

段々と景色は大きく、鮮明になっていき、遂には街の中に入った。

中は人が多く、周りが良く分からない。

ふと、「ぐぅ~」という音が響く。

音の根源はどうやら自分のようだ。

「お腹すいた...」

ぼそりと、無意識的に呟く。

空腹はこの年頃の少年にとっては耐え難かったのだろう。

すこし通りから外れた、暗く、湿気の溜まった路地裏に座り込んでしまう。

「──。」

大きなあくびを一つ。

こくり、こくりと頭をゆらし、ゆっくりと眠りへ落ちてしまう。


がやがやと耳に響く騒音に不機嫌そうな顔をして、少年は目を少しづつ開ける。

すると、自分より小さそうな子供の顔が二つ。

そして、その様子を見てか奥から修道服を着たおばあさんがやってくる。

よく見れば、自身の寝た場所には天井などなく、今寝転がっているベットもなかった。

知らない部屋のようだ。

「あらぁ、目が覚めたの?大丈夫?」

そういって食べ物を載せたお盆からパンを渡してくる。

少年は警戒という言葉など知らないかのようにおばあさんからパンを受け取って口いっぱいに頬張る。

傍でそれを見守るおばあさんはにこやかに微笑んでいた。

やがて食事も終わり、寝起きで大した眠気も無いときに、おばあさんが話しかけてくる。

「あなた、名前は?」

名前、そう聞かれると、記憶に靄が掛かったように思い出せない。

「─ド、シド。」

混濁した記憶の中で、ふと浮かんだ名前を呟く。

「あらそぉ、シドっていうの。お家は?お母さんは何処にいるかわかる?」

投げかけられた質問も、うまく返すことができない。

自分はなぜあの場所にいて、一人だったのだろう。

そんなことを考え、分からなくなり、突然恐怖心が襲ってくる。

目から涙が溢れ、口から力いっぱいの大声を出して泣く。

おばあさんは「あらあら」と少し焦りながらも、必死に宥めようとする。

おばあさんによって安心したのか、少しして泣き止み、落ち着きを取り戻す。

「何もわからないなら、ここで暮らしてみる?ここはサラニア孤児院、貴方のようなお友達がたくさん暮らしている場所よ。」

優しく、包み込むような声で言われた言葉に、首を立てに振る。

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