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カツラギ星域会戦・・第三幕


ディスプレイに映るその少女はパジャマ姿ではなく・・・ちゃんとした正装をしていた!!

その姿・・・いくつもの服を重ね着をしており 色鮮やかな模様。

それは十二単。 銀河帝国における正装である。




◆◇◆◇◆◇◆



コトナことカツラギ姫公は カツラギ公国伝統の衣装である十二単を纏い 扇子で口元を隠しながら勝ち誇った顔をしていた。

その背後には 威嚇するがごとく・・・スキンヘッドのいかつい体格をした人達が並ぶ!!

着用している制服から・・・多分、軍人なのだろうけど

とりあえず・・ガラの悪い数十人の世紀末が コトナの背後に立ちならんでいた。



『 おっほほほほほ~ 妾はカツラギ公国姫公のコトナじゃ!!  降伏するなら命ぐらい助けてあげてもよろしくてよ!! 』

完全な悪役令嬢のようなセリフを吐く。

または・・・悪ぶりたい中二病を患っているとも・・・


本人は悪役非道的演技なのだが・高音のアニメ声なので・・・いまいち悪役非道になりきれない。

命をかけた戦場で・・・悪ふざけだと思われたりするが・・コトナ本人にとっては精一杯の威圧演技であった。 


そんなはずかしい演技を見て 負け戦・確定のデルスデル提督でさえ 苦笑いしてしまう。


「姫公殿!! なにやら まじめに正装姿をしてますなぁ わしとしてはパジャマ姿の方が好みなのじゃが・・」


『 殿方はパジャマがお好きそうですね。降伏してくだされば お礼に・・・色んなパジャマをプレゼントしますわよ 』


「はっはは・・・パジャマはたいへん魅力的であるが 降伏は・・断らせていただきます」


『 はたして断れるのでしょうか!? 妾のパジャマから逃げれませんよ 』


「それは なんと・・ストーカーするパジャマ!!  そんな恐ろしいパジャマなどに降伏なんて 考えられないですなぁ」


『 いいのですか!?  あなた方は・・パジャマの本当の恐ろしさを知ることになるでしょう!!』


「そんなに恐ろしいのなら 一度は体験してみたいものですなぁ」



不可思議なパジャマ談議の末・・・

デルスデル提督は これ以上、敵との通信は必要なしと考え・・・通信を切った。

パジャマ!?が襲い掛かってこないうちに・この宙域から共和国艦隊を離脱させる!!



500隻の共和国艦艇は わずか29隻程度・・いや!! 強力な武力を有する公国護衛艦に包囲されてしまっており、

その上・・・艦隊の半数が大破の状態に陥っていたのである。


絶望的ともいえる危機的状況!!

しかし、決してあきらめない!! なんとしても脱出するのだ。



デルスデル提督は参謀たちに なんらかの策はないかと意見を求めたが・・

・・・参謀たちは すでに戦意を喪失!!

降伏を主張したり・・または 意味のない愚痴ばかりをほざく

ほんの少し前までの勢いはどこえやら・・・

そんな参謀たちの中で唯一 まともな提案をしてきたのは・・もっとも若手の人物、エーレル大尉。


デルスデル提督は エーレル大尉からの提案のいくつかを修正しつつ その作戦を承認した。



その作戦とは・・自爆!!である。

大破して動けなくなっている共和国艦艇の自爆装置を作動させる。

もちろんタイマーセット!

乗組員ごと自爆させるようなことはしない。

乗組員たちが脱出艇で脱出したのち・・時間差をつけて自爆するのだ。






◆◇◆◇◆◇◆



深淵の暗闇!!

そこに突然として現れる多数の火の玉。

しかも・・とてつもなく強烈な光を放つ。

まるで・・超新星のような明るさ!!

宇宙は・・・白く輝いた。


メルテリア共和国艦艇が次々と爆散しているのである。

しかも・・・核融合炉が暴走するように細工をしているため 通常では考えられないほどの派手な爆発になっている。

迫力満点!! 真空の宇宙にもかかわらず爆音が聞こえてしまうようなド迫力である。



この様子を見ていた公国艦隊司令官サイドウ提督は 思わず席から立ち上がった。

『 逃げられないと悟り・・・核弾頭で自爆したのか!! まさに軍人の・・ 』




・・共和国艦隊は 諦めて自爆したのではない!!

脱出のための作戦である。

自爆した300隻あまりの艦艇を目くらましにして、残りの艦艇200隻を脱出させるのだ!!



「包囲網から脱出する!! あるったけのエンジンを回せ!! なんとしても・・ワープ速度に達するのだ!!」

共和国艦隊司令官デルスデル提督は叫ぶ。

総旗艦エルフイートを中心とした残存共和国艦隊は前進を開始した。

この包囲網から脱出し故郷に帰るために・・・



しかし・・・共和国艦艇搭載のカシミヤエンジンは その特性上の理由から 加速性能が極めて低かった。

そうです!!・・なかなか速度がだせないのである!!

それでも・・あるったけのエネルギーを投入し・・・エンジンの出力を無理やりにでもあげて 速度を出す。

エンジン担当士官たちの腕の見せ所!!


耐久力の限界ぎりぎり・・いや! それ以上にまでエンジンの出力を上げつづけた。

各種警報が鳴り響き・・・エンジンのいたるところから悲鳴のような声がもれる。

排水管が破損し・・・冷却水もれ。



「やばい・・・やばすぎる!!」

エンジン担当士官たちの顔が青ざめた。





自国領にさえ逃げきれればよい!!

逃げ切れるのなら・・・エンジンの耐久性が落ち大破しても問題ではない。

この戦場から逃げ切ることこそ重要!!


それに・・・艦艇の連続自爆によって発生した衝撃波、重力波、放射線!!

目くらましには十分なハズ。

おそらく・・カツラギ公国側の索敵センサーはマヒしているに違いない。


そうだ!! 逃げ切れるだけの時間は 稼げた。

「逃げ切れるはずだ! 間違いない 脱出できるはず!!」




『そげんな自爆程度で 我が公国艦隊の足止めは無理だ。ふっ! 敵艦艇に向かって全速前進、追いかけるでごわぁす』

サイドウ提督は 怖い顔をドアップにしながら 引き続き共和国艦隊への攻撃を命じた。

ただし、エンジン部分への攻撃である。

共和国艦艇を拿捕するのが、最大の目的であった!!




◆◇◆◇◆◇


銀河帝国ゆらいの高性能なる索敵センサーは・・・この程度の爆発などでマヒなどしない!!

索敵センサーは通常運転!!  引き続き共和国艦隊を捕らえ続けていた。


しかしながら・・・やはり両軍の数に違いがありすぎた。

数を減らしたとはいえ・・・200隻の共和国艦艇を 29隻程度の公国艦艇で 囲むのは無理すぎたのである。


最終的には・・・一団となって突進してくる共和国艦隊を食い止めきれず・・・包囲網の突破を許してしまった。

だが・・突破されたとはいえ 戦闘終了ではない!!

カツラギ公国艦隊は・・突破した共和国艦隊に追いつくべく 追撃戦を開始する。



共和国艦隊は光の速度、いわゆるワープ速度を目指すべく加速させていく・・・

ワープ速度にまで達すれば・・・なんとか逃げ切れるはずだ!!


それに対して・・そうはさせじと その後ろを追撃するカツラギ公国艦隊と機甲砲兵。



カツラギ星系外縁部に向かって 二つの光の集団が 追いかけっこを始めた。

互いに火線が飛び交い爆発が生じている。

カツラギ公国側は 定期的に通信をおこない 共和国艦隊に対して停戦と降伏勧告を行っていた。

それに対して・・共和国艦隊からの返答は一切ない!



エンジンを破壊され 慣性の法則のまま漂流状態になっている共和国艦艇が 戦場のあちらこちらで見られるようになってきた。

もちろん・・・公国軍側が 共和国艦艇のエンジン部分を狙い撃ちにしているからでもある。


そんな漂流中の共和国艦艇を 機甲砲兵隊で包囲すると・・割と簡単に白旗を上げてくれた。

実に楽である。

無駄な抵抗をする者が少ないようであった。

順調よく共和国艦艇を拿捕していく・・・


原因としては・・・・・このまま拿捕されずほったらかしにされると・・永遠に宇宙をさまよい 餓死してしまう可能性があったからである。

というか・・・助けを求めるように・・泣きつかれて拿捕するということもあった。


さてさて・・・

この捕虜たちは 公国にとって2600年ぶりとなる正式な客人!? いや、捕虜となったのてあった。

公国として捕虜たちを大歓迎!?



「共和国艦艇を数十隻・・拿捕できたのね!!  これで共和国の技術力の一端を知ることができる。

それに・・いいのよね この古き良き時代的な艦艇のフォルム こういうレトロ的曲線美が素敵!!」

ウサミミンの頭をなでながら 上機嫌のカツラギ姫公・コトナ。

側近のルリから 差し出されたコーヒーを小指を立てながら飲み・・・ときおり高笑いするのであった。


悪の女王のような演技をして楽しむコトナである。

そして・・・側にひかえているルリは・・・

なにか突っ込みを言いたかったが・・ご機嫌よく悪の女王をしているので 生暖かく見守ることにした。



◆◇◆◇◆◇





公国護衛艦隊の執拗な追撃をかわすため 再び・・共和国艦隊は数隻の艦艇を自爆させた!

なんとか自爆に巻き込まれてほしい・・・目くらましになってほしい!!

僅かな可能性をかけたのだが・・・無駄であった。

カツラギ公国のセンサー能力は高く 一度ターゲットされればどこまでも追いかける。



だが・・・公国の護衛艦29隻では、数が少なすぎて追い切れない。

機甲砲兵にはワープエンジンを装備していないため・・・共和国艦艇の速度が上がり始めると

機甲砲兵の速度では追いつくことが不可能となった。


それでも 共和国艦隊の後を追いすがるように公国護衛艦は追撃する。

護衛艦の放つ主砲46cm小型時空投射砲は 共和国艦隊のレーザーカノンと違い、実弾兵器である。

ワープエンジンが組み込まれた実弾であり 周囲の時空を歪ませながら 光の速度を超える。



この46cm時空砲弾を 共和国艦艇に命中させず・・鼻先をカスルように撃ちこむと 

共和国艦艇周囲の時空間を乱し・・艦艇の速度を落とすことが出来る。

光の速度を超えさせない!! ワープ航法を阻害させる兵器にもなるのであった。


『共和国艦隊の諸君!! ワープなどさせん! 絶対に逃がさんでごわぁす』

サイドウ提督の雄叫びが炸裂した。




このような公国側の攻撃に対応して・・・

共和国艦隊も同じような原理を持つ 空間魚雷を公国護衛艦に向けて放った。

この空間魚雷は 周囲の空間を歪ませながら突き進む魚雷であり・・敵に打撃を与えることを目的としていない。

この魚雷を放つと・・・周囲の空間に波を発生させ 公国艦艇の速度を落とす兵器である。

この魚雷で なんとか公国護衛艦を引き離そうとするが・・・公国のワープエンジンの性能が高く・・・まったく通用していなかったのであった。





それから・・・数日にわたり・・・生かさず殺さずの追撃戦がつづくことになる。

共和国艦隊はワープ速度を出すことができず・・・通常速度といっても光速の10%ではあるが・・

執拗な追撃を受け続けることになった。



一週間後・・・コトナことカツラギ姫公は 共和国艦隊の追撃を中止させた。

何十隻かは拿捕に成功している。これだけあれば メルテリア共和国の技術力の一端が判明するだろう。

あと博物館にも展示したいなぁ

とにかく・・・・

このまま追い続けると 数年かかりそうなので・・このあたりが潮時であろう。



『百年かかろうと・・・追いかけるでごわぁす』

ディスプレイからサイドウ提督のドアップ顔で返事を返されたコトナは おもわず飲んでいたコーヒーを吐き出した。


「サイドウ提督に そんな後処理のような仕事はさせられませんよ!! これから公国の運命を左右する戦いがはじまるのですから

もっと提督には活躍してもらわないと・・ね」


『それはすばらしいでごわぁす 腕がなりますわい』


じつに嬉しそうなサイドウ提督であった。



◆◇◆◇◆◇◆



第4メルテリア共和国艦隊。

総旗艦エルフイートの損害事態はエンジン2基の被弾で・・損傷の修理もすぐにおわったが・・

他の共和国艦艇のほとんどが エンジンを破損・・・長期の修理期間が必要となった。


そのため サルガッソ宙域を超えての本国帰還には 三ヶ月ほどかかる羽目となる。

そして・・・本国帰還時の戦力は戦列艦80隻にまで激減していたのであった。

失われた艦艇数420隻・捕虜もしくは戦死者8775名

失われた艦艇の割に戦死者がすくないのは・・カツラギ公国の思惑、艦艇をできるだけ無傷に拿捕せよの命令があったからである。

ちなみに・・・・カツラギ公国が手に入れた捕虜の数は5424名であり、実質的戦死者は3351名ほどであった。




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