第2話 武装解放剣・雷鳴
ブラッディウォール周辺に到着した雷馬、華恋、龍吾。人々と交流しながら辺りをパトロールをしていたその時ブラッディウォールの門が開き始めたことに気づく。大勢の人が集まり、門を見ていると一体のバリアントクリーチャーがデモンズシティから飛び出してきた。混乱する人々を避難させ、雷馬達はバリアントクリーチャーと戦闘を開始する。
「やっぱり今日は人が多いな」
「みんな考えてることは同じってことだ、みんなブラッディサンの壊滅を望んでいる」
ブラッディウォール周辺の街に到着した雷馬、龍吾、華恋。数百メートル先には忌々しき巨大な黒い壁、ブラッディウォールが見える。
「パトロールする前に私たちも参拝しに行こっか。 悪魔の災厄によって亡くなった方々の慰霊碑に」
一瞬で八万人の命を奪った災厄、デモンズカラミティが国に与えた影響は大きく、慰霊碑を建てよう、と言う意見に反対する者は一人もいなかった。
「おー、君達はネムレジャスティス所属の戦士達じゃないか、いつもパトロールご苦労さん。君達のおかげでこの街は平和だよ〜」
慰霊碑に着くと街の人々が雷馬たちに声をかけに来てくれた。子供達もまるでヒーローを見ているかのようなキラキラした目で戦士達のことを見ていた。ブラッディサンと戦う組織の一つであるネムレジャスティスに所属している戦士達はブラッディウォール周辺の街だけでなく、国全体での知名度も高い。知名度が高いことは悪いことでは無いし、むしろ光栄なことだと三人は思っているため、声をかけられることも嬉しく感じていた。
「君達には期待してるよ。ブラッディサンをぶっ倒してしまえばイノセトレジタリアに住んでいる人たちも元の生活に戻れるだろうね」
しかし、この言葉を聞いた瞬間、三人の表情は曇った。
——イノセトレジタリア。それはデモンズカラミティによって、住む場所を失ってしまった人々が協力して暮らす住宅街。言い方を変えれば避難所である。
デモンズシティの大部分を占めている巨大な工業都市・デペルトシティなどに居住地があった人々はデモンズデイから一年がたった今も避難所での生活を余儀なくされている。雷馬、龍吾、華恋も居住地を失ったがデモンズデイ以降はネムレジャスティスの寮での生活をしている。
参拝を終えたあと、三人はパトロールを開始した。
「とりあえず午前中はこの街をパトロールするだけでいいよな。イノセトレジタリアの方は……昼からにしよう。」
雷馬は行くことをためらっている。いや、雷馬だけでなく、龍吾や華恋もだ。
「俺たちはイノセトレジタリアの人たちに合わせる顔がねえからな。あの日現れたクリーチャーどもは俺たちが対処しないといけなかった、だが俺たちは逃げたんだ。バケモノを倒せる手段を持っておきながら、手段を持たない人々をおいて逃げたんだ。そんな臆病な俺たちは安定した生活を送ってる。イノセトレジタリアで暮らしている人たちを横目に寮で暮らしている――」
「もう……その話はやめて、龍吾。……お願い」
龍吾の言葉を遮るように華恋は言った。
「雷馬も龍吾も最善は尽くしたよ。……きっと」
「自信が持てねえんだったら適当なこと言うんじゃねえよ……」
龍吾がそう言うと三人に気まずい雰囲気が流れた。が、しばらくおいてから雷馬がこういった。
「必ず取り戻そう。ブラッディサンの領地となってしまった土地も、みんなの日常も。それが俺たちの使命、そして償いだ」
「うん。戦うのは私たち三人だけじゃない、ネムレジャスティスのみんなや今を生きる人々と一緒に、この困難を乗り越え――」
その時だった。突如ブラッディウォールの方から巨大な音が辺り一面に轟いた。
「……っ! なんの音だ⁉︎ ブラッディウォールの方から何かがえぐれるような音がしたが……まさか!」
龍吾は状況を理解し、二人に伝える。
「急いで向かうぞ! ブラッディウォールの門の前に!」
「どう言うこと⁉︎ ちゃんと説明して龍吾!」
「恐らく……門が開いたんだ、さっきのあの音は門が開いた時に地面と接触して地面がえぐれた音だ……!」
「まだ確証はないだろ! ……けど、とりあえず向かうしかないか……!」
三人はブラッディウォールの門へと向かった。そして、すでに門の前には人だかりができていた。
「門がもうすぐ完全に開ききるぞ……!」
集まった人々が口々に言う。龍吾の予想は的中してしまった。
「みんなはやく離れるんだ! クリーチャーが出てくる可能性がある!」
現場に到着した雷馬は人々に大声で伝える。そして門を見た時だった――。
一体のバリアントクリーチャーがデモンズシティから門を通り外へと出てきた。人々は悲鳴を上げ、われ先にと走って逃げる。
「っ⁉︎ 華恋! 人々を安全なところへ導け! 怪我人が出ないように落ち着いて避難させるんだ!」
龍吾は華恋へ指示を出す。華恋は了解!、と震えた声で言い、人々へ呼びかける。雷馬は一人、クリーチャーを見ていた。
「あのクリーチャー……、首輪をしているのか? まさかブラッディサンはクリーチャーを作れるのか……!いや、そんなこと考えてる場合じゃない。良かったよ、武装解放剣・雷鳴を持ってきておいて」
雷馬のつけている丈夫な皮のベルトの背中側についているホルダーには特殊な剣がセットされている。その名は武装解放剣・雷鳴。その剣のグリップエンドについている特殊な成分を流すチューブは雷馬の右肩に装備されているアームドコントロールデバイスへと繋がっている。
「絶対にみんなを守ってみせる……」
雷馬の手にはライメイウォーリアークリスタルというクリスタルのような形をした金属製のアイテムがあった。ライメイクリスタルのスイッチを押し、システム音声が鳴る。
『ライメイウォーリアー』
雷馬は武装解放剣をホルダーから外し、ライメイクリスタルを剣の鍔に当たる箇所にあるスロットにセットする。そして雷馬は自分を鼓舞するため、大声でこう言った。
「武装解放!」
雷馬はグリップに付いているトリガーを引いた。チューブを通してクリスタルに秘められた成分が剣からアームドコントロールデバイスへと送られる。成分が送り込まれたのを瞬時に理解し、コントロールデバイスは展開する。展開したコントロールデバイスの中から雷馬の周りの空間上に、成分によって創り出したヘッドアーマー、ボディアーマー、左右のアームアーマー、左右のレッグアーマーが現れ、雷馬に自動で装着されていく。雷馬はこの武装解放システムによって、武装解放者ライメイへと姿を変えることができる。
武装解放者ライメイは機械的なアーマーと所々に甲冑のような衣装が施されている。
「クリーチャー、甘く見るなよ……ハァッ!」
雷馬はクリーチャーへと斬りかかる。みんなの明日を守るために。クリーチャーの胴体を武装解放剣が切り裂いていく。だが、クリーチャーは出血すらしない。
(やっぱり浅いか……。さすがに一撃で終わるほど甘くはねえよな)
雷馬はクリーチャーの特性をとらえようとしている。
「……雷馬! もう一体、翼の生えたクリーチャーが出てくるぞ!」
ブラッディウォールの門はまだ開いたままだった。もう一体のバリアントクリーチャーが外へと飛び出してきた。その勢いは止まることを知らず、その翼で逃げる人々の方へ高速で向かっている。
「……っ、雷馬! もう一体の方は俺に任せろ、お前はそいつをなんとしてでもここで倒せ!」
龍吾はそう言うともう一体のクリーチャーの方へ向かった。彼もまた雷馬と同じ武装解放者の一人である。賀志皆龍吾が使う武装解放デバイスの名は――――武装解放拳・龍焔。
遂にブラッディサンとネムレジャスティス所属の戦士達の戦いが幕を開けました。門が開き壁の外へ出てきたバリアントクリーチャー。雷馬が交戦し、その場を凌ぎました。そして次のお話は雷馬が交戦している時に現れたもう一体のクリーチャーと龍吾の戦いも描かれます。龍吾が使う武装解放デバイスはどのようなものなのか。クリーチャーとどのような戦いを繰り広げるのか、次回をお楽しみに——。
いずれイラストも投稿するかもです。言葉だけでは伝わりづらいので。