カツラギ星域会戦
カツラギ星系・第三惑星テイラ。
主星からの距離がほぼ1天文単位。
十分な大気と最適な気温、広がる海洋。
そして・・・多くの生物と広大な森林地帯を持つ自然豊かな星。
まさにここは、地球のように青い惑星!!
この星が育む豊かな自然風景を窓から見ながら・・・今日もデスクワークに勤しむ青年。
ここは・・・カツラギ公王宮殿の首相執務室。
・・・見た目抜群の若い青年が今日も机に向かって職務をまっとうしている。
彼はカツラギ公国の首相。名はハクア。
ちょっとイケてるイケメンでもある!!
そんなハクア首相に情報部から とんでもない情報がもたらされた。
星系外縁部に謎の大艦隊の出現である。
武力を有する艦隊というのは気になるが
どちらにしろ・・・カツラギ公国にとっては2600年ぶりの珍客である!!
「とりあえず 相手側への通信だな!! 我が公国に 艦隊を引き連れての来訪理由を尋ねなければなるまい・・・」
ハクア首相は・・まずはファーストコンタクト!!! 相手側に通信を送ることにした。
情報部からの話だと・・来訪艦隊は 我らと同じ人類だと判明している。
どこか別銀河の知的生命体とか 別宇宙の謎生物とかではないはずである。
来訪艦隊が同じ人類なら・・通信言語は銀河標準語で十分可能であろう。
◆◇◆◇◆◇◆◇
鎖国を続けてきたカツラギ公国には外交部はない。
そこで情報部が外交担当を受け持つことになった。
2600年ぶりのファーストコンタクト!?である。
カツラギ公国情報部は・・・メルテリア共和国艦隊に対して通信を送った!!
しかし・・・返事がない。
そして・・・もう一度・・・続けざまに通信を送った。
それでも返答が返ってこなかった。
互いの言語が違っていたわけではない!!
共和国艦隊が 公国からの通信を無視したからである。
そして・・・返答などせずに・・メルテリア共和国艦隊はカツラギ公国にたいして それ相当な態度をみせた。
俗にいう・・・体育会系的挨拶。
返答はいらない・・・拳で語るである!!
カツラギ公国の外縁部通信宇宙ステーションをメルテリア共和国艦隊の拳によって あっというまに破壊したのであった。
もちろん・・・攻撃予告もなく・・・宣戦布告もなく・・・
幸いなことに人間は常駐しておらず ヒューマノイド型ロボットだけで運営していたので人的被害はなかったが・・
これで明らかに・・カツラギ公国に侵入してきた勢力は敵対勢力だと判明したのであった。
「2600年ぶりの珍客が・・・侵略者だったとは・・・」
ハクア首相はすぐに閣僚たちを集め対策会議を開く。
そこで、公国憲法の一つ・・・平和条項である第9条の破棄を宣言!!
国家総動員令を発動し・・緊急戦時体制に移行した。
そして・・星系内に分散配置していた無人小型ドローン300機を第四惑星ヒールホン付近に集結させることを決定。
その地で 敵艦隊と決戦をする。
ちなみに・・・
小型ドローンとは無人攻撃機であり優秀な人工知能AIを搭載している。
丸っぽい形状をしており全長20m・・・レーザー兵器を搭載、副砲としてバルカン砲、イオンエンジン4基。
カツラギ公国では これら小型ドローンを警備隊という位置づけとしていた。
◆◇◆◇◆◇◆
メルテリア共和国艦隊は カツラギ公国外縁部通信宇宙ステーションを一撃で破壊した。
これはメルテリア共和国艦隊による宣戦布告ともいえる行為。
戦争開始を意味していた。
「よし!! 我が艦隊の威容を敵に見せつけつつ 敵の本拠地へと向かう!!
うまくいけば・・威嚇だけで降伏するやもしれん!!」
艦隊総司令官デルスデル提督の号令とともに
カツラギ公国本星と思われる第三惑星へと メルテリア共和国艦隊は進路を向けた。
破壊されたカツラギ公国の通信ステーションをディスプレイ越しに見る参謀のエーレル大尉。
「あの破壊されたステーション!! 6000年前の・・・貴重な文化財・・」
・・・・こんな破壊行為を古星学協会の人達に知られると・・・非難の嵐に晒されるんだろうなぁ。
提督はもちろん・・・参謀まで非難されそう!!
よし・・・自分は見なかった!! 知らなかった!! ということにしようとエーレルは決意するのであった。
いやいや、本当に知らなかったのは事実です! 歴史好きの自分なら絶対に攻撃しませんよ!!
------- 新星暦2521年5月3日
カツラギ公国は星系内に活動する民間宇宙船 並びに移動可能な施設を安全地帯へ避難するように緊急伝達。
------- 新星暦2521年5月4日
メルテリア共和国艦隊は第五惑星にまで到達する。
その際・・第五惑星,いわゆるガス惑星内の水素を採掘する水素ステーションを破壊した!!
当初は・・・水素ステーション内の水素を強奪するつもりだったのだが・・
・・・手違いで破壊してしまったようである。
------- 新星暦2521年5月5日
メルテリア共和国艦隊は一旦、小休止をする。
「長距離センサーの反応から・・どうやらカツラギ公国は我が艦隊に対して戦いを挑んでくるようだ!! 歓迎をせねばなるまい!!」
デルスデル提督は来るべき敵との一戦を将兵たちに予告した。
原始的だと馬鹿にしていたが・・・一応、戦えるだけの戦力はもっているようだ。
しかしながら・・・
カツラギ公国の運用している小型ドローンは 我がメルテリア共和国の無人機より大分性能が低く おそらく大した戦力にはならないだろう。
とはいっても・・・・・・決して油断をしてはならない!!
少なくともカツラギ公国は あの伝説の銀河帝国に封じられた国だ。
・・・見た目はたしかに原始的で技術力はかなり遅れているように見えるが・・
もしかしたらとんでもない兵器を隠し持っているのかもしれない!!
なんかすごい要塞から、艦隊の半分を吹き飛ばす大砲的なあれとか、
恒星の光を鏡で反射したり・・・・戦艦主砲からブラックホールを撃ったりとかするあれあれ的な兵器!!
・・・そんな超兵器などを隠しもっている可能性は 暗峠を自転車で踏破するようなものww
ありえないのだが・・・それでも一応は警戒をするデルスデル提督だった。
◆◇◆◇◆◇
共和国艦隊の進撃が一時停止したおかげで・・・第四惑星に公国軍小型ドローン300機に加え、急遽増産した100機を加えることに成功した。
この地、第四惑星ヒールホンで進軍してくるメルテリア共和国艦隊を食い止めようというわけである。
『公国の興廃は今日の一戦にあり!! 』
カツラギ公国首相ハクアは・・・緊急徴集された閣僚たちの前で 喜色満面な顔となり発言した。
古代から伝わる古典的な名言で縁起をかついだのだ。
それと・・・こういうセリフを言ってしまう性分でもあった。
『・・・・・』
とりあえず・・・閣僚たちはハクア首相の名言を軽く受け流し・・・
今後に発生するであろう各種問題への対策を話し合うのであった。
ハクア首相・・・寂しい顔をしたとかしないとか・・・
------- 新星暦2521年5月8日
第四惑星ヒールホン付近に遊弋する小惑星帯の影に 公国軍小型無人ドローン400機はその身を隠した。
共和国戦列艦搭載の主力兵器・レーザーカノン砲の死角は おそらく艦艇後方である。
後ろに向けてレーザーカノン砲は撃てない!!
つまり・・共和国艦隊の弱点は後方である!!
そこで 公国軍ドローン隊は その後方からの攻撃を意図したのであった。
現在!!・・・共和国艦隊は単縦陣の陣形を保ちつつ・・・進撃していた。
輸送船など非戦闘系艦艇を 艦隊の中心に配置し・・・その周囲を戦列艦で固めている。
その総数500隻。 堂々とした艦隊・・・
公国軍小型ドローン隊に比べ・・・なんと巨大な艦隊!!
まるで・・・巨大な象に立ち向かう蟻のようでもある。
はたして勝てるのか!?
ただし・・・公国軍ドローン隊はAIであり、人間のように相手を恐れることはない。
どんな相手でも最後の一兵まで戦えるのだ!!
小惑星の裏側で身を隠す公国軍ドローン隊!!
その目前を 何も知らないかのように 共和国艦隊が過ぎ去っていく。
共和国艦隊側は なにも気づいてないようだ。
公国軍小型ドローン400機は共和国艦隊をうまくやり過ごし・・・敵艦隊後方に位置するという絶好のチャンスを手に入れた。
『 攻撃せよ!! 』
小惑星の影に身を隠していた公国軍ドローン隊は・・・一挙に躍り出し 共和国艦隊後方から襲いかかる。
そこは・・共和国主力兵器・レーザーカノン砲の死角!!
ドローンにターゲットを合わすことが出来ない!! 撃てないのだ!!
そして・・ドローン隊は前進を開始!! 共和国艦隊との距離をつめ 搭載しているレーザー砲を敵に叩き込む!!
しかし・・・現実は非情であった!!
共和国艦隊の長距離センサーによって 公国軍ドローン隊の居場所が かなり以前からバレていたのである。
そして、小惑星の影にかくれ・・後方から襲い掛かってくるであろうということも予想済だった。
公国軍ドローン隊の奇襲は失敗し・・・作戦が完全に読まれていたのである。
「全艦隊再編せよ!! 球円陣形だ」
デルスデル提督はすかさず、共和国艦隊の陣形を変更させ、敵・公国軍ドローンへの対処をする。
これも予定の行動であり・・すべて予定通りに事態は推移していた。
共和国艦隊は弧を描くように旋回をはじめた。
これは艦隊陣形を球円の形にすることによって レーザーカノン砲に死角を作らせないようにするためである。
それに対して、公国ドローン隊はイオンエンジンを全開にして、一挙に突進する。
敵・共和国艦隊の陣形が完成する前に懐に飛び込み至近距離からレーザーを撃ち放つのだ。
共和国艦隊を撃破するには・・もはやこれしか方法がない!!
カツラギ星系第四惑星ヒールホン付近にて ついに両国の軍事力がぶつかった。
両陣営が放たれたいく筋もの光の線が交差し・・火の球へとかわっていく。
すばやい艦隊陣形の構築によって共和国艦隊から放たれるレーザーカノンの光の束が
真っすぐ公国軍ドローン隊へと襲いかかり・・・次々と爆散していく。
一方的にドローンが撃破されているのだ!!
公国軍ドローン隊の動きが遅かった。
ドローン搭載の航行エンジンの非力さが祟ってしまったようである。
あまりにも遅く 速度が出なかったのであった。
その上・・・ドローン搭載のレーザー砲の出力が弱すぎて・・共和国艦艇にほとんど傷さえつかない。
まったく歯がたたない状態であった。
その上・・・ドローンの装甲があまりにも脆かった。 脆すぎである!!
レーザーカノン砲の一撃で あっというまに爆散。
その理由は至極当然・・・ドローンは主にアルミ鉄板によってつくられてたからであった。
そうです!! 元々このドローンは戦闘用ではなく・・採掘用に作られていたのである。
そのため・・ドローン搭載の兵器は採掘用レーザーであり、装甲はペラペラのアルミ製!!
戦闘など 初めから無理だったのである。
共和国戦列艦から放たれる光の矢が 深淵の闇を切り裂く。
美しい光の線が踊り転がり爆散する。
まるで花火・・・夜空で輝く美しい花火・・・
その花火一つ一つが公国軍ドローンの花火。
一方的に花火として散ってしまっていた。
勝てない!!
あまりにも性能が違いすぎたのだ!!
カツラギ公国のドローン隊は ほぼ壊滅し宇宙の深淵に残骸をばらまいてしまっていた。
第四惑星ヒールホンでの決戦で カツラギ公国は完全に敗北。
ちなみに共和国艦隊にほとんどの損害はなかった。無傷と言ってもいいぐらいである。
もはや・・・カツラギ公国に戦える戦力は無い!!!
・・・・わけでもない。
カツラギ公国における最高位、すなわち公王の署名がないと これ以上の戦力が出せない法律になっていたのである。
そこで 公国の官僚たちは急ぎ・・公王を目覚めさせる必要に迫られた。
公国公王は・・・祖国が危機に陥っているにもかかわらず、お気楽に睡眠状態!!
それはそれは大変気持ちよく♪寝ていたのである。
そんな間にもメルテリア共和国艦隊は進撃する。
カツラギ公国本星である第三惑星テイラに向けて・・
「敵がたとえ・・弱小といっても けっして侮ってはならん!! 最後まで何が起きるのか分からないのだからな!!」
戦闘に勝利して浮かれ気味になっている司令部内の参謀たちに デルスデル提督は注意を喚起させた。
敵を降伏させるまでが戦闘である。
敵が弱いからと言って・・決して油断してはならない。
たえず敵を睨み・・敵の動向に目を配らなければならないのである。
・・・とはいえデルスデル提督は小さく呟く。
「カツラギ公国!! 弱すぎる・・・所詮は伝説!! ならば、さっさと潰してしまおう」
◆◇◆◇◆◇
------- 新星暦2521年5月9日
ついにメルテリア共和国艦隊は 第三惑星テイラの目前に達した。
深淵の宇宙の中を 500隻の艦艇がずらりと並び公国政府を威嚇する。
そして・・・最後通告の通信を送ってきた!!
"" 我らは偉大な国家・メルテリア共和国所属第4艦隊である。
お前たちのような野蛮国を民主化するためにやってきた。即座に降伏せよ!! ""
もちろん・・・カツラギ公国側は あの様式美にあふれた伝統的なテンプレな返答をした。
"" 馬鹿め! 馬鹿め! ""
返答を返した後 少し満足げになるハクア首相であった。