お気楽に交渉します!!
全長500m、レーザーカノン100門装備、標準エル型戦列艦、 100隻。
全長400m、レーザーカノン 80門装備、旧型スルプ型戦列艦、300隻。
全長600m、デルス型輸送艦、60隻。
その他、40隻。
これが第4メルテリア共和国艦隊500隻の陣容。
カツラギ星系第3惑星テイラの上空100万キロにまで接近しており・・
・・・共和国艦隊は球円陣形の構えを取っていた。
球円陣形は防衛型陣形であり、どの方向からの攻撃にでも対応しやすいのである。
その共和国艦隊旗艦エルフイートの指令室には、
軍服姿に身を包んだ白髪老齢の人物、総司令官デルスデル提督が唖然とした顔になって立ち尽くしていた。
もちろん・・・指令室にいる他の幹部たちも唖然としている。
指令室前面を覆うような巨大ディスプレイには・・これから相対する敵国、カツラギ公国最高指導者の姿が映し出されていたのであった。
『はいはい もしもし~ うちがカツラギ姫公のコトナです。 えっと・・これちゃんと映ってるの!?
むこうさんから返事がこないんだけど・・・
・・・言語翻訳はちゃんとできてるのかな!?
陛下!! おそらく通信は届いているはずです。銀河標準語に翻訳しているので おそらく相手側の問題ではないかと思われます。
・・・それは こまったね~』
まるでお友達と電話でもするかのように気楽に会話してくるカツラギ姫公と名乗る少女。
おまけに側近の声まで漏れてきている。
こちらの反応がないため 手をふったりしてあまりにもフレンドリーな行動。
あんな少女が・・・・ まだ15歳程度、幼さが残る可愛い少女が・・カツラギ公国公王なのか!?
おもわず硬直する総司令官デルスデル提督。
周囲にいる幹部たちも驚きのあまり・・・声すら出ない!!
通信による停戦会議・・・簡単に言えば降伏を受諾させる予定だったのだが・・
とんでもない展開になってしまっていた!!
とくに・・・目を引くのはディスプレイに映る少女の格好・・・その姿!!
とんでもなさ過ぎ・・場違いすぎるその恰好!!
パジャマ姿で映し出されていたのであった。
パジャマである!!
前回、露天風呂に入った後・・・着替えの服を用意しておらず
仕方がないので 同じパジャマを着てしまったのであった!!
もちろん そのパジャマには・・・かわいい蝙蝠の絵柄がプリントされており背中には小さい黒い翼・・・ww
これから・・国家間の交渉を行おうというのに・・・このパジャマ姿!!!
お気楽すぎるのである。
その上・・・その少女の背景に映る不可解な物体!!
自己主張するがごとく その存在をアピールするやたら大きい物体!!
それは・・・人間サイズの巨大狸のぬいぐるみであった。
それも巨大なだけではない!!
やたらと可愛い!! 可愛いすぎるのである!!
ホント!! むちゃくちゃ可愛い~
古代銀河帝国の究極なる萌え文化を再び再現した・・究極なる可愛い狸のぬいぐるみ!!
そんな究極可愛い狸ぬいぐるみの上に これまた可愛い兎が寝転がっていた。
特に・・フラフラとゆれるうさ耳が・・なんとなく心をなごませたりする。
もちろんそれは・・・コトナのぬいぐるみAIペットである・・ウサミミン!!
可愛い狸の頭の上でくつろぎ中である。
その映像をディスプレイごしに見ていた若い女性士官が おもわず声を漏らす。
「あれ・・・ほしい」
可愛さに・・・洗脳されたかもしれない・・・
そして・・・総司令官デルスデル提督でさえ・・・・・
ふぅむ! あのようなぬいぐるみを 孫娘に買ってやると 大変喜ぶだろうなぁと
・・・考えてしまう始末!!
うぬぬぬぬ・・・
あんな・・・孫娘ぐらいの少女相手に交渉なんてやりづらいぞ!!
これは公国側から・・しかけられた一種の心理攻撃なのか!?
いや待てよ!? もしかして・・・通信の送り先を間違えて どこか一般家庭に・・って違う!!
あの少女は間違いなくカツラギ公国姫公と名乗ったのだ。
カツラギ姫公と名乗る少女の背後にうつる映像はどうみても 彼女の自室!!
少女趣味満載の自室。ぬいぐるみが一杯。
自室から友達に電話をかけましたというぐらいの状態で映っていた。
『もしも~し おじさ~ん 聞こえてますか~ 返事下さ~い』
指令室には 姫公と名乗る少女からの声が鳴り響いていた。
そのうち 叫ぶのをあきらめたのか、近くにある本棚から漫画の本を取り出し・・・
ベットの上で寝転がりながら読みだした。
ときおり少女の笑い声が聞こえてくる。
もはや前代未聞の状態であった。
馬鹿にされているのか・・・それとも相手が馬鹿なのか・・
・・・・それに なぜ!? 姫公とはいえ 未成年の少女が交渉相手になるのだ!?
辺境国家とはいえ それなりの人材ぐらいはいるはず・・・
ともかく・・・
・・・あんな姿でもカツラギ公国の最高指導者と名のる姫公なのだ!!
あまり気が進まないが・・総司令官デルスデル提督は返答をだすことにした。
「わしは第4メルテリア共和国艦隊総司令官のデルスデル提督だ。
貴女は間違いなくカツラギ公国姫公であるのだな!?」
やっと返答がきたので 読んでいた漫画の本を横に置き、コトナはディスプレイへと顔を向けた。
『あらら・・やっと返事がきたのね うちがこの公国の公王・・・カツラギ姫公コトナである』
「ふっ そのようなふざけた姿で・・まことにカツラギ姫公だというのだな!? 」
『ふざけている!? 我が国に土足で踏み込むような盗賊相手に礼儀など・・・必要ないのよね~』
コトナは ウサミミンの頭をなでながら、ディスプレイごしにデルスデル提督を睨む。
「我らを盗賊だと!?・・・貴女は自国がおかれている状況を理解してるのか!?
貴女の行動によって全国民の運命が決まるのですぞ 」
『あらあら たいへんなことになったわね~ 全国民ね~!?』
「余裕のある態度だな!!・・・ここで強がりを言っても仕方がないのだぞ
それとも 国民の命は虫けらとでもおもっているのか!?」
『あらあら 盗賊のくせに・・・道徳を語るの!? 笑えるわね~』
・・・・するとコトナにかわってウサミミンが 床を転がりながら笑う仕草をした。
『ウサミミンちゃん!! そんなに笑うと失礼よ!!』
「我らをバカにしたいようだな!!
まーいいだろう! いますぐに降伏したのなら命だけは助けてやってもいいぞ。
いや! その星から、すぐに出ていくのなら追いかけはしない
わしは優しいからなぁ 穏便に済ませてやろうではないか!!」
『その言葉、そっくりそのままお返ししますよ!! この星系から出ていくなら追撃はしません!
うちは優しいですからね!!』
「ふっ 強気だな!! 我ら艦隊を迎撃できるだけの戦力など残っていないだろ!?
いや まてよ!!! この星系から脱出できる宇宙船などもっていないのではないか!?
なんだったら 小型船を貸してやってもいいぞ!!」
『小型船程度では納得できませんよ! おじさんの艦隊を丸ごと全部欲しいわね~
うちは骨董品とか古いのが好きなのよ・・・とくにその古めかしい骨董品のような艦隊とか!!』
「骨董品!? 我が艦隊が骨董品!? どうやら辺境に長く暮らし過ぎて・・・なにが最新式なのか分かってないようだな!!」
『ちゃんと分かってますよ! 古き良き時代の・・・味のある骨董品艦艇・・・
特にレーザーカノン砲を並べている感じがいいのよね!!
これこそ・・・骨董品!! そうそう~昔の友達が言っていたわ・・・男のロマンとかって!! 』
「・・・何をいっているのだ!? 骨董品という言葉の意味を知らないのか!?」
『骨董品!?・・・・アンティークとか・・・美術品とか・・展示したくなるもののことだよ!』
「・・・・どうやら話が 噛み合っておらんようだな・」
『交渉決裂ってことでいいですよね。 でわ・・戦争をはじめましょう』
デルスデル提督は 仕方がないという感じのジェスチャーを参謀たちに見せた。
そして・・・核融合ミサイルを惑星表面にむけて一発だけ放つように指示する。
これは脅しである。
自然破壊をしてしまうため 核融合ミサイルの使用はためらわれるのだが・・とりあえず威嚇ぐらいは必要であった。
デルス型輸送艦のハッチが開き・・・そこから惑星に向けて一発のミサイルが放出された。
ちなみに・・・この時代の核融合ミサイル、すなわち水爆の起爆装置に原子爆弾を使用していないため、
大量の放射性物質を ばらまくことはないのだが・・・破壊力は桁違いに強力である。
・・・その威力はツングースカ大爆発の100倍に匹敵し 被害がとんでもなく大きい威嚇兵器であった。
その核融合ミサイルは直進し・・・カツラギ公国本星であるテイラに向かって落ちていく。
「おそらく公国には このミサイルを迎撃する力はない。これで間違いなく降伏してくる!!」
デルスデル提督はその様子をディスプレイ越しから 眺めるのであった。