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公王の帰還!!


ここはカツラギ星系・第三惑星テイラ。

この惑星は 分類からすると地球型惑星。

酸素も大気も十分に備えており見た目も、ほぼ地球とそっくりである。


そんな惑星の北半球に位置する大陸の中央部は温暖な気候帯に属し平原地帯が広がっていた。

その平原のど真ん中に・・・ポツンと立つ独特な形をした小さい建造物。


あえて言うとそこは・・・白川郷にあるような合掌造り風の建物。

実に風情があり、周囲の堀には澄み切った湧水に色とりどりのコイが泳ぐ。

どこかの観光地なのか!?・・という印象である。


そんな合掌造り風の建物こそ・・・カツラギ公国の中心地。

公王の住まう邸宅。公王宮殿である。



地上の見た目は小ぢんまりとしており・・・どうみても公王宮殿には見えないのだが・・・

その地下には!! 秘密があった。

能ある鷹は爪を隠すがごとく その地下には公国を支える各種施設が広がっていたのである。


大深度地下200mに設置している時空間閉鎖型反物質融合炉!!

ここから生みだされる強力なエネルギーによって地下施設の電力を賄っていた。

地下公王執務室、各省庁・・・などの政治中枢から

住居施設、各種研究施設、交通施設、地下ショッピングモール、地下映画館、

地下神社、地下お花見、地下遊園地、などの都市機能。


これら施設を支える高度な技術力は かつて銀河系を席巻した銀河帝国由来のもの・・・

このカツラギ公国こそ・・・銀河帝国の後継国家と呼べる存在であったのである。


しかしながら・・・カツラギ公国公王は これら銀河帝国由来の科学技術を全て無粋なものと見なし、

自然との調和を乱すものと考えていた。

そこで・・・これら科学技術を地下に隠蔽し、できるだけ外部に出さないようにしたのである。


とはいっても 決して科学技術を否定はしていない!!

それどころか・・・このカツラギ公国は科学技術にたよりきってるような運営のされ方をしていた!!

自然と科学、両者の調和を保ちつつ豊かな国造りを目指し新たなる世界を構築する!!

カツラギ公王は この星系でとある試みを目指していた。

それが・・・星系丸ごと庭園化計画である!!


恒星を含む10個の惑星によって構成されるこの星系・・・

この星系を自然豊かな・・いわゆる庭園のような星系にしようとしてたのである。



コンセプトは・・・

懐古的未来世界のようなレトロフューチャー・・・・意味不明だが・・そんな庭園ww


6000年前の旧式電波通信ステーション、5000年前の文化財的な採掘ステーション、

これら古き良き時代の施設も 星系庭園を飾るオブジェのような存在。


こういう古い遺物が・・・星系庭園とマッチし・・・アクセントのような存在となる。


イキがわかる人間なら・・・

深淵の中に浮かぶ遺物のような宇宙ステーションを対比にして・・各惑星の自然美を再認識する!!

これこそ・・・わび、さびというものであろう~


これは言わば・・・宇宙に花開く茶道。宇宙茶道である!!

そして・・・かの超古代人である千利休も おそらく茶道具の一つとして宇宙ステーションを利用したといわれているww



しかし イキを理解できない野暮ったい共和国艦隊の人たちにとっては・・・

・・・カツラギ星系全体で表現する星系庭園、宇宙茶道を理解せず・・・

それどころか・・遅れた国だと勘違いしてしまった。

6000年前の旧式電波通信のわび、さびさえ理解できていない!!

実に残念な人達である。


その上!! あげくのはてに遅れた国と侮り・・・

共和国はカツラギ公国に対して戦争を仕掛けてきたのである。





◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


ここは・・・

合掌造り風の公王宮殿の地下奥深く・・・最深部にある最高機密の部屋。


その部屋は天井が高く広々としているが・・なんとなく薄暗い。

多くのディスプレイが並び、複雑な装置とパイプが入り乱れ・・

中二病男子の好みそうな・・ちょっとした秘密基地のような感じの部屋であった。

そんな秘密基地のような部屋で・・けたたましく警報が鳴り響き、白衣を着た多くの人達が なにやら作業に勤しむ。


ここは・・カツラギ公国内でも・・・もっとも重要な区画!!

そうです!! 現在・・・この公国における最高位の人物が眠っているのであった!


黒い色で染まった棺桶型をした冷凍睡眠装置。

なぜかその棺桶上面には十字架のマークがついてたりする。


突然・・・

この部屋に備え付けてあるディスプレイが 一斉になにかの表示を始めた。

藤の絵柄をあしらったような紋章。カツラギ公国の国旗である!!

そして・・・・・ファンファーレが鳴り響き 公国公歌が流れ始める。

ちょっと・・あれなアニメ調ぽい楽曲である。


たたえよ♪たたえよ♪銀河帝国♪たたえよ♪たたえよ♪カツラギ公国♪我ら民族♪銀河の民よ♪



そして ついに棺桶型冷凍睡眠装置の明かりが点灯しはじめたのだ。

『もうすぐ 陛下がお目覚めになります!』

白衣を着た人物の一人が叫んだ。


すると、その声に応じたかのように この部屋のドアが開かれ 多くの人達が一斉に中へと入り込んで来た。

彼らはカツラギ公国閣僚の面々!!

公国公王の目覚めに立ち会うため、儀式衣装を着た首相をはじめとした閣僚たちであった。



閣僚たちの儀式衣装は・・他の星系では見られない風変りな衣装を着ている。

それは・・銀河帝国時代からの伝統衣装であった。

その姿、平安時代の束帯衣装に近いのだが、まったく同じではない。

現代風の動きやすい上着とズボンに 束帯衣装が融合してしまったような銀河帝国特有の儀式衣装。


そんな古式ゆかしき伝統衣装に身をつつむカツラギ公国閣僚たちが冷凍睡眠装置の周りで直立不動の姿勢で敬礼したのであった。

『いよいよ・・・ですな!!』

ハクア首相の緊張した声が響きわたる。


しばらく待っていると・・・シューという音とともに

棺桶型冷凍睡眠装置のハッチが開き、内部にたまった冷気が外部に排出された。




「誰だ~ うちをおこしたやつは~」

愛らしい少女のような声が部屋全体にこだました。



すると 直立不動の姿勢で立っていたハクア首相をはじめとした閣僚たちが一斉に

『2600年ぶりのお目覚め。おはようございます』の声が鳴り響く。


「おっととと~ そんなに寝てたのか ちょっと寝すぎた感があるかな

・・・でもみなさん! 2600年たっても 同じ顔ぶれですね 安心しました!!」


冷凍睡眠装置横の手すりを掴み 少女の上半身が起き上がる。

ちょっと体が痛い。2600年ぶりの活動である。

服装は寝た時と同じくドラキュラ風パジャマ姿。

蝙蝠の絵柄がプリントされ 黒い翼がついている可愛いパジャマである。ハローインの衣装!?

服装は大丈夫・・・いや!

ちょっとダブダブになっている。

冷凍睡眠中に身体が小さくなったのかな~


「誰だ~ うちをおこしたやつは~ 久しぶりに血が欲しい!!」

少女は あらためてドラキュラ風のセリフを吐く。

そうです!! ドラキュラ的な復活をするために 2600年前からの仕込みである。


「はい陛下!! ただいま新鮮な血を持ってまいりました」

メイド姿をしている少女がお盆に赤色をしたジュース・・・おそらくイチゴジュースを持ってきてくれた。

これも・・・2600年前からの仕込みである。 2600年前からイチゴジュースを用意していたのだww

そんなドラキュラごっこを眺め・・・微妙な雰囲気となる閣僚の面々・・・


「お~ 2600年ぶりだ!! 2600年たってもイチゴジュースは健在なのか~」


少女は 2600年ぶりにいただく寝起きの一杯を口にそそいだ。


そこで・・少女はふと気になることを思い出した。

永い間、冷凍睡眠でお寝んねしていると・・・とある副作用が発生するらしい!!

それは・・・若返り現象!! 若くなってしまうのである・・・

超古代人(特に秦の始皇帝あたりが・・)にとっては憧れの現象であるが・・・この時代では副作用程度の扱い!!


さてさて・・・これは気になる!! 2600年間の冷凍睡眠によってどれぐらい若くなってしまったのやら~

わりと・・どきどき!! 嬉しくも怖い!


少女は 自分の容姿を確かめるため 手元にある手鏡を覗くと・・・

・・・・黒い!!

顔がなく・・・真っ黒になっていた!!


「えっ!!」

驚愕、驚き!!

2600年の間に何が起きたのか!!

顔がとんでもないことになっている!!


半分寝ぼけていた少女が・・・おもっきり覚醒!! 目が覚めた。

そして・・・慌てて自分の顔を再確認する。



少女の長い黒髪が 前に垂れ下がり 顔を覆い隠していただけであった。

その垂れ下がる髪を横に分け・・・顔が見えるようにした。

「よかった!! 人間のままだ!!」

引きつった少女の顔が 元へと戻っていく。

でも・・・ちょっと手が震えたままだったりする・・



「というか・・・あら、うち・・・思った以上に若返ってる!? なるほどね ま~いい たまには少女姿も・・」

再び・・手鏡を見て・・・自分の愛らしさにちょっと どきどきしてしまうのである。

「あらら ちょっとかわいいじゃないの~」



この少女の姿をしている人物こそ・・・このカツラギ公国における最高支配者。

つまり公王・・・・しかしながら 女性であるので公王ではなく姫公キコウである。


彼女の名は・・・

アソン・カツラギ・キヨコ・コトナ。

アザナ・・いわゆる通称はコトナである。 


そして・・・このカツラギ公国唯一の人間でもある。 

唯一の人間・・・!!


そうです!!

ハクア首相をはじめとした閣僚たち・・そして、その他の人々、公国国民全員、人間ではない。

彼らは・・・

俗にいうAIヒューマノイド!!  すなわちロボットである。


ただし・・ヒューマノイドだといっても・・・・彼らは決して無機質のような感じはしない。

見た目も雰囲気、仕草さえもまさに人間そのものである。

人間以上に人間そっくり。


このAIヒューマノイド技術は・・・超古代文明・銀河帝国由来の超技術の一つでもあった。



そして・・・

・・・コトナが眠っている間、このヒューマノイドたちの優秀なAIによって

カツラギ公国の運営管理をしていたのであった。

もはやトンデモ技術すぎるAIヒューマノイドたち。


AIに頼りきり・・・AIだけでなんでもこなせそうではあるが・・・・

全てをAIに委ねることはできない!!


カツラギ公国に緊急事態、または危機が迫った場合、その難しい判断を人間であるコトナが行う仕組みとなっていた。



そのため・・・この公国唯一の人類であり公王・・すなわちカツラギ姫公キコウを冷凍睡眠から目覚めさせる必要があったのである。


「うん 見た所・・・寝る前と変わりなさそうだね・・でも、うちが目覚めたということは・・・なにかの緊急事態が発生したということなの!?」


その問いに対して・・・見た目抜群の青年であり なおかつカツラギ公国首相でもあるハクアが返答した。

『はい!!・・現在、2600年ぶりに対外勢力が侵入しつつあります。 これらの対処について人間であられる陛下の決断が必要となりました』


「敵なのか!?」


『 "" 野蛮国を民主化するためにやってきた。即座に降伏せよ!! "" との最後通告を受け取っています』


「 目覚めていきなり 野蛮国などと呼ばれ・・降伏せよとは・・

これって・・2600年の太平の世から・・・カツラギ公国は目覚めるってやつかな~

それに・・・民主化って!?」


『民主化って笑えますね 』


「ふっふふ 民主化って・・・この公国には 人間はうちしかいないのにね」

このカツラギ公国は本当の意味で・・・一人だけで運営している個人経営の公国!!

・・・・いやいや!! 経営主が寝ていたのだから・・田舎の無人野菜販売所といってもいいぐらいの公国であった


『一人民主化の魔の手から守るために 公国軍正規部隊の使用許可をおねがいします』


「あ~ たしか法律で・・・公国軍正規部隊の出動は公王の許可が必要とかあったね

うん 承諾した!! ハクア首相よ!! 正規部隊の出動を了承する」

コトナは 見た目抜群のハクア首相から手渡された書類に許可のサインをいれたのである。


これで・・ついにカツラギ公国正規軍が動き出した。

この正規軍とは・・・古の帝国、銀河帝国由来の高度な技術システムを持つ軍隊である。


今まで・・共和国との間で戦っていた小型ドローン部隊とは・・正式な軍隊ではなく、警備保安に属する部隊であった。

これから・・・本格的な正規軍同士の戦いである!!!




さてさてと・・・・

コトナは背筋を伸ばし・・大きくあくびをした後、

冷凍睡眠装置のベットからゆっくりと立ち上がった。


すると!? なにやら気配がする!! 

何かがコトナへと飛び込んでくるではないか~

それは兎!!

喜び勇んで コトナに向かって飛び込んでくる実に愛らしい存在!!


2600年前にペットにしていた兎のぬいぐるみAIのウサミミンである。

まるで・・ムササビのように 空中を滑空しながら・・コトナの胸の中へと着地した。


「ウサミミン!! おひさしぶりね~2600年間 待ってくれたの~ うれしい」


『ニャンニャン!』

ウサミミンはうれしそうに返事する。 兎なのに猫のような鳴き声!!


コトナは 兎ぬいぐるみのウサミミンを抱きしめまくりくるくると踊りまくる。


2600年間・・・ときおりメンテナンスをしながら ウサミミンは飼い主であるコトナの目覚めを待ち続けていたのであった。

忠犬ハチ公もびっくりするほど 長い間待ち続けていたのである。


なんだか嬉しくなるコトナ・・・ちょっと 目がしらが熱くなる!!

そんなコトナを なぐさめるように舌でなめまくるウサミミン!!

2600年ぶりの再会であった!?



◆◇◆◇◆◇◆


コトナは 寝起き特有の跳ねまくるとんでもヘアースタイルを 奇麗に整えるために ウサミミンといっしょに 風呂へと入りにいくことにした。

「うん ライオンのような・・たてがみヘアースタイルになっちゃってるもんなぁ」


・・・というわけで2600年ぶりの風呂である!

ひさしぶりに・・・お湯で体を濡らすのも悪くない!!


もちろん・・・兎ぬいぐるみのAIウサミミンも コトナと一緒に風呂である!!

高性能で作られているため 風呂に入れても問題なし。

・・・・というか、高性能でつくられているためウサミミンを風呂にいれなくても清潔にたもてるのだが・・・

そこは人間文化である!! 飼い主とともに風呂にはいれる機能がついているのであった。




遠隔地の湯元から お湯をパイプで送り込んでいるため・・・一応は温泉でもある。

ここは・・・公王宮殿の地下深くにある温泉の露天風呂。

露天じゃないけど露天風呂である。

そのわけは・・・3D疑似映像によって まるで地上にいるような錯覚におちいるからであった!!


コトナは地平線まで広がる海(疑似映像)をみながら ゆっくりと2600年ぶりのお湯につかりきっている。

青い海・・・・白い雲の向こうにうっすらと浮かぶ輪っかのついたガス惑星。ときおり流れ星が流れる。

・・・・幻想的景色(映像)を見ながら コトナは良い気分となり 何気なく自分の身体を見て衝撃をうける!!


「あっ! 胸のふくらみが小さい・・・というか消滅している!?  うっうう 2600年かけてしぼんでしまったのか~」

なにか大切なものを奪われた・・・そんな切ない気分となり空をみる!

「若返ったのだから仕方がない!! 成長したら・・・もとに戻るんだろうし~」


そんな切ない気持ちに見舞われているコトナのよこで ウサミミンは幸せそうに背泳ぎしてるのであった。

プカプカ~


そして・・なんとなくコトナもプカプカ背泳ぎを始める。

「きもちいい!!」


『ニャンニャン!』


敵・メルテリア共和国艦隊が迫っているというのに・・まったく気にもせずお気楽なコトナであった!!



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